ゲームスタート
Infinite Possibilities Online
Infinite Possibilities Online。
それは第四世代の完全没入型VR機器によるVRMMORPGだ。
五感全てを完全に支配し、創作の中だけだったゲームの中に入ってプレイできる。
21世紀後半に開発されたこの五感完全支配技術はあまりに大きい技術革新だったため国や公営会社が独占してしまい、一般には開放開放されず多くの不満が世界中で生まれた。
そんな不満を受けて技術者たちは立ち上がった。必ず一般解放してやろうではないかと。
そもそも国や公営会社が独占したのは利益目的ももちろんあるが、それ以上にセキュリティと安全性に問題があったからだ。例えば、痛みの数値を弄って人をショック死させたりという事が出来てしまう。
解決策は簡単。数値などを弄られないためにセキュリティレベルを上げれば良い。
しかし現実はそう簡単にはいかない。例えアインシュタインレベルの人物がその全才能を持ってセキュリティを作ったとしても、それを維持運営する人が無能だと台無しだ。
無能ではなくても日夜問わずアタックされると必ず綻びは出来てしまう。
それは現代のニュースを見ていても明らかだ。
技術者たちは熟考の末に答えを導き出した。
セキュリティの開発、維持運営をAIにして貰えば良いと。
第四世代用に開発されたAIは単純な情報戦では人間に負ける余地がない。
これにより、厳重なセキュリティの構築と宇宙科学による肉体保全術が完成し、ついに完全没入型VR機器が一応、一般に解放された。
そう一応だ。そのVR機器を買おうとすると買うか検討するのも馬鹿馬鹿しいほどの金額を請求されるのだ。しかしこれは当然である。そのVR機器に使われた技術やその他諸々を鑑みるとむしろ安いほどだ。
そのため一部の富豪などにしか広がらず、一般市民は再び悔し涙を呑むことになった。
ここで立ち上がったのが日本だった。日本は昔から改良や小型化が得意な国で、その技術力を活かして第四世代のVR機器のコストダウンに取り組んだ。世界中が応援し、支援が届けられた。
後の歴史家が間違いなくその時代は世界が同じ方向を向いていたというだろう程には世界が協力した。
そして日本はやり遂げた。少し割高だが決して手が届かないほどではないくらいの値段に抑えることに成功したのだ。ついに念願の完全没入型VRゲームが一般市民にも楽しめるようになった。
が、次の問題が出てきたのだ。ユーザーが満足するゲームが開発できなかったのだ。
ユーザーが求めているのは小説の中のような自由なもう一つの世界。既存のVRゲームの延長では満足できなかった。ゲーム会社がその総力を費やしてゲームを開発をした。
そして一つの作品が生み落とされた。
タイトルは『Fantasy World Online』
スタンダードなMMORPGで剣と魔法の世界がテーマのもう一つの世界。
まさに小説の通りのゲームで世界中で大ヒット。
開発した会社は『プラチナバース』という日米にまたがる世界的企業だ。
Fantasy World Onlineの発表から約三年。プラチナバースは新たなタイトルを発表した。
それは『War of Space』。
宇宙や惑星を戦場としたガンシューティングのバトルロイヤルだ。
様々なステージと様々なバトルモード。
MMORPGが合わなかった人たちが大声をあげて喜んだ。
そして『Infinite Possibilities Online』
これはプラチナバースが三つ目に発表するタイトルだ。
あのプラチナバースの新作ゲームということで、今まで通り国単位の抽選となった。
サイトにログインし、Infinite Possibilities Onlineを購入すると抽選が開始され、当選した場合のみお金を払う仕組みだ。ちなみに外れると次回の抽選に参加しますか?とホップアップが表示され、その場で抽選の予約ができる。
余談だが、最初は抽選形式というのに多くの苦情が寄せられた。
特に「ふざけるな!運営もAIがしているんだろうが!」という声が多かった。
この苦情に対するプラチナバースの答えはこうだ。
「確かに運営は第四世代用のAIが行なっているが、監視、管理自体は人間が行なっている。世界規模でプレイヤーが押し寄せたら対応しきれない」
この監視、管理の補助にもAIが付いているが、それを鑑みての抽選人数である。
最後まで苦情は届き続けたが、プラチナバースは頑なに抽選形式を変えず、結局ゴリ押した。
そして人間は慣れる生き物のようで、今ではすっかり抽選形式が当たり前という風潮が広がっている。
そして抽選形式ということは友人と一緒に始めようとしても、当選は完全にランダムなので難しい。
その場合、当選した人が早めに始めておき、色々経験する。そして友人が当たったら、その経験を活かして手っ取り早くレベリングをするのが鉄則だ。
が、しかし。
どこにでも例外はあるようで、この三人組がその例外に当てはまる。
「二人とも。よく来てくれた」
「おう」
「そりゃあ、あんな連絡貰ったらねぇ」
場所は大学の食堂。
お昼時のようで、とても賑わっていた。
気のせいか、いつもよりも人が多い。
「『Infinite Possibilities Online』の第二次抽選、当選しました。ぶい」
ほぼほぼ無表情ながらピースをする少女。
彼女は
身長が150センチぴったりと少し小さく、友人からは小動物的な可愛がられ方をしている。
ちゃんと大学生である。決して中高生ではない。
「わぁ!おめでと〜!前回外れちゃって膝から崩れ落ちちゃったもんね」
真っ先に反応した女性は
鈴の幼馴染で幼、小、中、高、大まで同じという、もはや家族といっても過言ではないほど長い付き合いがある。こちらは身長が168センチとそれなりに背が高く、クール系のコーデをしている。
「これでやっと三人揃って始められるな」
こちらの男性は
鈴と京子の幼馴染で同じく幼稚園から大学まで一緒。
思いっきり陰のオーラを発しており、前髪はギャルゲーの主人公かというほど伸びている。
本日の正午。
ついにInfinite Possibilities Onlineの第二抽選結果が発表されたのだ。
食堂がいつもより人が多いのは、その結果を友人たちと共有するためだろう。
「早速、今日の講義が終わったらやるか?」
「良いわよ。あ、課題があったら先にやってるから遅れるかも」
「私は今日これで上がり。キャラメイク終わらしとく」
「ああ、そうね。それがあったわね」
「二人はもうビルドも終わらしてるんだっけ?」
「おう、俺は今回は暗殺者スタイルだ」
「今回も、じゃないの?ちなみに私は魔法使いよ」
三人はそれなりのゲーム経験があるようで、会話がスイスイ進む。
鈴は若干先輩の二人の話を聞きながら、ビルドを立てていく。
といっても一緒にゲームすることはしょっちゅうで、お互いの性格や戦い方などは分かっているので、それに合わせた役立ちそうなスキルなどを教えてもらった。
そして最後にお互いにPNを教え合ってその場は解散した。
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読んでくださり、ありがとうございます。
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