劉備が令和の君に語る
亜咲加奈
どーもー、劉備です! よろしく!
はい、こんにちは。
君かい? おれに話を聞きたいっていうのは。
ええと、おれが
諸葛亮に言われたからだよ。
おれは自分の土地を持ってなかったからね。
そしたらさ、蜀を治めている
もう少し詳しく聞きたいって?
じゃあ、おれの事情から話そうか。
君が暮らしているのは令和の時代だろ。
だから君が聞きやすいように話すよ。
ほんとはおれたちが生きていた頃はあざなで呼ぶのが礼儀なんだ。
あざなっていうのは、おとなになってからつける名前。
でも、あざななんて、いちいち覚えていられないだろ。
だから「劉備」とか「諸葛亮」みたいに呼ぶことにするぜ。
諸葛亮には三度会いに行って、三度目にようやく会えたんだ。
おれは相談したわけ。これからどうすればいいですかって。
諸葛亮はおれに言った。
「蜀は豊かな土地で、漢という国が始まった場所でもあります。しかも、あなたは漢の
蜀の役人の中には、「蜀はこのままじゃいかん。劉備に頼ろう」って思っていた連中もいたんだよ。
劉璋もそれを聞いて、おれを蜀に呼んだ。
ちょうど劉璋は困ってたんだ。
すぐそばに
しかも、曹操も攻めてこようとしている。
おれが呼ばれたのは、そんな時だったのさ。
蜀に行ったけど、みんなから歓迎されたわけじゃない。
おれを蜀に入れるなと、劉璋を止めた役人たちもいた。
それでも劉璋はおれを蜀に迎えた。
おれは張魯と戦った。
そこへ、孫権から「助けてくれ」と言われた。孫権は曹操と戦っていたのさ。
おれは劉璋に兵を貸してくれと頼んだ。でも、頼んだ数の半分しか貸してくれなかった。
しかもおれを蜀に迎えようとしていた役人が、おれに「行くな」という手紙を書いていたことがばれて、殺された。
そこからおれと劉璋は、敵同士になったんだ。
おれは蜀の都、成都へ攻め込んだ。
降参するやつもいたけど、最後まで蜀を守ろうとした人もいた。
蜀を劉璋から奪ったのじゃないかって?
今さらいいわけなんぞしないよ。
やったのはおれだからな。
蜀を守ろうとして死んでいった人たちのことは、忘れたことなんかないぜ。
おれには仲間がいる。
みんな、おれについてきてくれる。
見捨てるわけにはいかないよ。
今までも、そして、これからも。
そうそう、思い出した。
子供の頃、家のそばに、高い桑の木があったんだ。
遠くから眺めると、まるで、帝が乗る車みたいに見えるんだ。
だからおれは、親戚の子たちに言った。
「おれは必ずこんな車に乗るんだ」とね。
もちろんおじさんからすごく怒られたけどさ。
そしたらほんとにそうなっちゃったわけ。
おれ、曹操が死んでその息子が魏の皇帝になったあと、蜀の皇帝になるんだよね。
おれの話はこれでおしまい。
難しかったって?
あはは、ごめんごめん。
参考資料
陳寿 裴松之 注 今鷹真・井波律子・小南一郎 訳
「正史 三国志 」(ちくま学芸文庫)
劉備が令和の君に語る 亜咲加奈 @zhulushu0318
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