トンネル

柳居紘和

トンネルにて

深夜、人気のないトンネルの入り口で三人の男が立っていた。


A「なぁ、やっぱりやめにしない?」

B「いや、ここまで来たんだ。行こう。」

C「噂によると、このトンネルだよな。」

A「…何で二人は平気なんだよ。」

C「夜だからテンションが上がってるのさ。」

B「さて、それじゃあ入ろう。」

A「うぅ…しょうがねぇなぁ。」

B「あ、そうそう。二人ともこれを持っててよ。」

C「用意がいいな。この懐中電灯、電池はあるの?」

B「ノープロブレム。任せなさい。」

A「嫌だなぁ…。」

C「案外、ビビリなのな。お前って。」

B「手でも繋いでいくか?」

A「勘弁してくれ…。わかったよ、行こう。」


男たちはそのトンネルに足を踏み入れた。懐中電灯の光が三つ、トンネル内を照らしていく。

長いトンネルだった。気付けば会話も途切れ、男たちの足音だけが木霊している。


A「大丈夫だよな?二人ともちゃんといるよな?」

C「何だ、まだ怖がってるのか?」

B「大丈夫だって、ちゃんといるよ。ほら、もうすぐ出口だ。」


やがて男たちはトンネルを抜けた。


C「大丈夫だったな。」

A「何か、拍子抜けしちゃったよ。」

B「これからどうするよ?」

A「夜も遅いし、帰ることにするよ。」

C「よし、それじゃあ解散だ。じゃあな。」

B「わかった。それじゃ。」


三人の男はその場で各々帰路に着いたが、AのもとにCから連絡があり二人は近くの公園で再び落ち合っていた。


C「やっぱり噂は本当だったんだな。」

A「何なんだよ、一体…。」

C「いいか、あのトンネルのことはもう忘れよう。」

A「うん…そうだな。なぁ…。」

C「あ?どうした?」

A「もう普通に喋って良くない?」

C「…それもそうだな。」

A「でもさ…。」

C「ん?」

A「あいつ、誰なんだろう?」

C「知らねぇよ…。」














数日前


C「例のトンネル行ってみようぜ?」

B「トンネルって、あの?」

C「そう、あのトンネル。」

A「何?有名なところ?」

C「あぁ、最近噂になってるんだ。」

A「どんな噂?」

B「何でも、夜中に通ると別人になっちまうらしい。」

A「どういうこと?」

C「姿形はそのままなんだけど、中身が変わっちゃうんだってさ。」

A「何それ、怖い。」

B「でもさ、中身が変わってもわからないよな?」

C「あぁ、それなら俺に案がある。」

B「ほう、聞かせてもらおう。」

C「しりとりになるように会話をすればいいんだよ。」

A「しりとり?」

C「あぁ。そうすれば誰かが入れ替わってもわかるだろ?」

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トンネル 柳居紘和 @Raffrat

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