閑話
私は佐久間桜李は花火大会が終わった帰り道、泊ちゃんと未来ちゃんと一緒に帰っていた。
城間くんだけ私達とは反対の方に家があるので途中で別れたのだ。
「まさか、桜李と未来がいるとは思わなかったけど楽しかったな。」
「そんなことを言うなら、私だって二人がいるとは思わなかったぞ。」
そうだ、城間くんからはただ花火大会に行こうとだけ言われていた。それで来てみたら個人に連絡だけをして他の人がいることを言っていなかったのだ。
泊ちゃんと未来ちゃんとは仲が良いし、全然嫌とかそういうのではないけど、出来るのなら城間くんと2人でも良かったなぁ…と思うのはしょうがない。
「でもいいじゃん。今日の城間くんはすごい楽しそうだったよ。」
本人も周りの人も気がついてるかは分からないが、城間くんは意外と思っていることが顔に出やすいと思う。今日はいつにも増して楽しそうに見えた。
いつも澄ましてるような雰囲気をしているから、今日は特にわかりやすかった。
「怜ってたまに悲しそうな感じっていうか、落ち込んでるような時あるもんな。」
「ふむ、容姿のことでも気にしているのかな?私は別に気にしていないが…。」
「いやそんな感じじゃないような時もあるっていうか…。てか未来がそんなこと言ったってしたら余計落ち込むと思うぞ。」
泊ちゃんの言うように基本的には楽しげにコロコロと表情を変える城間くんは、たまに悲しげになる時がある。
もしかしたら本当に容姿のことを気にしている時もあるのかもしれないし、最初は女性に対して少し恐怖心があるのかとも思った。
男性の中では女性に対して怖い感情を抱く人も少なくない。なにか昔にされたとか、そういったものでトラウマになってしまうことはある。
でも、城間くんの場合はそうじゃない気がする。どんな女性とも普通に接しているし、何なら誰とだって会話を楽しんでいる。
だからなんとなくとしか言えない。私たちには想像できない『なにか』があるのではないか。
「高校からずっと城間くんと一緒だけどあんまり昔のことって私知らないかも。」
「そう言えばあたしも詳しく聞いたことはないな。」
「そもそも私は大学から知り合っているからな。桜李くんや泊くんより詳しくないかな…。」
まぁ確かに未来ちゃんは大学に入ってから知り合ったからしょうがない。でも、私と泊ちゃんは高校からの付き合いなのだ。城間くんのパーソナルな情報は結構知っているつもりだったけど、昔のことはあまり知らない。
というか、城間くんがあまり喋らないようにしてる?
「あたし中学の時の怜の様子をちょっと聞いたことあるんだけどよ、今よりかなりグイグイ行って一人で突っ走るみたい感じって聞いたぜ。」
「今は大分落ちている方だとは思うが…お調子者という感じだったのか?」
「さぁな。女子も男子も反応によく困っていたってさ。」
「ならそのことを思い出して恥ずかしくなっているとかそういう感じかな?」
城間くんの今の様子からはあまり想像できない姿だけど、遊びに誘えば必ずと言っていいほど来てくれるし、基本的にノーとは言わない。
突っ走るは分からないけど、周りと遊びたがる性格と言えなくもない。
本当の性格的にはもっとはしゃぎたいけど、成長して恥ずかしくりなり落ち着いたのはありそう…かも?
「今度怜くんに昔のことを聞いてみようかな。私は2人と違って怜くんと出会って日が浅いから興味はあるな。」
「なら3人で聞いてみようよ!私も泊ちゃんも知らないことがあるだろうし。」
「それ、怜が迷惑しねーか?」
「うっ…たしかに…。で、でもみんな気になるなら一度に聞いた方がいいかなって。」
ま、まぁ本当に迷惑そうにしていたらやめよう。聞かれたくないことを聞かれるのも嫌だとお思うし。
そんな会話をしながら駅に着き、各々自分の家の方向に帰っていった。花火大会のことじゃなくて、ほとんど城間くんのことを喋っていたな…。
城間くんが私達には言えない大きなことを抱えてる気がするという考えは変わらない。それが気にならない訳じゃないけど、無理にそれを言ってほしいとも思わない。
ただ、そんな城間くんにとって私達が彼にとっての心の拠り所になっていたら良いなぁと思う。
夢の世界で いちごあじ @strawberry-taste
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