第3話・貞操観念が強く逆転した真世界の風俗では……男は獲物

 次に馬波とセルカが向かったのは、アダルトな物品を販売している店舗だった。

 店の前でセルカが言った。


「店の中がどうなっているのか、知りたかったら馬波が一人で入って見てくればいい……わたしは外で待っているから」


 店に入った馬波の目に最初に飛び込んできたのは、半裸男の等身パネルだった。

 パンツ一枚の男が微笑んでいるパネルの前を通過して、アダルトなコミックコーナーに足を踏み入れた馬波は、軽い目眩めまいを覚えた。

 そこには、裸の男性が表紙に描かれたコミックや雑誌だらけだった。

(男、男、男の裸ばかり?)


 映像モノを置いてあるエリアも、コミックコーナーと同様に、裸の男のパッケージ商品が並んでいた。

 男が縄で縛られたSМモノ、男同士でキスをしている同性モノ、その他……馬波の世界では女性がパッケージを飾っているモノがすべて、男性になっていた。

 そして、ついにアダルトなグッズのエリアに、足を踏み入れた馬波は硬直した。

「うおっ⁉」


 女性目線のグッズの数々、女性が男性相手に使用するアダルトグッズなどが陳列されていた。

 極めつけだったのが、女性専用の強精剤とケースの中に入った男性型の等身ラブドールだった。

(男型の精密なラブドール? この世界の女が性欲を満たすために購入するのか?)

 馬波の世界にも男性型のラブドールは存在したが、それほど種類は多くなかった。

 店内にあった、男性型ラブドールのカタログを見てみると、さまざまな男性タイプのラブドールの写真があった。


 他のコーナーでは、女性が購入して楽しむ、男性下着とか男装コスプレ服なども置いてあった。

 男女の貞操観念逆転世界で想像もしていなかった、アダルトなグッズの数々に思わず馬波の口から悲鳴が漏れる。

「うわぁぁ!」

 店内にいた女性客の性欲に満ちた視線が一斉に、馬波に集中して……たまらずに馬波 遊馬は貞操観念が逆転した世界のアダルトショップから逃げ出した。


  ◇◇◇◇◇◇


 うなだれて、セルカの後ろから歩いてくる馬波に、立ち止まったセルカが叱咤する。

「えーい、なに暗い顔をしている。こっちまで辛気臭くなる! シャキとしろ! こういう時は風呂で汗を流すのが一番の気分転換だな……大衆の混浴風呂だと、あの女性警察官と遭遇するかも知らないから、ここは城にある王室混浴風呂だな……ついてこい」


 数歩、歩き出してから立ち止まったセルカが振り向いて言った。

「言い忘れていた……元自警団員で、今は女性専用の風俗店オーナーをしている、青っぽい肌の横尖り耳の『オトコスキー』という名前のエルフ女には、槍田井やりたい同様に気をつけろ……お客の相手をさせられて精気を吸いとられて、乾きモノにされるぞ」


  ◇◇◇◇◇◇


 王室混浴風呂は、ローマ風呂と日本の露天風呂を合わせたような、様式の入浴施設だった。

 庶民も浴室は城の者たちとは、別々だが料金を払えば入浴できる。


 全裸になったセルカが、腰に手をあてて、城内の者たちだけが入れる露天混浴風呂を見回しながら言った。

「やっぱり、ここの風呂が一番だな……城で従事する女たちだから、女王さまから城内では、どんなに欲情しても男には手を出さないように釘を刺されている」

 露天風呂のお湯の中には女性入浴者が八割以上で、男性は隅の方で集まっていた。


 裸の馬波がヤラ・セルカに訊ねる。

「やっぱり、この世界の男の貞操観念は固いから、女性が入浴していても目も合わせないのか?」

「当然だ、馬波もそうだろう……今は女性に対する性欲よりも、非童貞でも結婚するまでは、清らかな純潔でいたい気持ちが強いだろう」

 セルカの言う通り、裸の女性を間近で見ていても、性欲は沸かなかった。


 馬波はお湯の中で、顔の鼻から上を出して入浴している変わった女性集団を発見してセルカに質問する。

「あの、女たちはなんなんだ? 鼻から上をお湯から出して……まるでワニだ」

「そうだ、彼女たちはワニだ。あぁして鼻から上をお湯から出して、混浴している男たちを物色している……眺めて、お湯の中の下半身を疼かせて、発情しているだけだから害は無い」


 何事もなく、入浴を済ませた馬波は脱衣場で鎧を着衣しているセルカと離れて、中庭にある大理石の長椅子のような場所に座って、腰にタオルを巻いた姿で涼んでいた。


 そんな馬波に、話しかけてきました人物がいた。

「こんにちは、あなたが別の世界から来た……非童貞の○○チン男?」

 腰にバスタオルを巻いた、青っぽい肌で横尖り耳のエルフが近づいてきた。

 青っぽい肌のエルフが、馬波の耳元で囁く。

「ねぇ、あたしといいことしない……別の世界から来て退屈でしょう」

 色っぽいエルフが、囁き声で言った。

「あたしの名前は『オトコスキー』……あなたみたいな、○○チンの非童貞男を探していた。あたしがオーナーをしている女性専用の風俗店で、汁男にして女性客の相手をさせるために」


 どこからか、投網が馬波に向って投げられ。馬波は絡め取られた網の外から槍田井の声で。

「捕獲成功! 逮捕完了!」の声が聞こえてきた──そして、数週間後。


  ◇◇◇◇◇◇


「も、もうやめてくれ! オレが悪かった! 二度と性器末覇者になろうとは言わないから! ひーっ」

「もう、遅い……あなたは一生、女のために汁を出し続ける汁男になるのよ……はぁはぁはぁ」


 ダーク・エルフのオトコスキーが経営をしている女性専用の風俗店で、強制的に汁男にされた馬波は。

 今日も木製のきしむベットの上で、槍田井の相手をさせられていた。

 常連客の槍田井やりたいが固定指名して、朝から晩まで、昼も夜も関係なく軋むベットの上で搾り取られる。

 朝になって外でスズメの鳴き声が、数日間続いて聞こえていた。


 馬波が汁男として、搾り取られている姿を、腕組みをしたダーク・エルフのオトコスキーが楽しげな表情で眺めながら、馬波に言った。

「それが、あなたの望んだ姿だったんでしょう……まだまだ、他の○○マンの女たちが順番待ちで隣の部屋で待機しているんだから……頑張ってね」


 さらに、オトコスキーは、色っぽく指しゃぶりをしながら馬波に言った。

「〝精子検査薬〟で調べてみたら、あなたの精子はこの世界に来たせいで。まったく動いていない……性欲が強くて妊娠しない男は、この世界の女たちには最高の男よ……がんばって汁男になってね」


 さらにさらに、 オトコスキーが、固くなった馬波の乳首を見て言った。

「聞くところに寄ると、あなたがいた世界では。女性が自分の胸で、男性のある部分を挟み込んで男性を喜ばせる性的な行為があるそうね……その逆バージョンを、馬波の乳首……男の乳首を使ってやってみましょう……上手くいけば、この店の人気プレイになるわ……うふふふっ」

 

 オトコスキーの無精子発言と、男の乳首使用プレイの提案に、馬波の口から悲鳴がもれる。

「うわぁぁぁぁぁ!」

 結婚するまで純潔を守る貞操観念を持ちながら、女の相手をさせられている。馬波 遊馬が、ヤラ・セルカに救出されたのは、それから数週間後だった。


  ~おわり~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

真・貞操観念逆転世界~男は結婚するまで純潔を守り通します~ 楠本恵士 @67853-_-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