第4話 TATOO OF A SCORPION
「こっちへ入ってろ、このアマ」
客引きのチャンがひとりの少女を牢獄部屋へ連れて来た。15-16歳くらいだろうか、粗末な破れた麻の合わせは丈が短くて彼女のほっそりとした脚を膝上辺りから露出させている。
チャンは後ろ手に縛った縄を解くと、いきなり合わせを背中から引き下げた。背中一面に彫られたサソリの刺青が怪しく動き出しそうに畝っていた。
ユリナは震えの余り、着ていたデニムのジャケットに顔を伏せた。口中の歯がガチガチ震える。
他にもこの部屋には孤児になったのか、誘拐されて連れて来られた少女達が10人ほど目を伏せている。
「よく見ろ!」
チャンは中央に立って睨みつけながら、少女たちに顔を上げるように命じた。ユリナを含め皆んな一瞥しただけで目を伏せ直す。
「こら、よく見ろってんだ、テメエら。この女は
胸を隠しながら少女はその粗末な着物を肩に掛け直した。涙が数滴頬を伝って肩布を濡らす。
「
そう言うと少女は再び目を伏せた。
「おい、あんた」
分からない言葉で指指されたユリナは頭を上げた。刺青少女の顔は端正で瞳はまだ輝きを失っていなかった。
「
明らかに名前を訊かれたと分かったので、ユリナは答えた。
「私はユリナよ。ユ、リ、ナ」
「何処から来たんだ?身なりもいいじゃないか。あ、ノ、ウェグッ ソ ワッソ?
分からねえか、高句麗の言葉だよ。倭国の女だな、可哀想に。きっとお姫様かなんかだろ、戦でオンマもアッパも討ち死にか?」
シャオミンは溜息をつくと、あたりを見回した。
「お前らに今日からアタイみたいな女郎の仕事を教えてやるからよく聞くんだ。螺鈿の張り巡らされた寝台で綺麗な衣装着て旦那様方の楽しいお相手するんだよ。最初は怖いけど慣れればオトコっていいもんさ、アハハ」
緊張で部屋に沈黙が訪れた。
つづく
「
I AM A GOD 2ー我是上帝,ヤマト王権と大陸を巡る壮大歴史スペクタクル。 山谷灘尾 @yamayanadao1
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