甘く、酸っぱく、ほろにがく

煙草を吸う格好良い先輩が、浴衣を着て夏祭りに来ていて、ばったりと出会う。
そんな甘酸っぱい展開から、きっと今後このふたりには甘い何かが……と思っていたものの、現実にはそんな再会はなく。
思い出の中の紫煙の匂いと、りんご飴の味を思い出すばかり。
切なくて、もどかしくて、でもきれいで……忘れられなくて。
本当に素敵なお話でした。先輩の黒地に茜の花模様の入った浴衣も目に浮かぶくらいきれいで、まるで儚い手持ち花火のような鮮やかさと愛おしさだと感じました。
吸ったこともない煙草の苦みが、口の中に広がる気がしました。素晴らしい作品をありがとうございます。