第3話 花田耕平、再起

「どうなされた?」


七百猫しちももねこは夜中に目を覚ました花田耕平はなだこうへいに気づいて布団の横から声をかけた。


「何か呼吸が苦しくなっておられたご様子。ご気分でも優れぬのかと思いましたぞ」


「いや、少し悪い夢を見たようだよ」


「はて、悪夢とは如何な仕儀にございますか?また過去の魔物との戦いが思い出されましたか?」


「いや、そうではない。まだ年端の行かない女の子が、暗闇でこちらを向いて助けて、助けて、と叫んでいるのだよ。髪をポニーテールにして、可愛らしい10歳位の小学生の女の子だ。何者かの黒い手が彼女を捕まえているのだ。こんなに怖い夢を見たのは久しぶりだ」


「はて、何かの予兆でございましょうか? この猫も先ほどひどい寒気がいたしまして、目を覚ましました」


「何か悪いことでも起こってていなければ良いのだがなぁ」


「一度神様研修センターのデータセンターに質問を投げかけられてはどうですか?」


「そうだなぁ、長い間連絡もしていなかったし。センターが最新装備した生成AI に質問を投げかければ何らかの情報が返ってくるかもしれないなぁ」


寝付けない暗闇の中で花田は猫と共に、神社から伸びている山の下り坂をそれとなく見つめて過ごしていた。


翌朝早く、花田は拝殿の奥にあるスクリーンに電源を入れた。神様研修センターのアイコンにタッチすると、センター長が正面を向いて出てきた。


「神様研修センター、センター長に就任した高木務たかぎつとむです。花田さん、いや失礼、神様。お久しぶりです」


最初に花田を神様候補にスカウトした男が研修センターのトップに出世していた。


つづく

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