円環する物語と、半分の幸せ。

 以下、一章のネタバレを含みますのでご留意下さい。



『誰かの気持ちを理解しようとしても意味がない』
『あなたに私の気持ちなんてわからない』

 赤の他人にすがるしかない母親と、健気に生きる両親を失った子供たち。
 字義通り、門外不出の名探偵と、彼に代わって奮闘する探偵助手の主人公、由加。

 悲劇は惨劇を生み、惨劇が新たな悲劇を生む。
 様々な環がテーマのお話。

『私のせいで二人も死んじゃったんですから』
 由加は、真相究明を誓い、その先で出会う超自然と謎また謎。
 そしてタイトルに還る結末――。


 暗い海を彷徨い打ち揚げられた欠けた流木。
 形も大きさも違うその四本を組んだ焚火は、凍える夜を照らす。
 旅人は、煌々と燃える炎にあたり、ぐるり巡る空に昇る穏やかな煙を眺める。  

 分かる事で祓う。
 
 みんな何かを失って、それぞれ次善の糧を得る。
 足りないけれど暖かい――。

 大変面白く読ませていただきました。

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