第二章 刺客現る

 二人は目を丸くした。何せ、どんな人物なのだろうと想像しながら戸が開くのを見たら、自分達と同じ年頃の少女が出てきたのだから。


 二人はハッと姿勢を正し、

「お初にお目にかかります。私はマソラと申します」

「弟のアマトです。宜しくお願いします」

 と深々とお辞儀をした。


「私の名はイズモ 此方こそ宜しくお願いしますね。」

 と少女もお辞儀をし、

「どうぞお入り下さい」

 とイズモは手招きをした。

 二人は部屋へと入ると、

「では私はこれで失礼します」

 と侍女は戸を閉めて戻って行ってしまった。 


 部屋の中は帝の部屋とは思えない程質素で沢山の分厚い本や巻物が棚に山積みになっていたり、二人には何に使うのか分からない道具が沢山置かれていた。


 アマトが早速

「貴女様が帝様なのですか?」

 と質問する。

「ええ 私がヨクショウ国の帝その本人よ。それとそんなに畏まらなくても良いわ。イズモさん呼びでも構わないから。あっ でも外ではちゃんと帝様って呼ぶのよ」

 と話し、


 マソラも

「ヒュウガ隊長が詳しい事はイズモさんが説明してくれると言ってたのですが何故 突然 私達にこの任務を?」

 と質問すると、

「あぁ まだ貴方達に頼のんだ理由を説明しておく必要があるわね」

イズモは難しい顔になりながら、

「単刀直入に言うわ。この国に近々災いが来る。」


 マソラとアマトはその言葉が頭に突き刺さるような衝撃を受けた。

 するとイズモは真っ二つに割れた水晶玉を持ってきて、

「その証拠にこの割れた水晶玉……様々な事を占ってきたけど割れるなんて初めてよ。この事を貴方の隊長さんに相談したら貴方達の事を話してくれてね。その腕を買って頼もうと思ったの。 私はこの城から出ることが出来ないから念のためね。」


 話を聞いて気になったアマトが

「その水晶玉には何が映ってたんですか?」

 するとイズモは突然二人の目を見つめ、二人の緋色の瞳の視線とイズモの瑠璃色の瞳の視線がぶつかり合う。

「ええ この帝都が突然炎に包まれてそれで……」

 といきなり口を噤むと、イズモはニッコリと微笑んで

「で肝心の任務についてだけど、この城に微かながら邪気が入り込んでいるわ。でも日が出ている間は邪気が消えている。恐らく夜に活動し始めるはずだからそこを叩いて欲しいの」

「とりあえず夜が来るまで、私 貴方達の事をよく知りたいわ。普段私一人でこの部屋からずっと出たことがないから他人と話すのは久しぶりなの」

 日を背に笑うその光景は二人には少し悲しそうに見えるのだった。


それからアマトとマソラは鍛錬の事、友達のカザトの事、帝都の街の事を話し、イズモはそれらを楽しそうに聞いており、いつの間にか日がすっかり落ちているのだった。


そして夜も更け、

「それじゃあ 他の近衛兵達も警戒をしてるけど貴方達も警戒を怠らないでね」

「はい 任せて下さい」

とアマトは元気よく答える。

二人は二時間交代で夜食のおにぎりを食べたりしながら警備をしていた。

するとイズモは突然

「来たわ 仕掛けをすり抜けてここへ近づいてる」

二人は急いで部屋を出て長い廊下を警戒する。

廊下は点々と燭台しょくだいに立てられた蝋燭ろうそくが小さく周りを照らしているだけであり、その不気味さは二人の暑さを忘れる程であった。

そして蝋燭が一つまた一つと消えていく。

二人は刀と薙刀を構え、頭の先から爪先までの空気の流れが分かる程感覚を集中させていた。

そして明かりとなるのはイズモの部屋から差し込む月明かりだけとなった。

そして二人の目の前に現れたのは――


ただの小さな蝙蝠こうもりだった。

二人が一瞬警戒が緩んだその時、その蝙蝠は牙をグワッと見せながらアマトの喉元へ襲いかかる。


間一髪アマトは刀で払いのけ、すかさずマソラは薙刀の柄の先端で蝙蝠を床へ押さえ付ける。

「現れたわ!!あれが邪気の正体よ!!気を付けて!!」

すると蝙蝠から腕が生え、押さえている薙刀を払いのける。

蝙蝠は段々と筋肉が発達しながら大きくなり、人の身長ほどになった。

二人は再び身構え、怪物は二人へ向かって襲いかかる!!

















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