第47話 服屋さん
「私、お金持ちなんだよねー。いっぱい持ってたと思うんだけれども、荷物が多くてちょっと取り出せないなー?」
持っていたカバンを降ろして、そこに手を入れてゴソゴソと何かを探すふりをする。もちろん、カバンの中にお金なんて入っていない。入っているのは、おばあさんからもらった衣服だけだけれども。こういう時は、ハッタリというものが大事だと先輩に教わったからね。無くてもあるフリをすることで、相手との駆け引きをするのが大事だって。
だから、いかにお金があるフリをして、相手の思いをコントロールするかっていうところが大事なんだ。このまま、カバンをゴソゴソさせて、時間を稼いでやり過ごそう。
「あっれれー? おかしいぞー? カバンの中に大金が入っているんだけどなー?」
うん。我ながら良い芝居ができているはず。
チラリと前衛的な人を見て見ると、先ほどと変わらない顔で私の方を見つめたままだった。そして、その顔もまま、同じ調子で進んでくる。進む足取りは全然変わらないし、お金の話をしても表情は変わらずに、少しにやけている顔のままだ。
もしかして、お金になんて興味は無いのかな?
私の読みが外れてしまったのかな……。
それであれば、違うところに興味があるのか……。
もしかして、私なのかな……。
元女神だっていうことがバレちゃってるの?
「ちょっと待って、今の私は普通の女の子だよ! なんにもできないし。私を誘拐したって、いいことなんて、なんにもないんだから!」
相手に言葉が通じないのか、全然止まらない。この街って、別の言語を使ってたりするの?
なんでなんで……。
「徳の玉さん、まだ終わらないの!?」
――はい、まだまだです。しばらくお待ちください。
……どうしよ、どうしよ。私はなにをされちゃうの?
少年だって、グランちゃん、フィンちゃんだって、どうなっちゃうの。
こうなったのも、全部私の責任だ。
ここで、人生を全うしてしまったら、神界にいる先輩にちゃんと言わないと。
少年たちは、なんにも悪くないんですって。
打つ手が思いつかないよ。ここで私だけ暴れてしまっても、勝ち目なんて無いもん。諦めるしかない……。
前からくる目つきの悪い男は、私の前まで迫ってきていた。私の目の前までくると、私を値踏みするように上から下までくまなく観察を始めた。
後ろからくる男も、私の後ろ姿を、上から下まで至近距離で見つめてきた。
不気味に顔を揺らしながら、右左右左、上から下、下から上。なんだか、スキャンされているみたいな気分だよ……。
私に危害を加えるつもりなら、一思いにやってくれればいいのに……。
もしかすると、私をさらってどこかに売りつけるのかな……。生かさず殺さず。私の労働力が無くなるまで、働かせるのね……。
……あれ?
けど、それであれば、少年も見てもいいはずなんだけれども?
加えて言うならば、グランちゃん、フィンちゃんを見ててもいいのでは?
なんで私だけをずっと見ているんだろう?
女の人をさらうっていう、そんな人たちなのかな……。もしそうだとしたら、さらにたちが悪いよ……。
なにをされるの、私は……。
今まで何もしゃべらなかった私の前にいる男は、ようやっと口を開いた。
「お前、絶望的にダサいな」
後ろの男も、それにつられて話始める。
「他の奴は品があって良いのに、お前はダサいな」
……うん?
なんだろう、今って罵られているの?
「スタイルが悪いわけじゃないんだよね。着てる服が絶望的にダサい」
「そうそう、アウター、インナー、スカー卜、靴。一つ一つの物自体はとっても良いんだけれども、あなたに合っていないし。全てにおいて組み合わせが、ダサい」
これは、精神汚染魔法か、なにかなのかな……?
私の精神を削って、倒そうっていう作戦なのかな……?
もしそうであれば、私の精神力はガリガリ削られています。おばあさんからもらった服はいっぱいあったけれども、今の服装を選んだのは私だし……。
組み合わせをコーディネートしたのは、私です。
いえね、初日は森の中をいっぱい歩いてたからね。二日目も結構歩くかと思って、動きやすいようにとか考えた結果なんだよ。
やっぱり、機能性を重視したくなるじゃない? 一日目は辛かったわけだし……。
「なにを思って、これを着てるのかしら?」
「その感覚がナンセンス!」
「あーあ、選ばれた服がもったいないわ、服が可哀そう!」
「どうなってるの? どんな環境で育ったらそうなっちゃうの?」
これ、止めないと延々と続くのかな……?
ずっと精神力を削られているけれども、これだけネチネチ言われると、なんだか段々イライラしてくるかも。
「あーあ、私たちの街にこんな人がいるかと思うと、寒気がしちゃう」
もう、我慢できない……。
「あのっ! お言葉ですけれども、もっと可愛い服だって持ってるんですよ! あ、言い返しちゃった。
私の言葉に対して、男たちはさらにニヤついた顔をした。
「服がいっぱいある? そんなのがあるなら、見せてみなさい?」
「是非とも見てみたいですよ?」
「いいですよ、見てくださいよ! このカバンの中には、こんなに可愛い服がいっぱいなんですからね!」
カバンをガバッと開いて見せる。中にはある衣服を見た男たちは、キラキラと目を輝かせていた。
「こんなにいいものがあったら、あなたを綺麗にできるわよ!」
「そうそう、私たちのお店に来なさいよ。あなた自体は、素材が良いから化けるわよ!」
「ほえ……?」
「私たちの店に来なさいよ。私たち、これでも服屋さんなのよ!」
(街編へと続く。)
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ここまで、お付き合いありがとうございました。(*_ _)
長々と間延びして書いてしまい、タイトルの回収まで全然いけなかったのです。
申し訳ありません。
プロットの一割も書けてないですけれども。
これにて、一部終了になります。
一度連載を終わりにして、また機会をみて、二部以降を書ければと思います。
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今後の執筆の励みとなります。
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それでは、またお会いできることを楽しみにしております。
以上、米太郎でした。( ˙꒳˙ᐢ )コメッ
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ドジをやらかして神界を追放された女神、異世界で先生になってスローライフを始めます。 米太郎 @tahoshi
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