【倉木さとし】回答5+質問6 リメイクするのに参考になりそうな作品。また、ディズニーについて。
【自己紹介】
倉木さとし
普通自動車免許は高校生のときにとりました。一発免停をくらうこともありましたが、いまはゴールド免許です。防火管理者の資格も持っていますが、修了証が財布になければ捨てたかもしれない。僕の財布の中は、キャッシュカードが割れて使えなくなる魔境だったりする。
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倉木なんてもんは、原作漫画の完全版を本棚に、文庫版はトイレに置いていて、アニメのDVDBOXを持っていて、ドラマCDも揃えていて、コルトパイソン357マグナムのガスガンを所有している程度の「シティーハンター」ファンです。
Netflixの「シティーハンター」も配信されてすぐに視聴しました。個人的に満足のいく出来でした。主人公の冴羽を演じられた鈴木亮平の他作品にも興味が出るほどに、ちゃんと冴羽が実写化されていて感動しましたね。とくに、コルトパイソン357マグナムの扱い方が、アニメや漫画で見たことがあるぞ、と原作ファンだからこそ伝わってくるこだわりがありました。ぜひとも続編がみたい!
おさえるべきストーリーラインを原作どおりになぞりつつ、古い原作漫画を現代に蘇らせるにあたって、細かい部分を令和的に改変した点も物創りの観点からも参考になりました。
コンプライアンス的にも、Netflixで下ネタはここまでは許されるのかというのが、よくわかりました。原作にあったような、座った状態で自らのもっこりを顎置きにしたり、バズーカでも割れない防弾ガラスをもっこりで破壊するみたいなものは、さすがに映像化は無理だったようです。そもそも、アニメ版でもカットされていたか。
シティーハンターはアニメ化にあたって、当時の平成初期の時代においても「もっこり」をどうするかが一つの問題点だったそうです。冴羽を声で演じられたを神谷明の実力でいやらしくなくなってことなきを得たのですが、さすがに実写版では生々しさがあるためアニメに比べてずいぶんと抑えられていたように思います。でも、ギリギリまで攻めてくれた感はあるので、やはり鈴木亮平はすごいですね。というか、おちゃらけて女好きな一面がなければ、冴羽ではないので、絶対に必要な要素なのです。そういった欠点がなければ、冴羽というキャラクターはカッコよすぎる。いや、ギャップがあるから更にかっこよく見えるのか。
昨今の人気になる男性キャラは、いかにムラムラやセクハラをおさえるかが重要視されている感があります。その結果、表でやれやれいうタイプが増えたように思います。冴羽はスケベな主人公が比較的多かった時代背景もあり、表でムラムラさせながら、裏ではヒロイン一筋な一面がある。深く知れば知るほどカッコいいしかないのですが、忙しい世代にはそこまで見てもらえず刺さらないのかもしれないなぁ。曲のイントロも必要なければ、サビだけきいて歌の判断をする、タイパを重視しすぎて逆に大事なものを無駄にしていなければいいのにと、倉木のようなオッサンは若者が心配になります。
そんな冴羽を父親ポジションに置いた作品が「シティーハンター」のパラレルワールドとなる続編の「エンジェル・ハート」です。倉木の中では、トップ3に入る漫画です。「シティーハンター」よりも好きですね。ヒロインの香ではなく、冴羽に惚れて読んでいたから、パラレルワールドと言わざるおえなかったあの要素も簡単に受け入れられたのだと思います。
語りだしたら止まらなくなりそうなので、質問に答えます。
『倉木さんも30代後半です。そろそろ40代を意識しだす頃かと思いますが、倉木さんは40歳になった時、新作を書いていたいですか? それとも過去の作品の続編やリメイクに挑戦してみたいですか?』
郷倉くんの言葉を借りるならば、20代の作品に40代になって帰ってきた作品が「エンジェル・ハート」です。個人的には連載時、北条司がまだ40代だったことに驚きました。
「シティーハンター」の面白いフォーマットを活かしつつ「家族愛」をテーマにリメイクしたものが「エンジェル・ハート」のはず。
そもそも「シティーハンター」を復活させるだけでも面白いのに、40代が直面する「家族愛」というテーマを上乗せして、さらには世界観も時代に合わせてつくられたということになる。最強の作品になるのは当然やんか。カッコいいだけでなく泣けるエピソードも多いのも、構造的に考えてもうなずけるわけだ。
色々と言語化していくうちに、過去作の続編やリメイクをする際の方法論みたいなものがみえてきたかもしれない。
