チュートリアル

「ん………ここは……」


クロシェが目を覚ますと、そこはだだっ広い広場だった。

石畳が敷き詰められており、たくさんの建物が立っている。

周りを見渡すとたくさんの獣人が歩いていた。


「獣人ばかり?いやエルフもドワーフもいる」


しかし人間らしき種族は何処にも見当たらない。

疑問に思いながらもクロシェはこの後の予定を立てる。


「二人はまだ時間が掛かりそうだから……どうしよう」


葉もどうやら課題が出たらしく、ログインする時間が遅れるとの事。

いきなり戦闘をしてもいいが、何処で戦えばいいか分からないため先に情報を集める方がいいだろう。


「そういえば、チュートリアルなんてあったっけ?」


この手のゲームの経験は豊富なため、いつもはチュートリアルは飛ばす派のクロシェ。

しかしこのままぼーっとしているのもアレなのでチュートリアルを受けてみる。

ピロン!と軽快な音を立ててウィンドウが現れる。

そこには『ギルドに行って探索者登録をしよう!』と書かれていた。


「ギルドか。何処にあるんだろ?」


周りを見渡しても同じような建物があるだけ。

適当に歩いても良いが、広場の大きさから察するに、この街は相当大きい。

迷子になったら面倒だ。


クロシェは特にコミュ障というわけではないので適当に人を捕まえてギルドの場所を聞く。


「すみません。ギルドって何処にあるか知ってますか?」


「はいはい……って狼!?」


「?あの……」


大袈裟な反応に疑問を覚えたクロシェだが、再び場所を聞こうとする。


「あ、ああ。ギルドね。ギルドはこの大通りを真っ直ぐ行ったらあるぞ。

剣と盾のマークがあるからわかると思う」


「ありがとうございます。助かりました」


「お、おおぉ」


『変な反応だった……もしかして余りに厨二病な姿過ぎて引かれた?』


相手の変な態度に少し不安になるクロシェ。

しかし「何でそんな態度なんですか?」と質問するわけにもいかず。

クロシェは真っ直ぐギルドへと向かった。


「見つけた。意外と近くにあった」


ギルドはファンタジーにあるような建物ではなく、現実の市役所に近い建物だった。

中に入ってみるとこちらはファンジーの雰囲気を感じられる。

依頼の紙が貼られている場所があり、複数の窓口。


そこに座る受付嬢。酒場が隣接しており、今の時間から飲んでいる人もいる。

ガヤガヤとうるさい喧騒の中、クロシェは物怖じすることなくチュートリアルの指示に従って窓口へと向かう。窓口には登録用というプレートがあった。


「探索者ギルドへようこそ。登録でよろしいですか?」


「はい。お願いします」


「かしこまりました。ではこちらに名前と得意な武器を書いていただけますか?」


そう言って渡されたのは一枚の紙。

どうやって書くんだろうとクロシェが悩んでいると、またウィンドウが立ち上がって入力画面が現れる。

なるほどと納得し入力していく。


「出来ました」


「はい確認いたします。名前はクロシェさん、得意な武器は剣で間違いないですか?」


「はい大丈夫です」


「ありがとうございます。ではっ!」


ドスン!と大きな音を立てて大きな装置が置かれる。

見た目は水晶で出来た地球儀だ。


「ふぅ。こちらに手をかざして下さい」


「は、はい」


若干、受付嬢の力強さに驚きながらクロシェは水晶に手を翳す。

すると水晶は淡い光を発する。

そして5秒ほどすると光が収まる。


「はい大丈夫です。少しお待ちくださいね、今探索者カードを作ってますので」


「はい」


時間にして1分ほど。

ピピっ!と音が鳴る。


「出来ましたよクロシェさん。これが貴方の探索者カードです」


「ありがとうございます」


手渡されたカードには名前、探索者ランク、得意な武器が書かれていた。


「では探索者カードについての説明に移りたいんですがよろしいですか?」


「はい。よろしくお願いします」


カードについての説明をまとめるとこうだ。

カードにはギルド連盟に加盟している店に限り支払い機能を持つ。

加盟店からギルドに請求が行き、ギルドは支払いをした探索者の預け金で支払うという仕組みだ。


次に身分証明として使えること。

街から街、国から国へ移動する際、門番にカードを見せると身分証代わりになる。

次にパーティー機能が使える。


このカード以外でカードを組む方法はないのだ。

そして最後。

パーティーを斡旋してくれる。


得意な武器に合うパーティーをギルド内から探して紹介してくれる。

チュートリアルも『パーティーを組もう』なのでここで紹介されて達成するのだろう。


「本当によろしいのですか?」


「はい。すみません」


「いえいえ。ではこれで登録を終わります。ご利用いただきありがとうございました」


「ありがとうございました」


しかしクロシェはパーティーの斡旋を断った。

元々組む予定の人がいるためだ。


「集合場所にいって……いなかったら戦闘でもしようかな」

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