第761話 神様は繰り返す

「大丈夫ドン爺?」


「ん、その声はゲイルか?」


「今ドン爺に回復魔法掛けてるから。燃えてるのどうする? 一応、俺とラムザは皆から見えないようにしてあるけど」


「すまぬが手助けをしてくれぬか?」


「構わないけど、俺がやりすぎるとドン爺が神として見られなくなるかもよ」


「それより、ここの魔王に酷い事をさせたくないのじゃ。上手くやれんかの?」


ゲイルは自分とラムザが神の下僕をやろうかと提案した。


「いいのか?」


「いいよ。まだまだドン爺はやらないとダメな事があるし。俺達は別にここの人達にどう思われても構わないからね」


「すまぬな。またゲイルに借りが出来るの」


「こんなの貸しのうちに入らないよ。じゃ、演出するからね」


とゲイルはドン爺に伝え、雨雲を呼び出した。


突如として暗雲が人々の上に立ち込める。


「な、なんだ?」


「ドン爺、ドン爺は?」


ハヅキが火を点けられたドン爺を心配した時にザーーっと雨が降り、燃え盛るドン爺の炎を消していく。


「ドン爺っ!」

 

ハヅキが叫んたその時にビシャンと雷がドン爺に落ちた。


その衝撃で磔台から落ちるドン爺。そして天の暗雲に隙間があき、光がドン爺を照らす。全てはゲイルの演出だ。


そしてゲイルはドン爺の後から光を当てるとドン爺は立ち上がる。


「皆の者、争うでない」


ドン爺もノリノリだ。


しかしマナーカ王は再び配下達にドン爺を殺せと命令した。


「ゲイルさん、ラムザさん、やっておしまいなさい」


「ハッ」


突如としてあらわれる青年と真なる魔王。


「召喚! ヤギっ」


ゲイルはあちこちに召喚ゲートを開くと大量のヤギが出てきて汚魂を食べていく。やや汚れはゲイルが殴って倒し、ラムザはヤギと共に汚魂を駆逐する。


ある程度片付いた所でゲイルが叫ぶ


「ええーい、控えおろう! この方をどなたと心得るっ! このお方はこの星の神、ドンウェリック様であられるぞ、皆の者頭が高いっ! 控えおろうっ!」


「ははっー」


その場で土下座する人間達。


「皆、頭を上げよ」


ゲイルとラムザはドン爺の横に控えた。


「今死んだ者は魂が汚れた者達だけじゃ。マナーカ王よこちらへ来い」


ゲイルはマナーカ王だけ殺さずに生かしておいた。


ガタガタ震えるマナーカ王。


「貴様の祖先はワシが初めに色々と手解きをしてこの星の発展の手掛かりとした。それを子孫であるお前が悪用したのは許せん。こんなにも魂を汚しおって」


「お、お許しを! 何卒神の御慈悲をっ」


「ならぬ、ここまで汚れてはまた再び良からぬ事をして他の者を傷つける」


「御慈悲をっ」


「成敗っ!」


ブチュッ


「ぎゃぁぁぁあっ」


マナーカ王の魂はドン爺によって滅せられた。


「皆の者、ワシは汚れた魂の者には容赦はせぬ。お前たちも魂を汚さぬよう清く生きよ」


ドン爺がそう宣言した所でゲイルとラムザは認識阻害を掛けて姿を消した。


目の前で起こった出来事に人々はドン爺が本当に神であることを理解したのであった。



「ドン爺・・・。本当に神様だったの?」


ハヅキはドン爺に近寄りそう呟く。


「そうじゃよ。ハヅキよ、皆と共にこの星の発展を頼んだぞ。ワシはこの国が落ち着くまでしばらく王となり治めるからの。暮らしやすい国にしてやるぞ」


「ドン爺っ」



こうしてマナーカ王国はドンウェリック王国となった。



城に入ったドン爺にゲイルが話しかける。


「もう俺たちのすることはないよね?」


「あぁ、すまなんだな。感謝するぞ」


「ここの魔王はどうする?」


「ワシの実体化が解けるまで遊んでやってくれるかの?」


「了解。勇者はどうする? タワーに閉じ込めてあるけど。汚魂になってるよ」


「そのまま死ぬまで閉じ込めておいてくれぬか。汚魂洗浄で駆除されるじゃろ」


「そうだね。なまじ強いからかなり長い間あそこで生きてると思うから、ドン爺の実体化解けてもまだタワーにいるかもしれないから後は好きにして」


ゲイルはそう言い残して帰っていった。



「魔王よ」


「はっ」


「そう畏まらんでくれ。ワシの実体が解けたらそちらに遊びに行っても構わんかの?」


「かしこまりました」


こうして、ドン爺は実体化が解けるまで王として君臨し、魔王とムホホホホと遊べるのを楽しみに統治を始める。そして貴族制度を廃止して皆が平民となる国にしていったのである。



「ドン爺お帰り」


神ゲイルが天界に帰ってきたドン爺を出迎える。


「世話になったの」 


「やってたのは魔王ゲイルだけどね。で、どうすんの?」 


「うむ、魔王の所に遊びに行って来るぞい」


「他の国がまた勇者召喚したけど?」 


「なんじゃとっ? かーーーっ! どこのやつじゃ」


「ここだよ。もうすぐ魔王討伐に出発するよ」


「ええーい、ワシがプチっとしてやる」


こうしてドン爺はまた実体化してはその国を支配して立て直してくのであった。



「他の大陸にも国できてるのにね」


めぐみがそう言った通り、ドン爺が国を治めている間に次々と国が増えていた。


全ての国の立て直しが終わるまでドン爺をはムホホホホっとは出来ないのである。




「誰じゃーーーっ! また勇者を召喚しおった奴はっ。ええーい、ワシがプチっとしてやる」


天界に戻って来ては実体化するドン爺。いつかムホホホホっとできるようになるまで頑張れドン爺!




おしまい




最後までお読み頂いた皆様、本当にありがとうございました。


「ぶちょー、今度の人事異動は異世界ですって」はスピンオフも含めて、これで完結です。


本編は各コンテストに応募しても最終選考とかには残るものの、書籍化には至らなかったのですが、最後の望みを掛けてカクヨムコンに応募してみたいと思います。


本作を気に入って下さった方に応援して頂けると嬉しいです。


11/19からポメラニアン転生が始まりますので、お読み頂けると幸いです。


しゅーまつ


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ぶちょー、今度の人事異動は異世界ですって しゅーまつ @shumatsu111

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