第3話 体育館

 廊下に靴音が響く音。音が止まり、体育館の両開きの思いドアが開かれる。そのまま二人しかいない体育館の床を靴音が鳴る。


「おっ! バスケットボールが落ちてるよ~! さてはバスケ部、ちゃんと後片付けしなかったな! 今度注意が必要だね……っと!」


 ボールが空を切る音。パスっと、ボールを受け取る音。


「お~ナイス! 不意打ちだったのにやるじゃん! 君ってバスケ得意だったっけ?」


「別に普通? ふふっ、じゃあ私と対決しよ! はい、パス!」


 またボールが空を切り、ボールを受け取る。


 ドリブルしながら会話が入る。


「ルールは簡単! 1on1(ワンオンワン)で先に2回ゴールした方が勝ち! ボール奪ったら攻守交替ね!」


「行くよ! まず、私から! 知ってると思うけど、私、みんなから文部両道でスポーツ万能って言われてるからっ!」


 ドリブルが激しくなる。キュ、キュ、と靴を鳴らす音。


 速いドリブルの音がどんどん近づいてくる。


「甘いよっ!」


 ボールの音が真横に聞こえ、どんどん離れていく。ジャンプし、バスケットゴールにボールが潜る音がする。


 ボールが床へと落ちてくる音。


「はい~私の勝ち! 全然踏み込んでこないじゃん! もしかして遠慮してる?」


 ボールが投げられる。キャッチする音。


「はい、じゃあ攻守交替! 次は君が攻める番! でも、君は遠慮してそうだから、負けたら何か罰ゲームにしようか! 何がいい?」


「決められない? あっ、なんでもいい?」


「うーん、じゃあ、負けたら好きな人の名前言うでどう? ……あっ、やっぱなし! えと、でも、えぇっとね──(少し間があいて)好きな人がいるかどうかにしよう! うん、それなら大丈夫!」


「よぉし! 負けないぞ! 私、後輩相手でも君相手でも遠慮しないからね!」


 ドリブルの音。だんだん速くなっていって。


「本気出したらなかなかやるじゃん! でもっ! これで! わっ!」


 大きな音がして体が倒れていく。どこかへ飛んでいったボールが跳ねる音がする。


「いてて、あっ、ごめん、だいじょうぶ──」


 すごく近く、耳元から声がする。少し乱れた息遣いが聞こえてくる。


 慌てて起き上がり、手を差し伸べる。


「(元気だったトーンから少し落ち着いて)あ、ありがとう、その……」


 手をつかんで起き上がる。


「ごめんね、痛くなかった? ケガとか、もう一度保健室は──行かなくても大丈夫、かな?」


「うん、あっ、じゃあ、ボール片づけて次のところ行こ! ちょっと! 危ないし!」


「えっ? 罰ゲーム? うん、引き分け! 引き分けにしよ!」


「(元気な声に戻る)ちょっと~! 笑ってないで行こう! 文化祭全然回れてない分、学校中まだまだ回らないといけないんだから!」


 体育倉庫の扉を開けてボールをバスケットボールのかごに投げ入れる。


「上手いでしょ! 今度また、放課後にバスケしよ~! 決着つけないといけないからね!」


「そう、負けず嫌い! 勝負ごとになると性格変わるねって言われる!」


「でも、君とは勝負って感じじゃないかな? ……どういうことって、もしかして気になる~?」


 体育倉庫の扉を閉める。


「それは秘密だよ~! 君が私に万が一でも勝てたら教えてあげる!」


「それじゃあ! 次の教室へ行こ~!! どこがいい?」


 体育館の扉が閉まる。



 次回、教室編!




◇◆◇◆◇◆


 もうすぐ9月に入ってしまいますが、なんとかラストまで更新できたらと思います。


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