閉幕
物語の後に
――さま、お客様。
お目覚めにございますか、ご気分如何にございましょう。
いえいえ、今宵はふた月ほどの時間を跳ばれたのですから、お疲れになるのも無理ないことでございます。
彼らの語りも遠回りで小難しく過激でございましたし、尚のことお疲れでしょう。ですがそれは彼らの若さと必死さ故にございます。彼らの言葉がお客様の心に残ったならば、彼らも本望にございましょう。
ハァ。幸福、でございますか?
何ともおかしな、いえ、愚かなことをおっしゃいます。
お忘れでございますか。
お客様がなさったのは『地獄巡り』、お客様が覗かれたのは紛れもない地獄、彼らはまさしく地獄の住人でございます。
あの世界は『怪獣』という、永遠の呪いを受けた世界にございます。
あの地獄の人間どもは、命も希望も知識も打ち砕かれ、いずれ訪れる滅びを先延ばしにしようともがく愚かな命にございます。
それは怪獣どもとて同じこと。人の欲によって生み出されながらその存在意義や理由を知る者はもはやなく、彼ら自身も己の存在理由を見いだせず、ただ結果的に人の断罪者として機能し続ける惨めな命でございます。
あの世界の皆が悲劇の中に在るのでございます、彼らの最後は惨めな結末。一見お客様の世界と瓜二つでございますが、彼らの世界が永遠に求め、そして決して到達できぬ理想世界、それがお客様の世界にございます。もしそれを忘れれば、お客様もあの地獄に引きずり込まれることになりましょうぞ。
……少し恐ろしい話をしてしまいましたなぁ。きっと夜風にでも当たればご気分も優れるでしょうよ。
ササ、そろそろ幕引きにございます。夜明けも近うございますが、足元お気をつけてお帰り下さいませ。
それでは、またのお越しをお待ちしております。
そろそろ秋も近うございますね。
最後の希望 ガメラ 完
_________
本作はこれにて完結となります。
思った以上の長編となってしまいましたが、この作品が皆様の心になにか残る部分があれば幸いです。
宜しければ評価・コメント等よろしくお願いいたします。
ご拝読いただきありがとうございました。
最後の希望 ガメラ 木辺太文 @kibehirofumi
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