「西瓜」永井荷風

【タイトル】西瓜

【著者】永井荷風



🐣作者について

エリートもエリートなお育ちと性的な奔放さを併せ持つ。



🐣感想

 実際西瓜について話しているのは最初のくだりだけで、あとは永井自身の生き方について語られている私小説。


>わたくしは人の趣味と嗜性との如何を問わず濫みだりに物を饋ることを心なきわざだと考えている。

>わたくしはそのいずれを思返しても決して慚愧と悔恨とを感ずるようなことはない。さびしいのも好かったし、賑やかなのもまたわるくはなかった。涙の夜も忘れがたく、笑の日もまた忘れがたいのである。


 永井荷風初めて読んだ。

 口をつけた瞬間に甘く綻びていく綿あめや、まるまると磨かれたガラス細工のような可愛らしい文体。綺麗で気持ちの良い情景描写を書かれるなあ。

 文化勲章をもらった際に「温雅な詩情と高邁な文明批評と透徹した現実観照」と称されていたのもうなずける。


「例え違う時代の違う国に生まれても今みたいな人生を送っていただろうな」って書いてる。

 自分の多病なのを憂い、自分さえいなければ父母は幸せだったろうと憂い、姻戚付き合いを拒否、避妊を徹底して子を望まぬことを幸福とする思想は、現代の反出生主義に通づるものがあるかもしれない。


>社交を厭うものは妻帯をしないに越したことはない。

訳「コミュ障は結婚するな」


>書を購って読まざるもまた徒事である。読んで後記憶せざればこれもまた徒事にひとしい。

積読が多い身としては耳が痛い。すいません。

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