47 フォンレスト攻防戦後始末
神獣状態を解除すると、さっとセイナに抱え上げられた。
いや、ここ、ティータの背中の上なんだけどな。
途中で様子を見て機を伺っていたので、会話も聞いている。
隠れて好き勝手やっていたみたいだ。
「まぁ、それはともかく。セイナ。ティータの荷物を没収してくれ」
「うん。どうするの?」
「あの薬は残っているかな?」
セイナに頼み、ミラと一緒に気絶しているティータから荷物を没収し、薬を漁る。
「たぶん、これかな?」
ポポリ草とやらを使ったあの薬が残っていた。
「ふうん、これでスキルを奪うのか?」
なんだかな。
これは運命の悪戯か?
チートスキルを回収するっていう俺たちにとって、なにより必要な薬じゃないか。
そして、ちょっと前に手に入れたスキルも、まるでこの時のために手に入れたみたいなか形になった。
もう本当に、これぞ運命、だ。
俺は、残っていた薬を、少しだけ飲む。
「ふむ、理解した」
そして、スキルを使う。
使うスキルは、【薬毒自在】という。
【飛行形態】よりも前に【X%】がいっぱいになった時、ティータがポポリ草を手に入れたぐらいのタイミングで手に入れたスキルは【薬生成】というスキルだった。
それが前から持っていた【毒嘴】と融合して、【薬毒自在】というスキルになった。
不死鳥で戦っていた時に魔物に向けて降らせた、【神薬魔毒雨】の元のスキルがこれというわけだ。
そのスキルを使って、ティータの作ったスキル奪取薬を再現する。
「セイナ、これ飲んで」
「うん」
宙に浮いている薬液の半分をセイナに向けると、彼女は躊躇せずにそれを飲んだ。
そして残りを汚物まみれになっているティータに飲ませる。
薬効が二人の体内を巡り、共鳴し、一時的には二人は同一人物扱いとなる。
その間に、ティータの中にあったスキル【夢中の救世主】をセイナに移す。
「どうだ?」
「うん、私の中に入った」
「よし、成功だな」
お嬢様、エメルネアに戻すということも考えたが、今のままだと彼女の体を害するだけのスキルだ。
気が進まない。
かといってこの街に残る誰かに、というのもなんだかなと思う。
結局、この街の連中には扱いきれなかったスキルということになる。
魔物の脅威は一時的にさったかもしれないが、今度のことを考えれば必要なスキルだ。
だけど……神ならぬ身で裁きのようなことは考えたくないけれど、この街にこのスキルは必要ない。
そう思うことにした。
とはいえ、それを説明する気にもなれない。
「セイナ、ミラ、このまま逃げるぞ」
「え?」
「そうですね」
ミラは理解してくれた。
スキルを返せって言われる前に、逃げるのだ。
「あっ、そうか」
一拍遅れてセイナも理解すると、ぐるりと領主の方を向いた。
「大蛇の報酬は街の復興にお使いください」
勝手にそんなことを言う。
だけど、まぁ、マジックポーチもない俺たちには、あんな大金を持ち歩くこともできないか。
「それでは!」
「じゃあな」
「失礼します」
三人で勝手にさよならを告げると、俺が破った窓から外に飛び出す。
そうしてそのままフォンレストの街を出た。
「ダンジョンマスターTKT132b599より申請」
街を出たところで、俺はセイナに向けてその言葉を吐く。
「ダンジョンマスター権限により、以下のスキルを還元する。スキル【夢中の救世主】」
その瞬間、セイナの中にあった【夢中の救世主】が消滅し、ポイントに変わった。
得られたポイント数は15。
前の【魔人】が10だったので、ちょっと多い。
とはいえ、目標数の10000ポイントはまだはるか先だ。
ちなみに、このダンジョンマスター権限が適用されるのは、俺かセイナだけだ。
どちらもうちのダンジョンで誕生したユニット扱いだから、俺のダンジョンマスター権限が通用するという道理だ。
ちなみのちなみ。
「ダンジョンマスター権限〜〜」とか言っている時は日本語を使っているので、ミラには意味がわかっていない。
セイナはわかっているはずだが、なにか思うところはないのだろうか?
「ふう、まだまだ先は長いな」
「でも、そんなに大変でもなかったよ」
「そりゃ、使い手が悪かったからだろ」
戦いの素人だった貴族の令嬢でも、邪霊とずっと戦えていたし、オークから逃げるしかない薬師のティータでも、ミラや騎士隊長と戦えていた。
十分にチートなスキルだ。
ガチの使い手が手にしていたら、もっと大変なことになっていた。
あるいは、もっと活躍して英雄と呼ばれていたに違いない。
「まだまだ修行が足りないです」
ティータとの戦いを思い出しているのか、ミラがそんなことを言う。
「あっ、タク君、私決めたよ」
そんなミラの気分を無視して、セイナがなにかを言い出した。
「なんだよ?」
「私たちも、スキルを駆使すればいろんなことができるんだよね?」
「そうだな」
「なら、私はね、タク君を人間に戻すスキルを探すよ」
「なに?」
「その方が、タク君もいいよね⁉︎」
なるほど。
人間の姿に戻るか。
なにげにペンギン姿に慣れてしまって、その考え方はなかった。
「まぁ、戻れたらその方がいいけど。となると自分で歩かないといけなくなるのか」
セイナに抱えられて歩くのも、それはそれで幸せ成分があったりしたんだが。
「タク君を抱えられなくなる!」
その事実に気づいて、セイナが絶句している。
「でも、このままだとタク君と……」
「なんだよ?」
「なんでもない!」
頭を抱えたそうな顔をしていたセイナは、だけど俺を手放さず、前を見た。
「絶対、タク君には人間に戻ってもらいます!」
「なんなんだか」
「はぁ、なんだか熱いです。今度は涼しい場所に行きたいですね」
「次はダンジョンだよ!」
「ああ、そうだ、マジックポーチ」
荷物がたくさん入るアイテムは欲しいよな。
「ダンジョンで涼むんですか? まぁいいですけど」
「じゃあそれで!」
「はい、向かいましょう」
そうして、俺たちの旅は続く。
これからも。
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ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
とりあえず、ここまでで更新を停止します。
好評のようであれば続きますので、評価や応援のほど、よろしくお願いします。
幼馴染と始める異世界転生! ぎあまん @gearman
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