とても読みやすくて、また処刑人の舞台からは先が気になって一気に読み終えました。とても充実した、そしてあとに気持ちを残す読後感です。
以下、ぐだぐだ勝手に、思ったことをのべてしまいます。
タケヤ少年の、傷ついたことはわかるけれど、他者からはその複雑な仕組みのわからない感じ、手が届きそうで届かない、心の核の形がきっと作品の魅力なんだろうなと思います。
タケヤ少年は「仮面」を、自分の心や他者の心をときあかすキーワード、謎への入口にしているのですね。
舞台演劇をストレートに受け取って(参加者である以上、とても自然なことだけれど)仮面は真実ではない、と思っている。
大人から見ると、仮面はかぶりなおしていいし、外したあともまた仮面があらわれるような気がします。
それを伝えたくなってしまう気が、読み終わった今、しています。
彼はまだ自分の人生を一人きりの力で歩く手前にいる。だから、自分がいつか大人の恋人とどういうことをするか、想像ができない。もうその入り口に踏み込みかけているというのに。
その危うさを強く感じます。
それでも、読者は、作品の中でずっと同じ時のままでいるタケヤ少年を見ることができますね。
小説っていいですね。