第四章 黒幕登場

 次の日になり、

「皆さん地区は北の兵舎に避難してくださーい!!」

 アマトとマソラは街の人々に東西南北それぞれにある兵舎への避難を呼び掛けていた。

二人は北の兵舎に所属しているのでこの地区の担当になっている。

 街の人々は

「一体どうしたのでしょ?」

「帝様のめいなのだから兎に角避難しよう」

 と言いながらも続々と避難をしている。


 すると違う場所で呼び掛けをしていたカザトがやって来て

「アマト達もやっていたのか。帝様の護衛の話はどうしたの?」

「それがいきなり帝様の護衛は隊長達がする事になって……僕達は街の避難誘導をする事になったんだ。話している隊長とても深刻そうな顔をしてたよ。やっぱり僕達には力不足だったのかな」

 アマトはガックリと肩を落とす。

「そんな事ないわ。きっと何か事情があるのよ」

 とマソラはアマトの背中を撫でて慰めた。

 カザトがふと

「そういえば前から気になっていたんだけど二人と隊長達って他の隊員と違って仲が良さそうに見えるけど、どんな関係なんだい?」


 マソラは暗い顔になり

「まだカザトには話してなかったわね。もう十年前の事になるのだけど私とアマトのお父様は隊長をお母様が副隊長をやっていたの。だけど事故で二人とも亡くなってしまって……まだ隊員だったヒュウガ隊長とユズキ副長が代わりに面倒を見てくださってくれてたの。」


「そうだったのか……話してくれてありがとう」


「別に気にしてないよ。そうだこんど帝様に会ったら父様母様がどんな人だったか聞いてみようよ」

 とアマトが マソラに話しかけていたその時


「キャー!!」

 街から大きな土煙が上がった。

「急ごう!!」

 三人は土煙が上がった所へ行くのだった。


「グルルルゥ……」

 急いで逃げる人々を避けながら着いてみるとなんと黒い体に白い縞模様、そしてあの時の怪物と同じ赤い目を持った虎が居るのだ。

「どうした何があった?」

 アマトの霊通機からイズモの部屋に居る隊長からの通信が入る。

「黒い虎が街に現れました!!」

 流石のヒュウガも驚き

「分かった。直ぐに他の隊員に応援を出す」

 ヒュウガは改めて

「隊員に告げる。避難民の誘導を最優先しつつ、アマト達の応援に行ってくれ!!」

「イズモ様」

 ユズキはビシリと呼び掛ける。

「ええ。分かっているわ」

 イズモは覚悟を決めたように手を握りしめながら答えるのだった。


 そしてアマト達は目の前に居る虎と対峙している。幸いにも全員避難していたおかげで怪我人は居ない。

 三人は武器を構え、虎の出方をうかが

「グルルゥゥ……」

 虎は喉をならしながら此方こちらを睨み付ける。

「グオォォ!!」

 虎は爪を光らせながら真っ直ぐ三人へ向かって突撃をしてくる。

「そんな単純な攻撃!!」

 三人は虎の左右へ周り込み胴へ一撃を叩み込もうとした。


 ガキン!!


「何!?」

 振り下ろした一撃はなんと硬い毛皮によって弾かれてしまったのだ。

 虎はそのまま建物に突っ込み、柱がベキベキと折れながら崩壊していく。

 そのまま埋もれてしまったかに思われた虎だか、大きな瓦礫をはね飛ばし、何事もなかったかの様に瓦礫の山から飛び出す。

 すると

「グルルゥゥ…グガァ!!」

 虎は素早く三人へ振り向き、火球を放つ。

「うわっ!!」

 三人は何とか避けるも、地面に当たった火球は爆発し、大きな土煙が上がる。

 恐るべし防御力と攻撃力を見た三人はただ戦慄するのだった。



 三人の戦いをイズモはただ露台から見ている事しか出来ない。

 歯がゆい思いをしていたその時、頭上にフッと大きな影ができた。頭を上げると、

 露台の手摺てすりに一人の男が立っているのだ。

「お久し振りでございます。イズモ様」

 男は手摺から降り、にっこりと笑って深々と頭を下げながら挨拶をする。

 イズモは男の顔を一目見て、その正体を確信し、名を叫んだ。


「やはり貴方だったのね!!オウマ!!」


 オウマは部屋を見渡しながら、

「おや?あの姉弟はいらっしゃらないのですか?」

 と首を傾げる。

「あの二人はお前には関係ない!!」

 ユズキは弓を構えて狙いを定め、ヒュウガは大剣を抜き、オウマへ斬りかかる。

「居ないのなら、残念です……しかし部外者は立ち退き願おう」

 オウマは人差し指に小さな火球を作り、それをヒュウガ達に向けて親指で弾いた。


 ドゴォォーーン!!


 大きな爆発音がする。

「姉様!!宮殿から火の手が!!」

 アマト達が宮殿を見ると最上階から大きな火が上がっており、どす黒い煙がモクモクと出ているのだ。

 三人は血の気が引くのを感じながらも、

「帝様と隊長達が危ないわ!!」

 三人は助けに行こうとしたい。

 だがしかし、

 虎の赤い目が逃がさんとばかりに三人を見つめているのだ。

 この状況どうすべきか。沈黙が流れる。


 するといきなりカザトが、

「応援の人が後から来ます!!ここは俺に任せて行って下さい!!」

 とニヤリと笑って見せる。

「大丈夫です。応援が来るまでの時間位一人で稼いで見せますよ」

 とカザトは懐から、爆弾や鎖鎌を取り出す。

 二人は少し考え、悔しい顔をしながらも

「……任せた!!」

「油断しないでね」

 二人は宮殿へと駆けていく。


 二人を狙おうとする虎だが、

「お前の相手はこの俺だ!!」

 カザトは武器をたずさえ、虎へと飛び掛かっていく。


 夕暮れが近づく中、カザトを背に宮殿へ向かう二人はただ皆が無事である事の一心で足を動かすのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

甲神戦士 ヤタガラス ~孤独な巫女と霊瑠(レール)砲 ~ 古知 新作 @caps_lock

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画