征くは善かろう還るは地獄終わる頸なき御百度詣

不穏当な朱い空、黝々とした首無し烏が
狂々と飛び交う中で、奇異黄イ声で呼ばれ
将、と目を醒す。いつの間にか手には
頭陀袋が一つ。
ぐっしょりと重たい ソレ が頻りに
呼びかける。

 征きは善いよい、還りハ 怖ヒ。

艮大明神の御百度詣は、決して終わらぬ。
地獄の責め苦を繰り返す。何度も何度も。
何に故に ソレ を売ったか。

歸れぬ想いは呪に成り返る。因果応報、
未来永劫、病血の如き朱い空が延々と。
大義名分、他力本願。黑々とした
首無しの群れ。

 怖い乍らも、融りゃン セ。

醒めぬ悪夢は身から出た闇。天地神明
金輪際、御百度詣は終らない。