化粧、メガネ、AI。素顔を隠すものがなくなったとき、宇宙にも手が届く

 かる~い感じに書かれた「純愛だっていいじゃないか。OL だもの」のキャッチのままに読めました。

 けれど、その根底には、しっかりと作者の意図や計算があるようにも思えます。

 ストーレトに恋をして、その恋がかなう。読みにくいところ、ドロドロした嫌なところのない物語。だのに一方で、なにかもどかしくも不透明なものがはじめからあって、それが少しずつ晴れていく物語。
 そんなふうに感じました。

 「見える」ことに読者の意識が向くように、オフィスでも「見ている」サナミが描写され、そのことが人の内部を隠すコスメ、メガネ、AIというキーワードで周りを固められていく。
 「見る」ことは誤解も生じさせて、恋の邪魔者を目ざとく見つけさせる。
 見えないものを見ようとする彼は、AIのように100%人工のプラネタリウムに、自分の心の真実を見にいく。

 メガネは小説では阻害したり見えなくさせたりするアイテムとして登場することが多いけれど、サナミの見えていなかったサナミの価値は、職場の「目」をもつ人たちにはしっかり見えていました。
 むしろサナミが自分のことをあえて悪く、低く評価しているところが、現代人みんなにあるかもしれない罠で、トゲなのかも。

 でも、私のようにうがった読み手でなくても、ちゃんと恋に共感してたのしく読めるお話だと、思います!