第4話 教室

 ガラガラガラと教室のドアが開く音


「なぁに? ここ、2年生の教室だって? 知ってるよ~わかってるに決まってるじゃん!」


 教室の電気をつける


「君の机はたしか──」


 歩く音。椅子が引かれる音。


「ここだね。はい、座って!」


「……なに、もじもじしてるの~。ほら、座った座った」


 僕が歩く音。着席して椅子を戻す。


「じゃあ、私も隣に座ろっと♪」


 隣の席に座る音。


「ふふ~ん♪ ……ジロジロ見ないでくださいって? え? 保健室ではあんなに密着してマッサージして、体育館では激しい運動もして手もつないだのに、見られるの恥ずかしいの?」


「そっか、それとこれとは違うんだ! じゃあさ、ゲームしようよ! 見つめ合いゲーム! お互い相手の目を見つめて、先に目を逸らした方が負け! どう?」


「……罰ゲーム? 欲しがりだね君も~。じゃあさ、負けた方はデコピン一回! これでどう?」


「……ダメだよ、会長権限でゲームの不参加は認めません! それに君も今日は文化祭の手伝いばかりでなんにも楽しんでないでしょ? 確か、君のクラス、メイド&執事喫茶やってたよね? お客さんと見つめ合いゲームしてた気がするけど♪」


「青春は一度しか来ないのだよ。『愛のない青春、知恵のない老年。これすでに失敗の一生である』ってね。確かスウェーデンのことわざ! 青春はしっかり謳歌しないと!」


「よしよし、じゃあやるよ。私がスタートって言ったら始まるからね」


「じゃあ、スタート」


「……………………」


 

(5秒ほど沈黙が続く)


「はい、ダメ! 今、ちらっと目線ズレた! 自分でもわかってるでしょ? はいはい、デコピン一回!」


「おでこ出して、いくよ」


 デコピン。弾ける音がする。


「あはは! 痛そう! 思いっきりやったからね! く~悔しそうな顔! たまらないね~!」


「ん? もう一回? いいの? でも、おんなじじゃつまんないな~そしたら、あれを追加しよう! 『好きだよ』っていうやつ!」


「いいじゃん、いいじゃん! まあ、また私が勝っちゃうけど! 君には絶対負けない自信がある!」


「じゃあ、またスタートって言ったら始まりね! 私からいくよ! スタート!」


「好きだよ」


「……(ささやくように)好・き・だ・よ」


「……(顔を近づけて)好きだよ」


「お……なかなかしぶとい。じゃあとっておきの。(ためる感じで)好き……だよ」


「……はい、負け―また目、逸らした! じゃあでこぴんね!」


 デコピン。今度はほとんど音がしなかった。


「優しくしといたよ。だって、もうおでこ真っ赤になってるんだもん!」


「あー面白かった! 君、すぐ顔赤くなるし、うろたえちゃって、かわいいよね!」


「……あ~ごめん、ごめん。拗ねないでよ~」


「……ねぇ、ずっとこうしたかったって言ったらどうする?」


「そう。君と同じ教室で、隣同士で、毎日過ごすの。私といっしょだと楽しいでしょ!」


「え~? 私は楽しいよ! 君といっしょにいると。学年違うからさ~いっしょのクラスなんて無理だけど。今日は特別!」


「……ねぇねぇ、さっきの話だけどさ、このクラスに好きな人いるの?」


「あっ! また顔赤くなった! あやしいな~!」


「ふふふ。よしよし、それじゃあ、そろそろ次いこっか!」


「どこに行くかって? うーん、マッサージはしたし、バスケもしたし、教室も来たし。そうだ! 文化祭で披露した私のギターの演奏見せてあげよっか! 君、あの時間見回りしてて見れていないでしょ?」


「君は楽器は? リコーダーと鍵盤ハーモニカ? 授業でやるやるだけじゃん! じゃあ、パーフェクト生徒会長の私が、手取り足取りギターの弾き方も教えてあげる!」


 椅子から立ち上がる音。


「じゃあ、いこう! 次は音楽室!」



次回、音楽室編!

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【ASMR】文化祭で疲れ切った僕は北欧帰りの美少女生徒会長に後夜祭でもからかわれる フクロウ @hukurou0223

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