第92話 (完結)大沢君、アメリカに飛ぶ。
2023年12月28日10:00分
休みに入る人も多いからかけっこう混みあっていた。
草加部は奥さんと2人で仙台空港の屋上にいた。大沢君には内緒で見送りに来たのだ。グリミー民族との紛争も終結し晴々した気分でアメリカに飛ぶ。
カッコいい。
政府専用機らしいものがあった。
あれに乗って行くんだろう。
天気が最高に素晴らしい。草加部はしばらく景色を楽しんでいた。
東側は海だ。
「あれって何?」奥さんが指差した。
「フェラーリ?」
真っ赤なフェラーリが政府専用機の方に走って行った。周りの人もフェラーリに釘付けだ。
「え~、あれに乗ってんの?」
「あっ、そうだよ。」
大沢君が真っ赤なフェラーリから降りる姿が見えた。
「すげ~」
おそらく商談相手の計らいだろう。粋なことをしてくれる。
「さすがアメリカだな。」
大沢君が政府専用機の階段を昇り始めた。
”たくましくなったな~”
”ゴリラ、ゴリラって呟いてたんだよ。”
草加部は見守った。
階段を昇り終わったところで、近くにいる政府関係者の見送りに応えるために振り向いた。
お辞儀を繰り返していた。
手を振ってくれている人には手を振って応えている。
そして、飛行機の中の人に促されて中に入って行った。
草加部達は飛び立つのを待っていた。
ピロロン。草加部のスマホが鳴った。メールだ。
それを開くと大沢君が政府専用機の中で座っている笑顔の写真だった。
奥さんに見せた。
「お~、すご~い。」
政府専用機の中の詳細は機密事項なので明かせない。
ついに動き出した。政府専用機がゆっくりと動き出し滑走路に向かっている。
滑走路に出ると速度が上がった。
飛んだ。
周りの人も手を振っていた。
草加部は見えなくなるまで見つめていた。
”商談をまとめてきたら代表権を譲ろうか。”
政府専用機が見えなくなり草加部達は屋上から降り始めた。
途中でおみやげ物を見たりして、そろそろ帰ろうと建物から出ようとした時に濃紺のスーツ姿の佐藤がいた。
佐藤は笑顔でお辞儀をした。
「佐藤さん」
草加部もそれに倣いお辞儀をした。
「草加部さんどうも」
「佐藤さん、この度は本当にお世話になりましてありがとうございました。」
「いえ、政府としても草加部さんには本当に助けられました。」
「いえ、とんでもございません。」
「草加部さん、今日はもう帰るだけですか?」
「はい、帰って牛タンでも焼いて食べようかと思っていました。」
「それは、いいですね。実はプレゼントを用意してあります。」
草加部はキョトンとした。
「プレゼントですか?」
佐藤が何か合図をした。
その合図で黒服たちが両脇に並んで出口の方を手で指した。
そこには黒のロールスロイスが停まっていて、後ろのドアを開けて待っている運転手がいた。
乗るように手招いてくれている。
「えっ!」
「凄ーい!」奥さんも驚いている。
佐藤が笑顔で、
「草加部さん、ご自宅までお送りしますよ。大沢君ばかりフェラーリじゃ不公平でしょ。」
「あ~いや、車で来てますので。」
「大丈夫。お届けします。いいから乗って。」
「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます。」
奥さんも嬉しそうに「うん」と答えた。
「じゃあ、車のカギを」と佐藤が手を出した。
「ほんとにすいません」とカギを渡した。
佐藤は手で乗るように促した。
草加部は笑顔でお辞儀をして奥さんとロールスロイスに向かった。
奥さんを先に乗せる。次に草加部が乗った。草加部が乗った時に佐藤が足早に来た。
佐藤が小声で話した。
「アメリカのグリミーランド予定地の地下にはレアアースやらレアメタルが眠ってるんですよ。」
「えっ」
佐藤は、そう言って足早に戻った。
運転手がドアを閉めてくれてた。
運転手が乗り込み、
「では、出発いたします。ご自宅までのコースは佐藤様より申し付かっておりますので。」
と言い出発した。
佐藤さんを始め、黒服の人達が手を振って見送ってくれた。
草加部達もそれに応えて手を振った。
そして、ロールスロイスに乗っている写真を大沢君にメールした。
ー完結ー
グリミー《ある運送会社の物語》 ナイトワーカーズ @night-workers
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