優れたディストピアSF

こういうSF、本当にかっこいい。
あとは読みやすい。これはどこまでも丁寧に書かれているからでしょう。
私はSFが好きなのですが、ハードすぎるのは、どうしても疲れて読みにくくなってしまうというダメSF愛好者です。
そのような私でもすっと読めるのは、適度に現在の事象を援用しながら読めるように配慮されているからです。
情報集積のはなしはAIやビッグデータといったもので論じられてきたことを彷彿とさせ、それゆえ、私はこれらの話を下敷きにして物語の世界にするりと入っていくことができました。
人工知能のルビの振り方についても、ギリシャ神話やラテン語を架け橋にして格好良さとわかりやすさを出しています。
ハルピュイアやデルファイ(デルポイ)みたいなわかりやすいものばかりではないのですが、それでもなんとなくつかめるように設計されています。
そして、元ネタ的なものがわかるとさらにニヤッとできる全方位に向けて親切なところがすごいです。
そういえば、マキモエとか略されると萌えということばを私は連想してしまうのですが、姦婦なんて意味があるのですね(羅和辞典引きました)。私はゲルマン系の言語はさっぱりなので、各章のタイトルは機械翻訳に頼ったのですが、機械翻訳をすると各章のテーマがわかりやすくなり、そのままにしておいても格好いいので、やはり全方位に向けて親切です。
格好良い描写に導かれて、たどり着いたダークなオチはとても素敵でした。本当に素晴らしかったです。