夏休み最終日

蠱毒 暦

いや…勉強しようよ。

「…今年の夏休みも楽しかったなぁ。」


窓を全開にして扇風機をガンガンに効かせた部屋で、軽く汗ばみながら呟く。


「…プールに、山登り…花火もやったし肝試しもして…面白半分でパスポート作ってハワイにも行ったっけ。そこで食べたBBQのお肉…美味かったよね〜」


「テメェが肉ばっか食ったせいで、俺達全く食えなかったけどな。」


「いやいや、面倒な旅行のプランは全部私が考えたから、感謝して欲しいくらいだよ。」


「…はぁ。よく言うぜ。」


余りの暑さで喋る元気もなく黙っている内に、ゆっくりと扉が開いた。


「…おまたせしました。」


「「!?待っていた(ぜ)ーー藤堂お嬢様!!!」」


「ふ、ふふ…ぐ、愚民ども…跪きなさい。アイス様の御前ですよ?」


「「は、ははぁ〜」」


丸机の上にそれぞれアイスや氷が入った冷たい麦茶を置いた。


「…ん〜〜♪最…高っ。」


「美味え…うめえよぉ…」


「…申し訳ありません。屋敷のクーラーが昨日から軒並み壊れてしまって。執事さん達は絶賛、旅行中でまともなもてなしが出来ず…」


「アイス様と飲み物があるから問題なし。」


「そそ。片山くんの言う通り藤堂ちゃんが気にする事じゃないよ〜むぐむぐ…」


「な、ならいいのですが…それで、2人は今日はどのようなご用件でこんなに暑い中来て下さったのですか?」


2人はお互い顔を見合わせてから言った。


「ノリだな。」「うん…ノリだねぇ。」


「え…ノリですか!?」


「家にいてもボッーとする事しかやる事なくてねぇ。」


「ああ。他の4人は、なんか宿題やるとか言ってたか…本当、馬鹿な奴らだよな。」


「同感だね。」


「なら、お二人は既に夏休みの宿題を終わらせたんですね。」


2人は床に寝転がった。


「いや?なーんもやってないね。夏休みを全開で楽しむのなら、邪魔でしかないし…後で先生に怒られたら済む話でしょ。」


「で、ですが…」


「明日死ぬかもしれないからな。今を大事にするのはな…世間じゃ当たり前に行われてるぜ?お嬢様。」


「…え、そうなのですか?」


だらけていた赤松さんが急に飛び起きて、わたくしの机の上にある紙を凝視する。


「…そ、それは。」


「『私立昼波高校 文化祭』…開催日は…よし。今日のやる事が決まったね。」


「最終日に文化祭か…昼波市は電車ですぐだから…こりゃ楽しめそうだ。」


片山さんが部屋を出る。


「…それじゃ私達も行こっか♪」


「っ……はいっ!」


わたくしは、笑って差し伸べられた赤松さんの手を握って立ち上がった。

                  了





































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