贈り物
幸まる
愛しのカラスーズ
月曜の朝。
家族を送り出した後、私は決まってあの子達に会いに行きます。
携えるのは生ゴミ、そして箒と塵取り。
私の住んでいる地域は、月、木曜日が生ゴミ回収の日なのです。
そして、ゴミ捨て場に決まって現れるのは、黒々とした美しい羽根を持つ鳥。
そう、カラス。
「おはよう、カラスーズ」
電線に止まる三羽のカラスに、私はそう挨拶をします。
持参した我が家のゴミ袋を置くと、既に先に出されている他所のゴミ袋に穴が開けられていました。
犯人はカラスーズ。
引きずり出されたのは主に残飯。
唐揚げやパン、時には手を付けられないまま捨てられたおにぎりなんかもあります。
おいおい、フードロス削減はどうした。
そんなことを思いつつ、お掃除開始。
カラスーズの贈り物は私が片付けてあげなければなりません。
思い返せば、
最初の出会いは、まだ私が独身の頃。
一人暮らしをしていたマンションのベランダでした。
最上階でベランダが広く、私はそこからの景色が気に入っていました。
しかし、ある日突然、ベランダのトタン屋根に三羽のカラスが現れたのです。
爪をカシカシと鳴らしながら、楽しげにそこで食事をするカラスーズは、時々ベランダの床に残骸を落とします。
魚の骨、菓子屑、ナイロン片。
困ったのは鼠のようなものや、鳩の足に見えるものなど。
……グロ。
苛立ちながら色々な対策を講じてみても効果はなく、困り果てた私は、ある時テレビで、猫が飼い主に贈り物をする映像を見て閃きました。
そうか!
飼い主の気持ちになれば良いんだ!
カラスーズは、
そう考えてから、時々降ってくる贈り物にあまり腹が立たなくなりました。
そもそもインコを飼っていた私には、鳥は身近で馴染み深い生き物。
受け入れてしまえば何のことはなく、飼い主(仮)の役目とばかりに、時々降ってくる贈り物を片付け続けたのでした。
そんな日々から約二十年。
私は今も、カラスーズの贈り物を片付けます。
まさか再びカラスーズのお世話をする日が来ようとは思ってもみませんでしたが、飼い主(仮)なのですから、仕方がありません。
え?
あの頃のカラスーズではないって?
ええ、分かっていますよ。
でも、そっくりなのですもの。
散らかったゴミを片付けて、私は「またね」とカラスーズに声をかけて家に帰ります。
ベチッ
……道路に降ってきたホカホカの贈り物は、さすがに雨にお任せ致しますヨ。
《 おしまい 》
贈り物 幸まる @karamitu
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