第2話 ダンジョン変形 2
通路の奥に進んで行くと少し進んだところで行き止まりになっていた。
そこは小さな空間になっていて、地面によく分からない魔草が生えているだけで魔物の姿はない。
「よかった〜、なんとか生き延びた」
安堵のあまり地面に座り込む。
付けっぱなしにしていた配信画面を見ると同接が20を超えていた。
:ぎりぎりの戦いすぎる
:一歩間違えたら死んでた
:ダンジョン変形が終わるまであと2日ぐらいらしいぞ
:ハウンドウルフは中層の中ではまだ弱い方
:2日は長いな……
:救助無理なん?
「今の多摩川奥ダンジョンのニュースを教えてください。お願いします!」
:なんか情報ないんか?
:政府のダンジョンホームページ見たら、変形が終わるまでは魔物が活発になるし、ダンジョンの階層の入れ替わりも起こりうるから高ランク探索者でも危険らしい
:救助無理そうだな……
:このままずっとここで耐えてるのはあかんのか?
:すぐ限界迎える=死
「救助は来なさそう、か……」
それを見て俺は言いようのない虚脱感に襲われた。
親と呼べるような人もなく、生まれ持ったスキルも無意味なもので、こうして不幸としか言いようがない状況になり死んでゆく。
もはやこうなってはどうしようもない。
うつむいているとダンジョンの管理局からのメッセージがコメント欄に表示された。
:ダンジョン管理局東京支部公式☑ ダンジョン管理局の者です。
ダンジョンの変形が落ち着き次第救助隊を送りますので、それまでどこか魔物から隠れられる場所に避難していてください。
:ここで公式キターーーーーー
:その二日が厳しいんよ
:まだ希望はある
:ダンジョン管理局東京支部公式☑ これ以降、現状把握と位置の特定のため配信を続けてください。
「っ、わかりました!」
まだ、まだ見捨てられた訳では無い。
魔物との戦いで動けないほどの怪我をしたわけでもない。
死んでもないのに何諦めてんだ俺は。
悲観的な感情に浸ってる暇なんかない。
しかし、今の持ち物は魔物よけのアイテムが残り2つ、ハウンドウルフの牙、上層に生えていた香草、粘性のある水そして武器のハンマーとダガーのみだ。
食料も水もスライムを狩るのに邪魔だからと除けておいていたら落ちてしまったのだ。
そしてそろそろ先程焚いた魔物よけの効果が切れてしまう。
ならばここを拠点として魔物が入ってこないうちに倒していくしかない。
魔物よけと武器を持ち通路へ向かう。
「ホーンラビットか……」
通路に向かうと魔物が一匹入ってきている。
この魔物は鋭い角が生えていて人を見つけると突進してくる危険な魔物だ。
こちらに気づいて突進してきたホーンラビットを壁際に避ける。
そして止まったところをダガーで倒した。
これならまだなんとかいける……
その後も警戒を続けながら入ってきた魔物を倒していった。
通路があまり大きくならなかったので強い大型の魔物と戦いが避けられたようだ。
多摩川地下ダンジョンに閉じ込められて大体5時間が経った。
:ホーンラビットしか出てこないな
:生きろーー
:あと一日半
:頑張れーー
:頑張れよ!
:救助と変形の調査のために人を送る目処が経ったらしいぞ
同接数はダンジョン内に閉じ込められていることもあり1000近くにまでなっている。
今までにない数字だ。
このまま強い魔物との戦いを避けられれば生き残れそうだ。
しかし、地下で蒸し暑く常に魔物を警戒していたため空腹と疲労がひどくなってきた。
「みなさん…魔物って食べられると思いますか……?」
:は?
:魔物は食いもん違うで
:とうとう壊れたか?
:逝っちゃってますねこの方
:魔物にはダンジョン内の魔素が含まれてるから人間には毒ですね。
:早まるな!!
「いや……自分スキルで「毒無効」っていう毒が効かないスキルを持ってるから大丈夫です。……多分」
実際今までに魔物を食べたことなどない。
そもそも魔物は食べるものではないし、一度だけお金がなさすぎて魔草をかじったことがあったが、あまりのまずさに悶え苦しむことになった。
:いや、多分て
:スキルがあるならいける…のか?
:世界一不安な多分
:でも流石に飲まず食わずだと戦えないよな
:いけるだろ!(責任はとらん)
:世界初魔物クッキング
「背に腹は変えられません……食べます!!
きっと毒があっても効かないので死にはしないです。」
そうして喉の乾きを癒やすためスライムからとれた粘性のある水を手に取った……
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固有スキル「毒無効」持ち底辺ダンジョン配信者、ハズレスキルで無双する。 鶏もも @yukirnngo
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