つまり、若い頃の自分が面白いと思って、当時の自分なりに苦労して書いたものに、あらたなテーマをトッピングすれば、過去作の面白い要素そのままに濃厚な作品に進化する。さらには、色々と設定を整理しつつ、それでも重要なキャラの繋がりは過去作と同じようにしておけば、パラレルワールドとしても成り立つのだろう。
さらにさらに思うのは、かつての自分が面白いと思って書いたものというのは、いまの自分では書けなくなっている要素がある場合も多い。十代の頃の作品なんかは、単純に若くて大人キャラを書くのも下手くそだったが、逆にそれがそいつらから見た大人の一面という風に開き直ってしまえばいい。そういう要素は残したほうが面白いものがうまれそうだ。
いまの倉木は、結婚し、子供も育てている。これさえあれば他はいらないといった感じの、若者の無敵感が薄れてしまった。全部捨てて、これだけでいいっていう危うさは過去作に残る要素としてうまく組み合わせしつつ、でも無敵ではないにせよ、家族のおかげで最強になれるという一面をいまならば付け加えられそうだ。過去と今が合わされば、一人で多角的な視点が描けそうという話。
他にも過去作をいじくりまわすメリットとして、執筆までの準備期間を短縮できそうだ。世界観を一からつくるのではなく、新たに増やすことで嘘のない世界として層がぶあつくなりそうではないか。
そもそも、過去作があるというのは、以前に掲載した自己紹介で我々が語ったように何十年もあがいてきたものにだけ許された特権ではないか。
使わないという手はないでしょう。それこそ、過去があるから今があると、失敗や遠回りさえも肯定し続けている倉木ならば、使うべきだ。
というわけで、回答としてはこれからも過去作のリメイクや続編がメインになっていくでしょうね。そもそも、執筆の時間をとれるかどうかも怪しい現状ですが。三幕構成を参考にして、長い過去作を短くまとめるぐらいなら可能かなあ。ちなみに、三幕構成に関する詳しい内容は、またどこかのタイミングで。
最後に。リメイクするにあたって、テーマを追加するというのは作例としては具体的とはいえないので、参考になりそうな二例を挙げようと思う。
一つ目は『THE FIRST SLAM DUNK』。
主人公たちのチーム湘北が、絶対王者と呼ばれる山王をインターハイで激戦の末に打ち破る物語です。試合結果に関して、むちゃくちゃネタバレを書いてますが、原作者の井上雄彦が20代の時に山王戦は描かれました。『THE FIRST SLAM DUNK』が劇場公開された2022年の段階で、井上雄彦は50代です。この長い間、いままでネタバレを回避してきた人たちは、原作を読むことも映画も見る気もなかった人たちばかりのはずだから、これでネタバレ食らったとか言うやつは、被害者ぶりたいだけだと思います。
さて。本映画は、原作者の井上雄彦の名前が脚本と監督にもクレジットがのっており、こちらも20代の頃の作品に戻ってきたといえますね。
二時間という尺に収めるため、試合途中に、宮城リョータの過去を描く形をとっており、Netflixのあらすじでも宮城リョータが主人公のような書かれ方をされています。
ちなみに、宮城リョータは原作では湘北レギュラー五人の中で、もっとも過去が描かれていないキャラでした。そのため、彼の過去に関しては映画未視聴の方へのネタバレを配慮して内容は割愛します。
注目すべきは、この誰も知らない宮城リョータの過去を描くことで、新たなスラムダンクを楽しめる構造となっている。ただでさえ、原作ファンが待ちに待った山王戦を映像化してくれているというだけでもご褒美にも関わらずだ。あのシーンとか、このシーンとか、試合内容を知っていても、やっぱり泣いてしまいましたよ。
感動しながらも、これは作品のリメイクの際に使えるなと思った部分がある。
過去作のストーリーを踏襲しつつ、別の登場人物を主人公にすれば、見え方が変わるだけでなく、おのずと別のテーマもくわわる。
宮城リョータを主人公にしてくわわったテーマはなんなのかは、ネタバレをくらわずに見てもらいたいですね。
二つ目の作品は『Little DJ 小さな恋の物語』。
神木隆之介演じる子供が、当時は不治の病だった病気になり、入院先で出会った色んな人を通じて、死ぬその瞬間まで成長していく物語です。
こちらは、作者にとって過去作のリメイクというのではないと思うのですが、リメイク作品をつくる際に参考になる物語の構造となっています。
前述のとおり、当時は不治の病だったというのが重要で、現在ならば一応は薬がある病気なんです。特効薬がない当時だからこそ、タイトルになっている「リトルDJ」がきいてくる。院内放送のDJをするのが特効薬になると信じて(ある意味では騙して?)、主人公は院内放送をするという流れがあるのです。
