しっぽ22本目 最終話『新たなる脅威』と書いて。

 銀子ぎんことお別れの朝。わたしたち三人は、望月もちづきの石碑の前にいる。

借表かりおもて様とマアミにも、ごあいさつをしたかったですわ」

 もちろん二人も誘ったけど「家族のお別れにはおジャマできないよ」と言ってくれた。彼の隣りでマアミもうなずいていた。

 石碑を境にして、銀子ぎんことわたしたちは向かい合う。

 石碑はお別れの決意の境界。また、わたしの気持ちがゆれないように。

銀子ぎんこ。今までありがとう。あなたのおかげわたしは勇気が持てた」

「いいえ唯子ゆいこ。ワタクシこそ、あなたと一緒に成長出来ましたわ。それとおばあちゃま。あなたのご助力のおかげで唯子ゆいこと乗り切ることが出来ましたわ。ありがとうございます。ご飯、とってもおいしゅうございました」

「お礼を言うのは私のほうよ。唯子ゆいこは本当に強くなった。銀子ぎんこ、あなたがいてくれたからこそ。ありがとう」

 泣きたくなったけど、グッとこらえた。涙は、心の中で流そう。

「……」

「……」

「……」

 みんなの沈黙を、銀子ぎんこが破った。

「それではさよならですわ。みなさんの幸せを、ペルソナの中から祈っております」

「さよなら銀子ぎんこ。見ていて、わたしの勇気」

清助せいすけ様によろしくね。さよなら」

「……」

「……」

「……」

 あれ? 変だな。

「「「 ………… 」」」

「いや、戻らんのかーい!!」

「ですわ!」

 銀子ぎんこは帰れなくなった? そんな、決意したばかりなのに! イラッときた。

「なんでよ! どうしてよ! 心の涙を返してよ銀子ぎんこ!」

「そんなん知らんがな! ワタクシに言われても! ですわ!」

「落ち着きなさい二人とも。銀子ぎんこが帰れない理由はあるはずよ。探さないと」

「ねえ、ちょっと。あんたたち何コントしてんの?」

「「ヒエっ!」ですわ!」

 マアミ! 人の姿で、木の陰から顔を半分だけ出しててムリこわい。

「マ、マアミこそ、どうしてここに。借表かりおもて君と家で一緒にいたんじゃないの?」

 銀子ぎんこを見送りに、ってことはなさそう。チョーカーを撫でながらこっちに来た。

「抜け出して来たのよ。それより銀子ぎんこ。あんた、まだ戻ってないの?」

「ンまっ! 憎たらしい猫だこと」

 とっても悔しそう。帰れない原因が分からなくてイライラMAXマックス地団駄じだんだMAXマックスだ。

「まあいいわ。ワタシは唯子ゆいこに言いたいことがあって来たから」

「何? 言いたいことって」

 あれ、急にモジモジしだした。恥ずかしそうにわたしをチラチラ。

「うん唯子ゆいこ。あのね、そのね、ワタシね……」

 今度はクネクネ。ムリ不安……。

「ワタシ、せいのことが好きになっちゃったの」

 ……ああ。なあんだ、…と?

「呼び捨て! 借表かりおもて君を『せい』って呼び捨て!!」

「そっちかい! いやイヤいや、おおお気を確かに唯子ゆいこ! 新たなる脅威きょういですわ!」

 なんてこと。『新たなる脅威きょうい』と書いて『恋のライバル爆誕ばくたん』て読む、とか?

 うう、頭が混乱して頭痛が痛い。ああ、日本語が変。どうしてこんなことに。

「ああ、なるほど。唯子ゆいこ、願いの解除は取り消されたみたいね。チョーカーを戻す時に借表かりおもて君が言った〝約束〟を思い出してごらんなさい」

「なるほど」っておばあちゃん。一人で納得しないで。

「え、ええと……「マアミをせいいっぱい守ります!」って」

 あっ! あああ! これって、みたいなセリフ!!

「そうそれ。それを聞いてキュンてなっちゃった。女の子ならわかるでしょ?」

 清助せいすけさんが慌ててたのは、これ。『頼むよ、本当に』って言ったのは念を押してたのか。

 だから銀子ぎんこは帰れなくなった。わたしの願いを叶えるために。

 そういえば借表かりおもて君はわたしにも「唯子ゆいこを幸せにします!」って言ってた。こ、これは。

 彼は純粋だから、自分の言葉が思わせぶりになるって気づかない人。なのね……。

 そのことを思いつかなかったわたしのバカ。それに、それにぃ!


せいの!! ド天然!!!!」


「ふふ、ワタシが言いたかったのはそれだけ。唯子ゆいこ、負けないわよ。じゃあねー」

 嵐のように現れて、不敵な笑みと共に風のように去ったマアミ。わたしは……。

「ふふ、フフフ。うふふふふ」

唯子ゆいこ! お顔面を崩壊してる場合ではありませんの。勝利あるのみですわ!」

「ちょっと唯子ゆいこ。大丈夫?」

 心配いらないわ銀子ぎんこ、おばあちゃん。なんだかうれしくて。だって、だって。

「だって、銀子ぎんこ。あなたはここにいられるじゃない。わたしは銀子ぎんことずーっと一緒にいられるのよ! 最高!」

「なんて斜め四十五度な前向きなの。私も喜ぶべきかしら? そういうわけだから銀子ぎんこ唯子ゆいこをよろしくね」

「は、はいですわ。ワタクシにお任せを。ですの!」

 マアミなんてへっちゃらよ!『恋のライバル』。なんていい響き。

「この際だわ。景気付けに言っちゃう。」


「燃え上がれ! わたしの勇気!!」

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ペルソナの九尾 * 恋と勇気と友情で! わたしはペルソナの九尾になって、みんなを守って願いを叶える!! 左近ピロタカ @sakonpirotaka

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