【完結】デューク・ルブランが異世界で旅を始める…無口でクールなスナイパーが、コーヒーを淹れながらキャンプする姿に心奪われる! アクションとスローライフが絶妙に融合した物語、ぜひ手に取ってみてください!

湊 マチ

第1話 異世界への召喚

デューク・ルブランは、パリの夜、静かなカフェのテラスでコーヒーを啜っていた。街灯の淡い光が石畳の道に影を落とし、遠くのエッフェル塔が輝いていた。夜風がそよそよと吹き、周囲の喧騒が次第に静まる中、デュークは穏やかなひと時を楽しんでいた。


テラスには数人の客が残っていたが、誰も彼の存在に特に注意を払うことはなかった。デュークは一口コーヒーを飲み、目を閉じてその香りと味を堪能した。その瞬間、彼の心には一瞬の安らぎが訪れた。


空を見上げると、満月が青白い光を放っていた。月の光は街並みを柔らかく照らし出し、その光景にデュークは一瞬目を奪われた。


「今夜は満月か…」


彼は心の中で呟き、再びコーヒーに目を戻した。その時、不意に強烈な光が彼を包んだ。デュークは驚いて目を閉じたが、その光は瞼を貫くほどの強さだった。周囲の音が消え、全てが白い光に包まれた。


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どれほどの時間が経ったのか、デュークはふと意識を取り戻した。目を開けると、周囲は見慣れない森の中だった。高い木々が空を覆い、その葉が風に揺れてざわざわと音を立てていた。陽光が木漏れ日となって地面に差し込み、幻想的な光景を作り出していた。


「ここは…どこだ?」


デュークは冷静に状況を把握しようとした。手元にはいつものスナイパーライフルがあり、身体の異常も感じない。しかし、この場所がどこなのか、全く見当がつかなかった。地面には見たこともない植物が生い茂り、鳥のさえずりもどこか異質だった。


その時、葉のざわめきと共に、一人の老人が現れた。長い白髪と緑のローブを纏ったその姿は、まるで伝説の中から現れたかのようだった。老人の目は優しくも知恵に満ちており、その表情には何か深い秘密を抱えているようだった。


「ようこそ、異世界へ。私はエルデリック、この地の賢者だ。」


デュークは無言で老人を見つめた。老人は微笑みながら続けた。


「あなたはこの世界に召喚されたのです。我々にはあなたの力が必要だ。」


デュークは眉をひそめた。異世界、召喚、力が必要…どれも現実離れした言葉だったが、彼は常に冷静でいなければならないことを心得ていた。彼は瞬時に状況を受け入れ、現実的な対応を取ることを決意した。


「わかった。ここでも俺のスキルが必要とされるなら、仕事を受けよう。」


エルデリックは頷き、デュークに地図といくつかの道具を手渡した。地図には広大な異世界の風景が描かれており、彼の旅の道筋が示されていた。


「この世界には多くの危険が潜んでいます。しかし、あなたならきっと乗り越えられるでしょう。まずはエルフリックという村を目指してください。そこであなたの力を必要とする者たちが待っています。」


デュークは地図を受け取り、無言で頷いた。彼は老人に背を向け、静かに森の中を進み始めた。周囲の風景は次第に変わり、様々な未知の植物や動物が姿を見せた。異世界の空気は清々しく、しかしどこか緊張感を伴うものだった。


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デュークが歩みを進める中、エルデリックが再び声をかけた。


「待ちなさい。あなたにはこの愛馬が必要でしょう。」


エルデリックが呼びかけると、森の奥から美しい馬が姿を現した。馬は光沢のある黒い毛並みと力強い筋肉を持ち、その瞳には知性が宿っていた。


「この馬の名はシャドウフレア。彼は賢く、あなたの旅を助けるでしょう。」


デュークはシャドウフレアの瞳を見つめ、その落ち着いた佇まいに一瞬で信頼を感じた。彼は無言で馬のたてがみを撫で、シャドウフレアは静かに頷いた。


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夜が明け、デュークは一日の旅の終わりに焚き火を囲んで座っていた。焚き火の暖かな光が彼の顔を照らし、コーヒーの香りが漂っていた。彼は静かにコーヒーを淹れ、その香りと味を楽しみながら、心を落ち着かせた。


「ここでも、コーヒーは変わらない…」


彼はそう心の中で呟きながら、異世界での新たな生活に思いを馳せていた。焚き火の炎が揺れ、夜空には無数の星が輝いていた。デュークはその星空を見上げながら、次の一歩を決意していた。

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