最終話 この雨が晴れたら、虹の下で君と甘い恋をしよう

「あー疲れたあ……」

「疲れてんのはこっちなんだよ……途中で雨降ったし」

「こっちは応援も大変だったんだよ!」


 8月に入り、碧君のサッカーの練習試合を観戦してきたところだ。

 でも雨が降って大変だったんだ。今は晴れてるけど。


「あーもう、買ってくるからここで待ってて」


  そう言うと彼は自動販売機に向かい、やがて見慣れたペットボトルを持って帰ってきた。


「はい、いちごミルクな」

「ありがとう、碧君……!」


 さっそくふたを開けて飲む。

 うん、変わらない味だ。


 いちごの濃厚な甘みと酸味が疲れをいやしてくれる。

 キーンとするくらい冷えていて、この暑さには最適だ。


「なんか思い出すよな」

「え?」


 彼がぼそりと言って、何のことかわからずに首をかしげる。


「1か月前のこと。フラれたのかと思ってショックだった」


 あのクールな碧君がしょんぼりとしている。

 私も思い出し、アハハと笑う。


 そう、結局あの後私は彼にOKした。


 そして気づいた。

 奏君に対する想いは確かにあったけど、憧れだったということ。


 だから今は自信を持って、胸を張って言える。

 心の底から、好きって言える。


 晴れた空に、大きくかかる虹を見つけた。

 七色の、光を。


「碧君」


 ん? と首をかしげるきれいで美しい顔が、私の目に映る。


「好き」


 そう言って彼の目を見つめると、そこにも同じ七色の虹が映っていた。




 この雨が晴れたら、虹の下で君と甘い恋をしよう【完】




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この雨が晴れたら、虹の下で君と甘い恋をしよう ほしレモン @hoshi_lemon

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