キャラメイク

第3話


「早速やる」


鈴は第四世代完全没入型VR機器、通称ダイブギアにInfinite Possibilities Onlineをインストールする。

ダウンロードは一瞬で完了し、デスクトップにNEW!とアイコンを光らせて、その存在を主張する。

早速始めようとして、伸ばした手が止まる。


「飲み物忘れてた」


ダイブギアはその性質上、長時間の間ベットに横たわることになる。鈴は少し事情があり、ベットに横たわるわけではないのだがそれはさておき。そのためゲームをプレイする前にトイレを済ませ、軽い食事。起きた後すぐに水分補給ができるように飲み物を近くに置いておくことが推奨されている。


「完璧」


今度こそ準備を済ませた鈴はInfinite Possibilities Onlineの世界へと旅立った。








「先にビルドからなんだ」


Infinite Possibilities Onlineにログインした鈴。

まずは初期設定をしないことに始まらないので、この手のゲームではお約束の初期のビルド構築とキャラメイクが開始される。が、Infinite Possibilities Onlineは先にビルドから始めるという少し変わった手順を踏む。


ー見本ステータスー


名前:ーーーーーーーー

位階:0

種族:ーーーーーーーー

 >固有スキル:

職業:ーーーー

 >専用スキル:

役割:

 >効果:

HP:100

MP:100

筋力:F、E、D、C、B、A、S

魔法:F、E、D、C、B、A、S

体力:F、E、D、C、B、A、S

敏捷:F、E、D、C、B、A、S

器用:F、E、D、C、B、A、S

物耐:F、E、D、C、B、A、S

魔耐:F、E、D、C、B、A、S

精神:F、E、D、C、B、A、S

隠密:F、E、D、C、B、A、S



どうやら“ーーーー“のある部分をタップして選択する方式の様。


「名前は後回し。種族から」


鈴が種族をタップすると選択肢が現れた。


『種族ー>人族、亜人族、獣人族』


「(二人とも獣人っぽいから私も獣人がいい)」


大学の食堂で当選を報告した際、二人からは色々スキルに付いてアドバイスを受けた。

そのスキルの傾向から何となく鈴は二人が獣人の印象を受けたのだ。

仮に種族が違うからといって一緒にプレイ出来ない訳ではないだろうと高を括る鈴。


『獣人族ー>虎、犬、猫、狐、兎、狼、鷹、梟、熊、栗鼠、羊……』


「む、いっぱいある。何がいいかな、出来れば身軽で素早いのが良い」


うんうんと悩む鈴。

ちなみに人族、魔族も同じようにさらに選択肢があり、そのどれもがスクロールに5秒は掛かる。

そして悩みに悩み、鈴が選んだのは………。


「狼にする」


狼はその素早さと体のしなやかさ、殺傷力をコンセプトに作られており、固有スキルも疾風と鈴の要望通りの内容になっている。ただし、防御方面はまさに紙装甲と呼ぶべきほど脆い。若干物耐の方が高いくらいが、位階の低いうちは、ほぼどんぐりの背比べ状態。


「次は職業。これもいっぱい………あった」


職業はたくさんあるが、大雑把に分けて戦闘職と生産職に分かれていて、ここで選べるのは本当に初期のものばかりだ。例を挙げると戦士、剣士、魔法使い、鍛治師、調薬師、料理人などがある。

鈴たち三人はずっと戦闘職だったので今回も戦闘職。そしてプレイスタイルもほぼ変わらない。

なので鈴は目的の職業をすぐに見つけ出した。


「剣士。これが一番」


剣士は本当にまんまで、剣が扱える様になる職業だ。剣に関することはボーナスが入りやすが、逆に魔法関連はボーナスがほぼ入らない。まぁ一般的な剣士だ。


「後はスキル」


これまた膨大な数のスキルが目の前に現れ、若干読む気が失せる鈴。

ゆっくりめにスクロールして流しながら見る。

命中、奉仕、手品、宴会芸……スクロールをする度に何の役に立つんだというスキルが並び始めたスキル一覧。


そんなスキル一覧の中に鈴の目を引くスキルがあった。


「軽業?効果はアクロバティックな行動に対してのプラス補正……」


何とも曖昧なスキルだ。アクロバティックな行動はどんな行動を指すのか分からない。それに行動に対するプラス補正というのもよく分からない。バランスでも取りやすくなるのだろうか?しかし、やけに目が引かれる。悩んだ末、鈴は軽業を取った。


