犠牲~夢の為に……

ヤン

こんなに頑張ったこと、ない

 特別養護老人ホームに勤めるようになってX年。新卒で入職しましたが、高校を出てすぐ専門学校等に行った人に比べると、十年ほど上でした。


 迷ってばかりの人生で、何が自分の道なのかわからず、あれこれやってみるものの上手く行かず、元々健康ではない心がまた壊れ、引きこもりに戻る、というような生活を送っていました。


 そんな私ですが、あるロックバンドを好きになったことがきっかけで、外に少しずつですが出られるようになり、ライヴを観に行けるようになり、アルバイトも続けられるようになり、そして就職も出来るようになったのです。


 初めて就職したのは老人病院みたいな所で、そこで介護のような仕事をしていました。仕事をしている内に老人介護に興味を持ち、専門学校に行くことにしました。受験し合格。夜間のクラスに通うことになりました。


 昼間のクラスは二年間ですが、夜間は三年間です。昼間は病院の外来の看護助手としてフルタイムで働き、仕事が終わったらすぐに学校に向かいました。学校は月曜から金曜まで、仕事は月曜から土曜の昼まで。それが三年間です。学費は自分で払いました。その為に夜間クラスにしましたから。


 実家にいたので出来た生活ではありますが、やはりかなり無理をしていたので、試験の後に高熱を出して倒れたり、仕事の為に行っているはずの病院で点滴をしてもらったり、ということもありました。


 現場での実習もあります。有給休暇の全消化だけでは追いつかず、欠勤にもなりました。面接時に説明した上で採用してもらっていたので、そこはオーケーでした。理解をしてくれた職場とスタッフさんたちには感謝しかありません。


 介護福祉士の資格を取って、働きたい。その気持ちだけで、ボロボロになりながらも頑張り抜きました。


 人間関係で心を壊して外に出られなくなった私が、周りの人たちに支えられてここまで来ました。在学中は仕事と学校で、大好きなバンドのライヴにも行けなくなりました。趣味に使う時間は犠牲になりました。それでも、そうであっても、その道に行かずにはいられなかったのです。


 介護が自分に合った仕事かは疑問なのですが、ご利用者様の生活を支える為に、今日も明日も頑張ります。


(完)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

犠牲~夢の為に…… ヤン @382wt7434

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