第17話 人形の右足

 最近、不気味な夢を見る。


 人形だ。人形がトコトコトコトコとこっちに向かって歩いてくる。


 人形はフランス人形だけど不格好で、本来あっただろう四肢に、違う人形のものが無理やりつけられているみたいになっている。


 人形は次第次第に近づいてきて、最後に必ずこう言うのだ。


「つぎはどこのぶいをちゅけてくれるの?」


 ハッとして目を覚ますと、汗でびっしょり濡れていた。もう涼しい季節になったというのにパジャマ代わりにしているTシャツは汗臭いほどだった。


 人形の由来はわからない。僕はそんな人形を持っていた覚えもないし、どこかで拾ったこともない。ショッピングモールの買い物中にもしかしたら見かけたことがあるかもしれないが、その程度だ。


 だから意味がわからないと思った。意味がわからないままに毎晩同じ夢を見て、最悪な目覚めをする。


 いい加減、無視はできないなと思い住んでいるアパートの名前を検索する。


「メゾン〇×」


 検索サイトには不動産情報ばかりが並んだ。それ以外の情報が出てくる方がおかしい。


 でも、画面をスクロールしていくうちにおかしなサイトのタイトルを見つけた。


「なんだこれ? バラバラ殺人? 切断した手足を無理やり縫合? 被害者の女子大生は人形のように──」


 ブツ。と全ての電気が消えた。


 スマホの画面も真っ暗になり、突然何かが近づいてくる足音が聞こえる。


 トコトコトコトコ。トコトコトコトコ。


 夢で見たシチュエーションだ。


 暗闇の中から人形が忽然と現れる。


 不格好な人形。不格好な手足。


 切断した手足って──でも、右足だけがなかった。


 右足だけが、なかった。


「つぎはどこのぶいをちゅけてくれるの?」

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