13

「終わっ、た……」

 青く澄み渡った空を見上げ、私は呆けて呟いた。

 海賊たちのいない、いつもの我が家の庭なのに、まだ空に海賊船が浮かんでる気がする。

 と、その頭を、零くんがパカンと叩いた。

った!」

 零くんを睨みあげると、零くんはふはっと吹き出して、私の隣に腰掛ける。

「……ヒロイ。俺も、ありがとう。お前が俺の担当で、よかった」

「へっ」

 思いがけない言葉に、私はぽけっと口を開けてしまう。

「えっ、あ、ありがとう……? あっ、私も! 私も編集者が零くんで、よかった!」

 零くんは微笑んで、空を見上げる。私もつられて、上を向いた。

 そのまましばらく、二人で黙って、空を見ていた。

「……ねえ」

「ん?」

「あの、気になってさ……零くんの夢って、何?」

「俺の夢? 俺は――


――世界一面白い小説を出版して、嫌な世界をぶっ飛ばす」


 今までで、一番楽しそうな顔で。キラキラした瞳で。

 それが、零くんの夢。


 零くんの、宝石。


「そっか……よしっ」

 私は勢いよく立ち上がる。

「じゃ、約束するよ。零くんの夢は、私が叶える」

 最強で最高の編集者に向けて、笑う。

「私がいつか、世界で一番面白い小説を書く。――だからそれまで、よろしくね」

 私の、無敵のパートナー。

 零くんは、目を丸くして私を見上げた。

 でもすぐに顔を綻ばせて、立ち上がる。


「ヒロイとなら、長くもちそうだな」




 敵もいる。

 悔しくて辛いこともある。

 だけどそれでも伝えたい。

 大丈夫だよって、愛されているんだって、愛しているんだって、

 君の世界は無限の愛に満ち溢れているんだって。

 世界はいつだって無限大で、無限愛だ。


 零くんの隣に立って、空を見上げた私は。

 ふふっと微笑んで、ノートパソコンを抱きしめた。

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きみの世界は無限愛。 おんぷりん @onpurin

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