第5話 究極の戦い

 この日本での、不可思議な殺人事件のニュースは、即、アメリカン合衆国に伝えられた。



「ま、ま、まさか、我が国の最大の同盟国である、日本に、あの吸血鬼が出現するとは?



 迂闊だった。事前に、注意喚起をしておくべきだった。だが、もう、遅い。



 ここで、吸精鬼のミラ・オースチンを、緊急に、日本に派遣するしかあるまい。



 後は、頼んだぞ」と、CIA長官が、あの、えも言われぬ官能の味を思い出しながらも、名残惜しそうに言った。



 直ちに、名前と生年月日と住所を偽造した、偽パスポートが作成され、また、手持ちの資金を相当額を貰い、吸精鬼は、一路、日本に向かったのである。



◆   ◆   ◆



 さて、これからの展開は、各自の、想像に任せる事にして、この話は、ここで終了としたいところであるが……。



 だがである。ここで終わってしまうのは、ウナギの蒲焼きの「匂い」だけ嗅がされて、店を追い出される、お客さんみたいなものであろう。



 で、この私から、読者の皆さんに、質問してみたいのだ。

 この「吸血鬼 対 吸精鬼」の話は、今後、どうなって行くのであろうか?



1.「吸血鬼」が勝って終わる。

2.「吸精鬼」が勝って終わる。

3.「共倒れ」

4.「共に不死身」



 と、大体が、このような結末を想像されるだろう。



 しかし、先程の、CIA長官の言葉にも、注目して頂き、これからの、話を読んで行って欲しいのだ。



◆   ◆   ◆



 さて、渋谷駅の横の、スクランブル交差点付近で、アメリカン合衆国から送り込まれた、吸精鬼のミラ・オースチンは、不思議な胸騒ぎを感じた。

 目の前を、大きなカメラを持って歩いている白人男性に、異常に、彼女の大脳が反応したのだ。



「あ、あいつだ。あれこそが、正に、吸血鬼だ」と、そう確信した彼女は、彼に声をかけた。



 相手も、お互いに、ピンと来たのであろう。



 直ぐに、相手の男性の泊まっているホテルへ直行と、あい成った。



 ホテルに着くなり、ミラ・オースチンは、日本の季節の異常な湿気に、相当の汗をかいており、即、全裸になり、シャワーを浴びた。そして、バスタオルで身体を綺麗に拭くと、ベッドの上に飛び乗った。

 男性の吸血鬼も、同じく軽く、シャワーを浴びた。



 さて、これからが、正に、お互いの真剣勝負なのである。



 吸精鬼のミラ・オースチンは、真っ裸のまま、ベッド上で大きく両足を広げ、アソコを見せびらかして、相手を執拗に誘惑している。超魅惑的な身体でだ。

 それ故、吸血鬼のアレは、急激に、大きくなっていった。



 その瞬間である。即座に、吸精鬼は吸血鬼に飛びつき、その屹立した男性器にむしゃぶり付く。

「うっ、き、き、き、気持ちいい……」

 何しろ、彼女の舌とアソコの中には、タコの吸盤の遺伝子情報が組み込まれている。



 吸血鬼の男性は、相手の生き血を吸う事も忘れてしまったような恍惚の表情。



「駄目だ、駄目だ、駄目だ。俺は、相手の生き血を吸わねば成らぬのに、でも、身体が言う事をきかない。

 このままでは、この俺が、先に果ててしうまう……何とか、せねばならないのだが」とは、言うものの、絶世の美女のミラ・オースチンにされるがままである。



「生き血を、生き血を……」と、言いながら、吸血鬼は、全てを出し尽くしてしまったのだ。



「フフン、この私の、一人勝ちよね!」と、吸精鬼は、ニヤリと笑った。


 

 勝負あったかに思えたが、そこは、不死身の人間兵器である。



 吸精鬼がフト気を抜いた瞬間に、いきなり、背後から全裸の彼女に襲いかかったのだ。



 何と、わずか、十秒で全体液を再生、作り出していたのだが、ミラ・オースチンは、流石に、そこにまで気が回らなかったのだ。



「オー、マイ、ガッ!!!」



「な、な、何するのよ……止めてよ、止めて!!!」



「馬鹿な事を言うな、先に挑発したのは、お前のほうだろう」

 しかし、ここで、この吸血鬼は致命的失敗を露呈する。

 本来は、男性をまだ全く経験してない女性の生き血を吸うべき筈なのに、彼女のあまりの美貌に、男性器をバックから彼女のアソコに入れてしまった事なのだ。

 どっく、どっく、どっく……。と、全体液の放出。

「あっと、しまった。処女じゃ無い彼女の生き血は、もう吸えないのだった。

 万一、今後、彼女の生き血を吸ったら、この俺の全身の細胞が完全に分解してしまう。ううう、しまった、この俺とした事が……」



 その時である。

「ピカーン!!!」と言う、音が、吸血鬼の大脳内に響いた。

 つまり、その瞬間、吸血鬼の、今までの全ての記憶が蘇ったのだ。



「ところで、あのう、吸血鬼さん。万一、妊娠したらどう責任取ってくれるのよ!」と吸精鬼は、極、普通の女性に戻って、激しく詰問する。



「そ、それは大丈夫だ。実験の途中で、この俺の体液には、精子が一匹もいない事が証明されている。それよりも、この俺はだ、実は……」



「皆まで言わずとも知っているわよ。オソロシア帝国に反旗を翻す、反体制派のトップのモロダシ・ナワシバリ氏でしょう。

 あの、シベリヤの刑務所で、既に死んだ事になっている筈の……」



「そ、そこまで知っているなら、頼む、この俺に、協力してくれないか?」



「何をです?」



「この俺は、つい今ほど、貴方にアレを入れて放出した瞬間に、大脳内の神経細胞のシナプスが全て繋がったのだ。

 つまり、全ての記憶が、戻ったのだ。

 この俺の最終目標は、あの狂気の独裁者のオーチン大統領を倒す事だ。

 しかし、この日本で、既に3人も、生き血を吸って殺害してしまったのだ。

 何とか、無事にこの日本から脱出させてはくれまいか?

 協力してはくれないか?



 もう、いっぱしの夫婦みたいなものだしね」



「即答は出来かねるけど、とりあえず、CIA長官に聞いてみるは……」



 やがて、この二人は、アメリカン合衆国との地位協定を利用して、あの横田基地から、大型爆撃機に乗って日本からの脱出に成功した。



◆   ◆   ◆



 やがて、それから数週間後、オソロシア帝国内で、軍の偉い将軍や、役所の官僚の、女性の子供達が、全身の血を吸われて死んで行くニュースが、全世界に流れる事になるのだが、それは、また後の話なのである。



 ただ、後、一言のみ追加する。



 あの、オソロシア帝国のオーチン大統領の孫娘も、全身の血を吸われ、干からびた死体で発見された事をも記して、この物語りを終えようと思う。

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短編:吸血鬼 対 吸精鬼!!! 立花 優 @ivchan1202

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