初めての戦闘
「いない」
集合場所の噴水に行ったが二人はいなかった。
なので戦闘をしようろ街の外へと向かうクロシェ。
行く場所は特に決めておらず、現地に行って判断するようだ。
最初にクロシェが向かったのは初心者御用達の草原エリア。
このエリアは基本的にプレイヤーとエネミーの1on1が出来る。
プレイヤー1人に対して複数のエネミーが出ることがないため、ここで戦闘のコツを掴むのが定石だ。
しかもエネミー自身も弱く滅多なことでデスすることはない。
が、クロシェは数々のゲームをしてきた為、この辺りの魔物では腕試しにすらならなかった。
次に訪れたのは森林エリア。
こちらは上、中級者向けとなっており、エネミーが思いもよらない場所から奇襲を仕掛けてくる。
木を盾に立ち回ったり、木の上に登って攻撃をやり過ごしたり、とにかく木を利用した振る舞いをするエネミーが多い。
「ん、動きやすい」
しかしクロシェには木々があるのは邪魔ではなく、むしろプラスだ。
軽々と木に登り、獲物を定める。
獲物は5本ほど先の木に潜伏している猿型のエネミー。
クロシェにはまだ気づいておらず、己がいる木の下に獲物が通りかかるのを待っているようだ。
さて、クロシェはどうやって近づくのか。
「フッ!」
クロシェは足場にしている枝にぶら下がると体を振って勢いをつけて、一本先の木の枝目掛けてジャンプする。無事に枝にぶら下がれたクロシェは枝に登り、次の木の枝目掛けてジャンプ。
ここで猿エネミーは音をキャッチ。周りを見渡すが、目に映るのはいつもの風景。
しかし音はどんどん自分に近づいてくる。
だが見当たらない。
そんな混乱している猿エネミーをクロシェは頭上から強襲。
アイテムボックスに入っていた剣を思いっきり脳天に突き刺す。
猿エネミーのヒットポイントは一瞬で消え、ポリゴンのようなものが出て、猿エネミーは消えた。
その場に残ったのは猿エネミーのドロップアイテム。
猿の毛皮×1
「……しょぼい。けど妥当」
ドロップアイテムがしょっぱくてテンションが下がったが、すぐに取り戻す。
次の獲物を求めて散策するクロシェ。
全く警戒していない様子に森林エリアの魔物は舌なめずりをする。
『カモが来た』
と。
先ほどと同じ猿エネミーが同じように木の上から奇襲を狙っている。
自分のいる木の下に来たら殺してやると殺意を練り上げる。
自分のキルゾーンまで後、木が3本、2本、1本。
一瞬、木が自分の視界を遮る。
一瞬、その一瞬の出来事だった。獲物がいなくなった。
そんな訳ないと獲物が来た道を見返す。
しかし見当たらない。
もしや先に行ってしまったのでないかと確認するがいない。
では横道に逸れたかと確認しようと後ろを向くと、そこには獲物が剣をを振りかぶっていた。
そのまま猿エネミーは首を刎ねられて死んだ。
何が起こったのか猿エネミーには分からないだろう。
猿エネミーには消えた獲物が目の前にまで迫っていたのだから。
まず、クロシェは狙われていた事に気づいていた。
敢えて気づかないフリをして油断を誘った。
そして一瞬、目線が遮られた瞬間に横道に逸れた。
そのまま素早く木に登り、猿エネミーのいる枝までジャンプをして倒したのだ。
「うーん、手応えない。別のところ行こう。ドロップしょぼいし」
初心者が躓く難関、森林エリア。
しかし、そんな場所もクロシェには不足だった。
奇襲がメインのため、逆に注意すべき場所が見えており、簡単に倒せてしまうのだ。
さらに、このエリアも複数エネミーは殆ど出ない。
奇襲を囮にしたさらなる奇襲などの面倒な手段を用いる相手がいない事がクロシェ無双に拍車をかけていた。
次に訪れたのは山エリア。
こちらは先ほどの森林エリアと似ている。違う点は、山なので地面に傾斜が付いている事。
さらに、ここからは複数エネミーが基本となっており、難易度が跳ね上がっている。
そのため上級者の中でも立ち回りに慣れたプレイヤーがここで活動している。
クロシェはここで体を動かす事を決めた。
「敵が………いない?」
しばらく山を散策していたが、一向にエネミーが襲ってこない。
ので木の上に登って周りを索敵するクロシェ。
しかし、いくら見渡せと見えるのは青々と茂った木々のみ。
耳を澄ませても返ってくるのは葉の掠れる音。
「(どういう事?異常事態?それともこれが普通?)」
この状況が異常なのか普通なのか判別がつかないクロシェ。
先の二つのエリアでは、エリアに入ったら問答無用でエネミーが襲ってきていたのでそんな疑問は抱かなかった。
ゲームは開拓するから面白いと掲示板や攻略情報、配信などの動画の一切を絶っていた代償がここでやってきた。
「(他のゲームではこう言う状況は何かしらのイベントフラグを踏んだ時だけど………あーあれは)」
クロシェの目線の先。およそ20メートル。
そこには人面幽霊鹿と言うべき異形がいた。
顔は人面だが、所々体が透けており、頭に生えている角は2本では到底足らない。
しかもその角は普通の鹿の角ような硬いものではなく、スライムのような軟体性を持っている。
しかも鳴き声が『ヒョーロロロヒョーヒョーヒョー』と何とも形容し難い。
明らかに今までのエネミーと違い、SAN値を削ってくる見た目と鳴き声をしている。
「逃げる。スタコラサッサー」
逃げるクロシェだが、逃亡がキーとなったのか追いかけてくる人面幽霊鹿。
クロシェは木が邪魔になるようにジグザクに、時には木の上に登って逃げる。
しかし人面幽霊鹿には物理判定がないのか、時々木をすり抜けている。
なので効果は薄い。
クロシェもその事に気づいたようで、素直に一直線に逃げている。
山エリアの境界線まで後5メートル……4………3………2……1……。
しかし人面幽霊鹿の速度は尋常ではなく、ほぼ追いつかれていた。
わざわざクロシェの前に回り込んでくる。
人面幽霊鹿の顔がニタリと嫌らしく歪んでいた。
クロシェは一度止まり、クルリと踵を返す。
来た道へと走り、横道に逸れる。
人面幽霊鹿はそれをゆっくりと追いかける。
まるで獲物をわざと痛ぶって遊ぶ狩りの様に。
そしてクロシェが横道に逸れた場所まで来る。
しかしクロシェは見当たらない。
綺麗さっぱりと消えている。
人面幽霊鹿はポカンと呆けた顔をして驚いていたが、次の瞬間には憤怒に顔を染める。
山に、甲高い鳴き声が響き渡った。
「………危なかった」
その頃、クロシェはすでにエリアは出ていた。
横道にずれて人面幽霊鹿の目線が遮られたのと同時に木のてっぺん付近まで登り、木々の間をジャンプしてエリアを抜けたのだ。
本来なら絶対無理な動き。
その秘密は種族によるステータスもあるが………
「軽業が役に立った……ほんと、取って良かった」
何となくの勘で取ったスキルが役に立ったのだ。
「二人にも話そう。絶対あいつ倒す」
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久々の更新。何となく作った設定見てたら書きたくなった。
しばらくこっち優先で投稿しようかなぁ…。
VRMMOで厨二キャラを極めると強くなれる。 祓戸大神 @haraedoookami
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