第16話 ついてきた声【実話注意】

 前に、僕は聴覚で霊的なものを感じるのかもしれない、というようなことをお話したと思いますが、今回もまた音にまつわる話です。



 今の家に引っ越す前、小さなマンションに住んでいたころのことです。


 その頃は毎日駅から30分くらい歩いて家に帰っていましたが、イヤホンでスマホから音楽を聴いて帰っていました。


 その日もいつも通り帰っていましたが、誰もいないはずの古い空き家の前を通ったときに「あー」と年を取った男性の声が聞こえた気がしました。


 ゾッとしたのですが、咄嗟に気づかないふりをしないとダメだと思い、通り過ぎて数分後、そっとイヤホンを外してみましたが、誰もいませんでした。誰かの声が聞こえるわけでもなく、とりあえずまたイヤホンをつけて音楽を聴きながら家まで帰りました。


 自宅でパートナーにその話をすると、「気のせいだったんじゃないの?」と一言。ですが、僕がお風呂から出たあと、寝室に行くと「ちょっと変な話をするから来ちゃったじゃん!」っと。


 状況がつかめず話を聞くと、どうやら僕がお風呂に入っている間に玄関のドアが何度も乱暴に叩かれて、ドアの外から「あー」「あー」と声が聞こえていたそうです。


 パートナーだけじゃなく、2人の子どもも聞いていたとのことで間違いのない現象でした。


 その後は何もないですが、もしかしたらきっと空き家の前で聞いた声の何者かが、ついてきてしまったのではないかなと思っています。


 引っ越した今でも一人で外を歩くときは、基本イヤホンをつけて音楽を聴いているので、もしかしたら聞こえていないだけでときどき妙な声は聞こえているのかもしれません。

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