過去の時代背景でないと説得力がない物語というのは、存在します。
自分たちが20代の時につくった物語でも、もしかしたら令和版にしたら無理があるものになるかも。そういった場合、リトルDJのように、プロローグとエピローグだけ、時間軸を現代にすればいい。この映画内では、主人公と同年代の入院患者だったヒロインが成長した形で登場します。彼女の成長を通じて、主人公と過ごした時間が、現在においても無関係ではないと作品を受けとったものが感じるようになるのです。
つまり、リメイクの際に一番簡単なやり方は、物語は開き直ってそのまま(コンプラに引っかかる要素の修正は必要かも?)にしつつ、プロローグとエピローグだけ現代視点を加えること。
こうすることで、設定や世界観を現代風にアレンジする必要なく、いまとの親和性をもたせることができるはず。
勘違いないように断っておきますが、リトルDJは別に現代と親和性をもたせるために、プロローグとエピローグだけを現代にしたわけではないと思っています。作品づくりとして、こういうやり方も使えるぞと、勝手に倉木が感じただけです。
最後の最後で、自分とは無関係だと思っていた物語が、現在の自分とも関わりがあるのだというオチは、ずるいほど秀逸です。
せっかくなので「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」という洋画の紹介を最後に。
第二次世界大戦中にイギリスの数学者がヒトラーの最強暗号の解読に挑むことで、数多くの生命を救った英雄物語です。
天才の理解されない孤高な感じなどと見どころは随所にあります。でも、結局は昔を舞台にしてるので、ファンタジー映画をみているように、面白いけれど、自己投影してのめり込む類いのものではないのかなと、視聴を続けていました。いや、ずっと面白いのは間違いないんですよ。ただ感情移入が難しいってだけふぇ。
で、最後のオチでこの映画を見てよかったと心底思いました。
『この天才数学者が、暗号解読に使った巨大な機械こそが、現在のパソコンの基礎となっている』
みたいなナレーションか文章か忘れたけど表示されます。字幕映画でみてたから、字幕だったから文章という印象なのかも。記憶曖昧で申し訳ない。
とにもかくにも配信サイトを利用してパソコンで視聴していた倉木は震えました。
パソコンで映画を視聴している以上、自分と無関係なんてありえない。
物語におけるどんでん返しも面白いけれど、こうやって視聴者も巻き込む形ってずるいよね。呪いの映画とかでも、自分も巻き込まれるかもって思わされたらこわいもんね。
さてさて。郷倉くんへの質問をどうするかって考えずにここまで書き進めてきました。
返信をつくりながら、何度かちらついたものがあるので、そのことについて質問しようかな。
THE FIRST SLAM DUNK。と打ち込む際に、候補として出てきたものがあります。
ザ・ファースト・アベンジャー。
キャプテン・アメリカの一作目の映画のタイトルです。アベンジャーズが頭によぎったから、最後の最後でイミテーション・ゲームを語ったのかも。たしか、イミテーション・ゲームの主人公役は、アベンジャーズのドクター・ストレンジ役と同じだったはず。
倉木は、アベンジャーズエンドゲームまでは、MCUを全てチェックしていました。ですが、エンドゲーム以降は、一番大好きなピータークィルが登場するガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3すら見ていない状態です。レンタルビデオ屋に一番くじを引きにいくだけで、レンタルしにいかないのが原因でもあります1が。
いや、サブスクで見ることもできますね。一応、子供がもう少し大きくなったら、ディズニープラスのサブスクもはじめようかと迷っています。
ちなみに倉木は、ジブリ映画を三十代でようやく全部視聴し終えたぐらいなので、ディズニー作品も見ていないのが多いんですよね。郷倉くんはディズニープラスに入っていると記憶しています。ディズニー作品で、これを知らずに物創りするのはもったいないみたいなものがあれば、教えてほしいですね。ちなみに、ディズニー作品の系統ならば、アベンジャーズや、魔法にかけられてとかまで拡大解釈していいので教えてもらいたい。
サウスパークをみるために、Paramount+のサブスクをはじめようと思っている僕の気持ちが変わるなにかがあるのを期待しています。
月初めの往復書簡集 郷倉四季 @satokura05
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