義妹のお願いを内容を聞かずにすべてOKしていたら、いつの間にか取り返しのつかないことになっていた件

ミナトノソラ

第1話 誤解を生みまくる兄


 半年くらい前にすごく甘えたがりな妹が俺、楠松大樹には出来た。俺はその時までシングルファーザーの子として過ごしてきたから義妹は義母の連れ子ということになる。


 まあ俺としては父さんには幸せになってもらいたかったし、新しく結婚してくれた義母さんには感謝している。

 とても優しい人で今では立派な四人家族として生活できていると言えるだろう。


 少し気になることがないといえば嘘になるが…まあそんな細かいことは気にしなくていいか。


 俺はゆっくりとゲーミングチェアから立ち上がり本棚から未読のライトノベルを取り出す。ジャンルは異世界ファンタジーで数日前に最新巻がでたばかりの作品だ。


 これが実に面白い。よくある典型的な作品ではあるが、俺はそれが好みなのだ。根暗な主人公がある日突然転生し、チートスキルを手に入れて無双&ハーレムするやつ。今まで何回同じような作品を見てきたかと聞かれれば答えることができないくらいには見た展開だ。


 最近は悪役令嬢とかが流行っているらしいが俺にはまったくその面白さが分からない。別にジャンルを否定しているわけではないからな?決して悪役令嬢ものを否定しているわけではないです。


 それらが好きな人に喧嘩を売っているわけではないので勘違いは止めていただきたい。


「兄さん、失礼しますね」


 あ、なんか義妹が入ってきたようだが気にしない。俺は一度本を読みだすと読み終わるまで止まらないのだ。


「兄さん、今日もお願いがあってきました」


 きたきた~、俺このキャラ好きなんだよなぁ。全巻の最後、意味わからないところで終わったから楽しみにしてたんだよな。


「待ってた~」


「へ、待っててくれてたんですか兄さん!?。じゃあ、さっそくお願いを…」


 なるほどな、こういう展開だったのか。ここでこいつがこうして、あいつがこうするからこういうことになるわけだな。

 やっぱこの作者さん天才だな。びっくり仰天である。


 まだ十ページくらいしか読んでなくて、これだけ面白いのだからあと百ページって、おい!どれだけ俺を楽しませてくれるんだよ。


「楽しみすぎる!」


「な、なんと嬉しいです兄さん。期待に応えれるようなお願いであればいいんですが」


 この作品には物語の中盤暗いから主人公の妹も異世界に転生してくる。この展開はすごく刺激的で胸を掴まれたな。

 主人公の妹は主人公とは血縁関係のない義妹で、彼女が異世界に来た理由が兄を追いかけてきたからだ。


 彼女はいわゆるヤンデレ、というやつで義理の兄のことを愛してやまない女である。愛して愛して愛しすぎて向こうの世界で自殺して異世界まで追いかけてきたという設定。


 この設定はもちろん俺たち読者側しか知らず、肝心の主人公君は鈍感を極めすぎているせいで義妹の気持ちには気づいていない。


 実は俺、生粋のヤンデレ教である。ヤンデレヒロイン万歳。可愛い。主人公に一途、寝取られの心配がない。つまり最強。


「まじ可愛~~~~。大好きだ~~~~」


「っ~~~~~~~/////。私も好きですよ?」


「まじ?」


 なんだこの展開、びっくりしすぎて声が出てしまったではないか。何回も言うが、どれだけ俺をびっくりさせれば気が済むんだ。


「むぅ~、本当ですよ。兄さんへの愛は紛れもない本物です」


 これは進む進む。読む手がとまらなーーーーい。


「行きてぇーーーーー」


 ふと考えることがある。おれもこんな世界行ってみたいなと。主人公じゃなくていいから、彼らの仲間として義兄妹のイチャコラを一生見ていたい。


「イ、イキたいって兄さん。そんな…気が早いですよ。そういうのはもっと良い雰囲気でやりたいです」


 あ、やばい突然義妹ちゃんがピンチに陥ってしまった。


「嫌だ」


 早く平和にイチャコラを見せてくれよ。


「えっと…たとえ兄さんが嫌でも…今はちょっと…さすがの私でも…うぅ」


 あ、トイレしたくなってきたな。一回読むの止めるか。生理現象には俺でも止めざるをえない。


「ふぅ」


 ゆっくりと立ち上がり、ふと扉の方を向くと義妹、朱鳥あすかが顔を真っ赤に染めて俺のことを見つめていた。

 部屋に入ってきたのは気づいたけど、いったい何があったんだ?


「今回のお願いは兄さんには我慢してもらう、ということで…また今度っ!」


「ん?ああ、分かった…」


 朱鳥は恥ずかしそうにしながら部屋を出て行った。

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義妹のお願いを内容を聞かずにすべてOKしていたら、いつの間にか取り返しのつかないことになっていた件 ミナトノソラ @kaerubo3452

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