文字ハラスメントにはご注意を

ちびまるフォイ

※文字ハラー向け:この小説は2100文字です。耐性のない方はBack!🔙

「〇〇だな?」


「警察……ですか?

 どうしたんですかこんな朝から」


「お前に逮捕状が出ている」


「えっ」


「お前を文字ハラスメントの罪で逮捕する!!」


「えええ!?」


逮捕された警察署には泣いている女が待っていた。


「あのひとは?」


「彼女が文字ハラスメントの被害者だ」


「ちょっとなにかの間違いでしょう!?

 彼女と話をさせてください!」


「わかった。しかし彼女に何かハラスメントすればその場で射殺する」


「害獣駆除より僕の命軽いんですね」


トリガーハッピーな警察では話にならないと、

実際に被害者と話して仲良く手をつなぎ示談をしようと考えた。


「あの……」


「ひくっ、ひくっ」


「あなたが、僕を文字ハラスメントで通報したんですか」


「ええ……」


「なにかのまちがいですよね。

 だって、あなたの顔も名前も知りませんし」


「でもあなたがハンドルネーム『XXX』で、

 私の目に大量の長文を見せつけたのには変わりないです!」


「はいぃ!?」


「私、毎日カクヨムに来ているんです。

 で、お気に入りの小説をいつも読んでるんです。

 

 なのに、あなたの作品がランキングに……」


「え、それで僕のを読んで……文字ハラだと?」


「どう考えてもそうじゃないですか!」


「いや、あなたが勝手に飛び込んできたんでしょう。

 こっちはいい迷惑ですよ」


「なんで加害者のあなたが私を責めるんですか!

 責めハラですか!! ひどい!」


「いやそんな……」


女はふたたび泣き出してしまった。

それを見た警察が銃の安全バーを外しながらやってくる。


「貴様、いったい彼女に何をした!」


「なにって……。通報までの経緯を聞いただけですよ」


「こんなに泣いてるじゃないか!」


「でも、話を聞いたら彼女は自分で僕の小説を読み

 その文字量に勝手に文字ハラだと騒いでるんですよ。

 こんなの当たり屋と同じですよ」


「いやそれはお前が悪い」


「え!?」


第三者である警察ならば公平なジャッジをしてくれるとふんでいた。

それは大きな誤算だった。


「お前は絵本の中にグロい描写や、エッチな表現をいれるのか?」


「はあ? なんの話ですか。そんなの入れませんよ。

 読み手の年齢層にあわせて取捨選択するでしょうに」


「それと同じだ。文字が多いなら事前に『この小説は4万字あります』と

 最初に注意文のひとつでもいれるべきだ。そうだろう」


「そんな……。でもカクヨムは小説投稿サイトですよ?

 文字ハラを気にしてそんな注意文なんて……」


「バカやろう!! それがハラスメントを助長するんだぁ!!」


「ひえええ!!」


「この世界からあらゆる不快を無くし、

 すべてのハラスメント被害者を救済する!

 それが本官が警察になった理由だ!!」


「終わりなき戦いになりそう……」


「とにかく貴様は絶対に許さない!

 彼女を泣かせ、ハラスメント加害者の自覚すらない貴様は!!」


すると涙が収まった女はこちらを指さした。


「そんな人類の敵! はやく牢屋にぶちこんで!!」


「もちろんですとも!!」


「いやいやいや!! 納得いかないって!

 そ、そうだ! 裁判! 裁判をしましょう!!」


いわれない罪で逮捕されて人生狂わされて貯まるか。

警察も女も冷静な判断ができないのであれば、裁判官に頼るしかない。


法のもとに判決を下す裁判官。

これ以上に平等かつ公平な基準は他にないだろう。


裁判官ならーー。



「被告を有罪とする」




「なんでだよ!!」


裁判官の判断に弁護士よりも自分が反論してしまった。


「罪状は先ほど申し上げたとおりだ。

 全文は動画サイトにもアップしているから

 後でゆっくり見られますぞ」


「いやどう考えてもおかしいでしょ!

 僕はただ小説を書いてただけですよ!?

 それを勝手に読んで、それで文字ハラだなんて……」


「でも長文を見せたのは事実でしょう?」


「まあ……」


「じゃあ有罪」


「じゃあ!?」


「いいですか。あなたがどう思おうと、

 相手が嫌がることをあなたはしてしまった。

 それはまぎれもない事実なんです」


「……」


「人の罪は悪意によってもたらされるだけではない。

 中には偶然だったり、悪気なく罪を犯してしまうケースもあります」


「……」


「なので、あなたは小説を書いて

 勝手に読まれた罪を牢屋の中できちんと反省するのです」


「最後だけ納得いかない!!」


いくら反論しようとも判決はくつがえらない。

もう弁護のしようもないのを悟ったのかゲームを始めている。


「もう罪は決まりました。

 あとは被害者があなたの罪を立憲すれば

 晴れてあなたは犯罪者として牢屋に入れます」


「もう確定事項じゃないですか」


「こっちも忙しいんでね」


裁判官は文字ハラ被害者を呼び出した。


「あなたの訴えは認められました。

 この男はやっぱり有罪です。

 本気だせば死刑にもできます」


「やった! やっぱり私は間違ってなかった!」


「では、最後にこの男の罪をあなたが証明するため

 この書類をよく読んでから同意とサインをお願いします」


そういって裁判官は最後の書類を渡した。


女はそこに細かい文字で大量にかかれている

罪状や経緯や甲だの乙だの頭がこんがらがる文字の濁流に飲み込まれた。


そして、サインをするまでもなく叫んだ。



「きゃああーー!! 文字ハラスメントよ!!」



裁判官と僕は同室で投獄されることとなった。

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