第一章 運命の姉弟
刻は過ぎ、やがて朝日が昇り始め、その日差しはヨクショウ国に一日の始まりを告げる。
そしてここ帝都に設けられた兵舎も照らし、その一室で眠る少年にも届く。
少年は障子から透る朝日を受け、顔をクシャクシャにしながら二度三度伸びをして、体を起した。
そして隣で眠るもう一人の少年を揺すりながら、
「カザトさーん!!起きて下さーい!!副隊長に怒られちゃいますよー!!」
と叫ぶ。
カザトはゆっくりと目を開き
「やぁ アマト おはよう 」
とゆっくり答えた。
アマトはその間に布団を畳み、道着と
カザトも着替え終わるのを待ち、その後
顔を洗いに井戸へと向かう。
外にある井戸へ着くと先に少女が使っているのが確認できる。
少女を見て、アマトは
「姉様 おはようございます」
カザトも
「マソラさん おはよう」
と挨拶をする。
マソラは
「アマトもカザトもおはよう よく眠れた?」
聞き、
「はいよく眠れました。逆にカザトがよく眠り過ぎて起こすのに手こずっちゃいましたよ。」
と返し、マソラはふふふと笑うのだった。
顔を洗った後三人は朝飯を食べるために兵舎中にある食堂へ向かう。
すると兵隊長のヒュウガと副隊長のユヅキに出会った。
三人は
「ヒュウガ隊長、ユヅキ副隊長おはようございます」と挨拶をする。
ヒュウガは
「うん おはよう」
ユヅキは
「おはよう 今日の鍛錬も頑張るのよ」
と答え、三人は
「はい!!がんばります!!」
大きく返事をするのだった。
食堂に着くと一緒にここで鍛錬をしている少年少女が先に食事を摂っている。今日の朝食はご飯に豆腐とわかめの味噌汁、鮭の塩焼きと野沢菜の漬物が出た。
朝食を食べながら
カザトは
「今月はアマトに十六勝十七敗だから今日は勝って同点にしてやる」
アマトも
「ふふふ 今日も負けないよ」
と返す。
「勿論、姉様にもね」
マソラは
「ええ、私も負ける気は無いわ」
と強気に返した。
朝食を食べ終わり、
今度は道場で小手、胴当て、脛当を付け、鍛錬試合となる。
審判はユヅキが行う。
まず始めにアマトとカザトとの試合だ。
「始め!!」
の掛け声で試合が始まる。
使うのは練習用の刃を研いでいないなまくら刀だ。
カザトは普段のマイペースな性格と打って変わって鋭い一太刀を浴びせる。油断をする暇もない、すれば一瞬で決着がつく。
激しい鍔迫り合いの中見ている周りの人も息を飲み、ついにお互い隙を突いた一撃を振るう。
お互いの首筋に刃が止まった。
カザトは
「ちぇー 引き分けかぁ」
と残念がり、アマトも
「次にお預けか」
悔しそうに呟いた。
次はアマトとマソラとの試合だ。
マソラは薙刀の使い手で刀を使うアマトにはやや不利な試合だが、ここで諦めるアマトではない。
マソラの重なる斬撃を掻い潜り、力強く刀を振り下ろす。
マソラは薙刀の柄で受け止め、鍔迫り合いになる。
ここは純粋な力勝負だ。
アマトは力を込め、刃はマソラの顔に近づいていく、マソラは柄を動かし、刃を受け流しながら、柄の先端でアマトの頬を強く叩き、
アマトは体制を崩してしまった。
マソラはその隙を逃さず、アマトの喉元に刃を突きつける。
「勝負あり!!」
の掛け声でアマトはうなだれてしまい、マソラは薙刀を放り投げ、
「大丈夫!?」と聞く。
アマトは
「大丈夫です。やっぱり姉様は強いなぁ」
と笑いながら答えた。
カザトは
「次は俺と試合しましょうよー」と急かすのだった。
昼が来るまで何度も試合をし、昼休憩で三人は
ユヅキは耳に付けられた勾玉状の物を使って誰かと会話をしている。三人の耳にも付いているそれは「霊通機」と呼ばれ、霊結晶を組み込み、位置情報と同じものを持っている同士での会話機能を持つのだ。
どうやらユヅキは隊長のヒュウガと会話をしているらしく、会話が終わると三人に近づき、マソラとアマトに
「ヒュウガ隊長が呼んでいるわ。昼休憩が終わったら隊長室に来なさい。他の人は鍛錬の続きを」
と言うと隊長室の方へ歩いて行ってしまった。
カザトは
「隊長が直々に呼ばれるなんて何があったんだろう?」
と言うが二人は何があったのかは知る由も無いのだった。
昼休憩も終わり、二人は隊長室へ行き戸を叩いて、マソラが
「マソラとアマトです。入ってよろしいですか?」
と聞くと、ユヅキの
「どうぞ」
という声が聞こえ、二人は部屋に入る。
アマトが
「隊長今回はどのような用事でしょうか?」
と質問すると、
ヒュウガは
「帝様直々のご指名があってね。帝様の護衛をやってもらいたいんだそうだ。 詳しくは宮殿で帝様が話してくれるだろう。失礼の無いよう
と話し、
アマトは
「はい!! 粉骨砕身で頑張ります!!」
とビシリと言う。
マソラはなぜ自分達なのか考えながらも、
「私もその覚悟で頑張ります」
と言うのだった。
城までは徒歩五分といった所で何か起こった時に直ぐに駆けつけられるよう近くに兵舎は建てられているのだ。
門の前にいる門番に自分達の事を話すと、侍女が二人を宮殿へ案内する。
城の中はとても広く、沢山の役人達が忙しそうに働いていた。それを脇目に二人は侍女に付いていく。鍛錬かと思われる程沢山の階段を昇り、その階層で働く人達を見た。
アマトが
「僕帝様を一度も拝見したこと無いのですが、どんな人何ですか?」
と侍女に聞いてみるも侍女は見向きもせず、ただ長い階段を進み続ける。
やっと階段が終わったと思いきや、行き止まりなのだ。
二人はどうしようかと思っていると、侍女は壁の板の一つを押し、板が横へずれ、壁の中にある仕掛けを
すると天井から隠し階段が出現したのだ。
侍女は更に昇り、廊下の先の小さな戸の前で止まった。
「イズモ様、お呼びの方々をお連れいたしました」
小さな足音がしたかと思うと戸が開き、
「貴方達がマソラさんとアマトさん?」
露台から入る夏風に銀髪を
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