「後は名前。名前はクロシェ」


由来は自分の名前である鈴をフランス語に訳し、少しもじっただけ。三人ともだが、PNはどのゲームでも同じタイプだ。メリットとしては悩む時間がなくなること。デメリットは新鮮味が無いことだ。

そして完成したステータスはこちら。


名前:クロシェ

位階:0

種族:獣人・狼

 >固有スキル:疾風

職業:剣士.F

 >専用スキル:剣術

役割:ーーーーー

 >効果:ーーーー

HP:100

MP:100

筋力:A

魔法:F

体力:B

敏捷:S

器用:A

物耐:E

魔耐:F

精神:F

隠密:E


《スキル》

・軽業



Infinite Possibilities OnlineではステータスはHP、MPのみ数値制でそれぞれのパラメータはランク制度を採用している。ランクは下からF〜Sの7段階評価で数値での管理だと初心者は分かりにくいため、ランクで分けて配慮なのだとか。


また、レベル制度ではなく、位階制度となっておりボーッと呼吸だけしているならともかく、基本的にはどんな行動でも評価され、ステータスは上がる。それを積み重ねたり、何か偉業を達成することで位階が上がる。そのため従来の雑魚敵を倒しまくってお手軽レベリングというのは通じない。その代わりになるのが役割ロールというパラメータなのだが、それはまた後日。


「後はキャラメイクだけ」


種族的特徴が反映されたアバターが鈴の目の前に現れる。

手元にはコンソールがあり、髪や肌の色変化、体型、アクセサリーなど色々弄れるようになっている。

ただし、現実の体からかけ離れたアバター、例えば極端に太っていたり、痩せていたり。無いものを足したり、在るものを消したりは出来ない。


「なん、だと……!!」


ついでに身長も現実から離れてすぎていてもダメだ。

鈴……クロシェは身長を盛ろうと何度もパラメータを上げるが、警告画面が出てきて出来ない。

身長に若干のコンプレックスがあるクロシェ。


ダイブギアを使用しているゲームならどれにでも適用されている禁止事項なのだが、クロシェは一縷の希望を掛けてパラメータを弄る。だって高身長に憧れるんだもん。


「はぁ……」


高身長の夢をまだ見ぬゲームへと託し、妥協したアバターが完成した。

髪は白色に赤のメッシュ。そのまま原色の白だと白髪に見えてしまうので光沢を増していて銀に近いかもしれない。その髪を結構伸ばし、腰の当たりまでに。現実だと鬱陶しすぎてしないが、ゲームだと遠慮なくファンタジーな髪型にできる。あと一応身バレ対策に。


アバターは現実の肉体と似ているので、あまり変えずにいると分かる人には分かってしまう。

AIが修正してバレないようにはしているが念の為。ちなみに髪は三人で一緒。白色に好きな色のメッシュと事前に決めていたのだ。目は灰色。頭には髪と同じ色の犬耳が付いており、人間の耳があるのかは分からない。髪で隠れている。


肌色は特に変えず、アクセサリーとしてマフラーを。

可愛かったのだ。特に効果は付かないが、可愛かったのである。

ちなみに身長は最大上限のプラス1センチ。

儚き、夢の残滓である。


服装は剣士の初期装備である革鎧を着ていて、腰には西洋剣が差さっている。

総評。


「………厨二っぽい」


白い髪。赤いメッシュ。マフラーによって隠れた口元。剣士。

これで赤い目だったら完璧だったが、それは回避された。

だが、結構時間を掛けて作ったので作り直すのもアレだ。


「……ゲームスタート」


こうしてクロシェはInfinite Possibilities Onlineへと旅立った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

読んでいただきありがとうございます。

キャラメイクという事でどうしても説明が多くなってしまうのですが、多分恐らく、きっと今後物語で使うのでキチンと読んでいただけるとありがたいです。

良ければ評価、感想を書いてください。


重大なミスが判明したので修正しました。

『種族ー>人族、魔族、獣人族』→ 『種族ー>人族、亜人族、獣人族』


お詫びネタバレ?

魔族は最も若い種族であり、純粋な種族ではありません。


やらかしたぁ………

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る