17話 ランチタイムとそのお礼


「え、これってあのお茶なの!?キャラさんすごい!!」


サナの感嘆の声に悪い気はしてないキャラ。


「あ。ホントだ。すごい美味しい。すごいや、キャラさん」


と、シュレッケの声には冷たい視線を無言で返すキャラ。


「オレ、何かしたか?」

と、私を見る。


「あー……、まあ、そのうち落ち着くんじゃない?」

私はシュレッケの問いかけに曖昧に返事する。


キャラの淹れてくれたお茶はとても美味しかった。まあ、当然だ。何せ王室に出せるレベルの腕前なのだから。

でも、それはそれとしてサナの裏表ない賞賛に悪い気はしてないようだった。

私も木のカップに鼻を近づけると、スゥーっと吸い込んで香りを楽しむ。口をつける。口いっぱいに広がる香り。キャラってやっぱりすごいな。


「さすが、キャラだね。美味しい。ありがとう」


私がそう声を掛けると、

「お、お嬢様……」

と、感極まった声で目を潤ませた。いや、さすがに大げさすぎる。普段褒めもお礼も言わないヤツみたいじゃないか。

いつも褒めてるわけじゃないけど、お礼は毎回言ってたはずだよね?毎回その反応どうなの?


「ポエナ、仲良くてもたまには褒めるなりお礼言った方が良いと思うぞ?」

やっぱりそう思われた!!


「がるるるっ」


「だからなんでオレを睨むんだよ!?」

フォローしたつもりが逆にキャラから唸られてシュレッケは困惑する。


サナがボソリと言った。

「キャラさん、美人だもんね?」


「え?」


「シュレッケも仲良くしたいよねー?イイトコ見せたいよねー?」

と、笑顔でサナが言う。目が笑ってないけど。


「いや、ちが。単純に可哀そうって思っただけで……」


「がるるるるっ」


「えー、ホントかなー?」


二人に挟まれてしどろもどろになっているシュレッケ。

別にこのまま見守っていてもいいのだけど、いい加減お腹がすいた。


「シュレッケー、ご飯はー?」


「あ、ああ。今出す」

あからさまにホッとした様子でシュレッケは皿を運び始める。


その様子を眺めていたら、ふと視線を感じてキャラの方を見る。そしたら何故かキャラが観察するように私を見ていた。


「どうしたの?」


「……いえ?」


「はい、お待たせ」

そう言ってシュレッケは最後の皿をテーブルの上に置いて、空いていたサナの横の席に座った。


「へぇー?」


「なんだよ?ガッカリしたか?」


私は首を横にフルフルと振る。大皿には葉野菜のサラダ。主食に小麦を練って茹でた奴と根野菜のスープ。そして、ゆで卵。


「私だったらもっと凝ったモノをお出ししたのに」

とキャラが言い始めた。

「キャラ、これでいいのよ。卵の素材の味が知りたかったんだもん。だからゆで卵にしたんでしょ、シュレッケ?」


「……まあな」

と、ちょっとぶっきらぼうにシュレッケは答えた。

それに結構栄養の事も考えているようだった。サラダとスープを出したのも私たちやサナを気遣っての事みたい。


「それじゃ、いただきまーす」

私はゆで卵を机に軽くぶつける。すると簡単にヒビが入った。どうも一般的な鳥の卵より殻は薄いらしい。

丁寧に殻を剥いていく。すると真っ白くてつるりとした白身が姿を現した。私はそれを真ん中から割る。

黄色というよりオレンジに近い黄身だった。パクリとかじりつく。黄身がポロリと口の中で崩れた。

味はというと、鳥よりサッパリしてる、かな?黄身もボソボソ具合があまりなくて飲み込みやすい。


「へぇー、こんな感じなんだ」


「鳥と結構違うだろ?」


シュレッケの言葉にうんと頷く私。それにサナが補足する。


「でもね、栄養豊富なんだよ?病気やケガの治りもいいし、お肌の調子も上がるんだって」

でもサナはその事にあまり実感はないみたい。今もお肌もちもちスベスベしてるもんね。





ご飯をおおかた食べ終わった頃、私は思い出したので荷物を漁る。


「あった。折角だし、みんなで食べようよ」


私は皿の上に手持ちのドライフルーツを広げる。


「わぁーいいの!?見た事ないフルーツがある!!」


一番食いついたのはサナだった。


「すごい、美味しそう!!これ、いいの?」


「うん。お昼ご飯や案内や仲良くして貰ったお礼だよ」


そうはいったものの、シュレッケはともかくサナは居心地悪そうだった。

「それ、どっちもシュレッケじゃない。私は貰ってばかりだよ?なんか二人にしてあげれる事って……」


「ああ、だったら」


と、シュレッケが思い出したように提案した。


「魔法なんてどうだ?」



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シュレッケの森 dede @dede2

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