エピローグ:量子の調べ

 それから10年後。


 美咲と玲子は、新設された「量子・AI共生研究所」の屋上に立っていた。眼下には、少しずつ変化を遂げた東京の街並みが広がっている。


「10年前、あんな大事件があったなんて、今では信じられないわね」


 玲子が言った。

 美咲は微笑んだ。


「でも、あの時の選択は正しかったと思う。私たちは、ゆっくりだけど着実に進歩している」


 研究所では、人間とAIが協力して新たな発見を重ねていた。量子技術は医療や環境問題の解決に大きく貢献し、AIは人類の良きパートナーとして共に歩んでいた。


「それにしても」


 玲子がしみじみと言った。


「あの時、あなたがいなかったら、こんな未来は訪れなかったかもしれないわね」


 美咲は空を見上げた。そこには、かすかに量子の波動が見える気がした。新たな可能性に満ちた未来が、彼女たちを待っていた。


「これからも、一緒に歩んでいきましょう」


 美咲は玲子の手を取った。


「人類と、AIと、そして未知なる宇宙と」


 二人の頭上で、星々が静かに瞬いていた。それは、無限の可能性を秘めた未来への道標のようだった。


(了)


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【SF短編小説】「量子の死角」 藍埜佑(あいのたすく) @shirosagi_kurousagi

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