最終話 『それこそがきっと、私の幸せ』【添い寝/寝息/寝言】

「あ、うん。もう電気消して大丈夫」


(※電気を消す音)


(※主人公がベッドに入る)


(※以降、耳元でリエステの声がする)




「ふふ、結局はこうやって私の我がままを聞いてくれるお兄さん、好き」


「お兄さんが逃げられないように、服をつまんでおくことにする」




(※衣擦れの音)




(※リエステが息を大きく吸って吐く)


「男の人の匂いがする」


「あ、大丈夫。変な臭いじゃない。むしろ、私は好きかも知れない。きっとお父さんが居たら、こんな感じ」


「うん? そう。私は、両親を知らない。物心ついた時には死んでて、私はお手伝いさんに育てられたから」


「お父さんが王国有数の戦士で、お母さんは私と同じ宮廷魔導士。私はその2人の間に生まれた」


「外見……この綺麗な金色の髪も、青い目も。お父さん譲りらしい」


「身体の性能は、お母さんの血を強く引いたみたい。特に魔力は、王国随一。だから両親が死んでも、王国は私を手放さなかった。私は、血だけは、優秀だから」


「言ったでしょ? コノヨン……特に私が居たアステア王国は、生まれ持った能力がその人の人生を決める」


「そう言う意味では、私は人生勝ち組。宮廷から一歩も出られなかったけど、なに不自由なく生活できたし、大好きな研究に没頭も出来ていた。両親には感謝しかない」




(※布団の中でリエステが身をよじる衣擦れの音)




「ただ、なに不自由の無い生活をしていたせいで、人が何に不便を感じて、何を苦痛に思うのか、私にはあまりピンとこない」


「そう。みんなに“楽”をさせたい。そう思った時、私は、何をどうすれば“楽”に感じられるのか、ぜんぜん知らない自分に気付いた」


「だから、ここ最近のお兄さんとの生活は、痛くて、苦しくて……楽しいでいっぱい」


「人にとって何が不便なのか。人は、何を求めるのか。お兄さんとの日々が、教えてくれるから」


「そして、どうしたら人は“楽”が出来るのか。チキュウの家電が、ヒントをくれる」


「コノヨンに戻って少しすれば、私はきっとお嫁さんになる。自由に研究できなくなるそれまでに、出来るだけたくさん、魔法と魔道具を作りたい」


「ん、そう、結婚。こう見えてもう15だし、私の知らないところで既に婚約者くらいは決まってそう」


「……? 別に、嫌じゃない。それがコノヨンでは普通だし、生まれてくる子供はさらに優秀な魔力を持つはず。たくさんの魔法を使って、きっと、人々を楽に、幸せにしてくれる」


「もしその時に私が作った魔法と魔道具が少しでも役に立ったなら、それこそがきっと、私の幸せ。私が、生きた証」


「あっ、でも、チキュウに来て、少しだけ。思ったこともある」


(※リエステが布団の中で近づいてくる。以降、声の距離が近くなる)


「向こうの私のお婿むこさんが、少しでもお兄さんに似てたらいいなって」


「うん、そう。お兄さんみたいに私を雑に扱って。……でも、欲しいときに欲しい言葉をくれる。心配してくれる」


「失敗することが分かってる。面倒なのも分かってる。けど、私の知識と経験のために、身を張って実験台になってくれる。そんな、優しい人だったら良いなって、思った」


「あっ、ついでに。お兄さんがみたいにさげすんだ目で私を見てくれるとなお良いかも」




「そう、その目。その目が……好き♪ すごく興奮する」




(※衣擦れの音)


「お兄さん? どうしたの、私の頭を撫でて」


「別に悲しいわけじゃないから、慰めてくれなくても大丈夫」


「……でも、ありがとう。お兄さんの大きな手、硬くて、指も太くて。なぜだかすごく安心する」


「くわぁ……、はふぅ」


「……不思議。添い寝をしてお兄さんにリラックスしてもらうはずが、私がリラックスしてしまっている」


「これじゃあ、恩返し失敗……。また、次を、考えないと……」




(※リエステの寝息)




「んぁ、寝てない、寝てない……」


「ねぇ、お兄さん。私、頑張る、から……。お兄さんから貰ったもの、頑張って、返していく、から……」


「だから、これからも、このお家に……置いて、くれる?」




「ふふ♪ やっぱりぃ、お兄さんはぁ、良い人……♪」


「それじゃあ……これからも、末永く、よろしく……、お願い、します……」




「ん……。そう、する」


「おにい、さん。おやすみ……なさい……」




(※リエステの寝息)


(※以降、寝言)




「ふふ。次はぁ、どんな恩返し、出来るかなぁ……?」




「どう、したらぁ。おにいさん、喜ぶ……?」




(※リエステの寝息)




「おにい、さん……。ずっと、一緒に……」




(※リエステの寝息)




「……ふふっ。おにいさん……すき」




(※リエステの寝息)







「だい、すき……♪」







(※リエステの寝息)




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【短編】異世界から来た貧弱系魔法少女は、それでも恩を返したい! misaka @misakaqda

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