文字のテラリウム
めいき~
ありようの世界
皆様は、テラリウムというものをご存じだろうか。
自然の世界をガラス花器に、閉じ込めたものをこう呼ぶのだけど。
元は造語で、大地陸地を現すテラと場所のリウムを合わせたものらしい。
Webに置ける文字の羅列や紡がれる物語というものは、正に文字のテラリウムと呼ぶに相応しい。
サイトという器や、タイトルという器に等身大の中身を入れていく表現法といい。コメントや応援等による、水や養分によってさらに作者が育ったり腐ったりする様もまたその器の中で奏でられる一つの絵といえよう。
さて、このテラリウムだが別に花や植物だけでなく。苔等で表現する事もあるのだけれど。水のやりすぎが一番怖い、繊細な芸術である事はご存じだろうか?。
無駄に伸びる事で、弱弱しい印象となってしまい。本来の命の力強さを感じる事が出来ないわけだが。これは、物語にも同じことが言えるのではないだろうか。
物語を紡ぐうえで、必要な水を与えつつ育てる。
世間にある、売れないからの打ち切りであったり。連載の大幅な引き延ばしによる必然性の虚無等がそれにあたる。
惰性で出来たものというのは、本来の力強さを失ったテラリウムそのものだと私は思う。一度枯れた話でさえ、適度な水を与えれば蘇る様に。物語も又、適度な推抜や方針転換によって再び芽生え見目麗しい命の息吹を魅せてくれるのではないだろうか。
その器も、形状も。その光の強弱や角度さえ、文学を通じて生まれる息吹という風に私は感じられるのだ。
そこに紙であるか、デジタルであるかは関係ない。そこに、読むことが出来る文字があり。同時に、その文章が奏でる世界がそこにある。
苦悩に満ち、怨嗟を詠い。悦びを爆発させ、怒りが胸を支配する。
淡い想いを添え、愛に墜ちたとても。その一文を呼び覚ます、文字のテラリウムに過ぎない。
ーー等身大の息吹を用い、黒い華が舞い上がるーー
ガラスの世界が奏でる、童話の様だ。
そこに植えられた植物が何であれ、どの様な配置であれ乱暴に投げて偶々入った形状であれ。抜け殻になるまで練り上げられた配置であったとしても。
その世界で、楽しむ事が出来ればそれは幸せな事だと思う。
咽る程笑い、触れた指先に涙を零す。
そんな、物語を探し今日も彷徨う。
意思の華を手のひらに、深淵を覗き込むとその底に。
希望に満ち溢れた庭園であり、朧げな夢であり。
蜻蛉と偶像と蛇と跋扈する、禁忌の舞踏会でもある。
(おしまい)
文字のテラリウム めいき~ @meikjy
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます