「神・文章術」フミコ・フミオ

神文章術

【感想】神・文章術/フミコフミオ

【タイトル】神・文章術 圧倒的な世界観で多くの人を魅了する

【著者】フミコ・フミオ

【刊行】KADOKAWA

【発表】2021年12月

【ジャンル】実用書



🐣作者について

 1974年2月生まれ。

 1990年代末からネット上に文章を発表し、現在は「はてなブログ」を拠点に活動するアルファブロガー。



🐣読んだきっかけ

 私は小学生時代からはてなブログを利用しています。その縁で、大学時代からフミコ・フミオ氏のブログを愛読するようになりました。


 元々、インターネット発の自己啓発本というものが好きではありません。ブロガーが書いた自己啓発書の中には、詐欺師まがいの情報商材屋がオレ何円稼いだと喧伝するばかりの与太本が少なからず混ざっているので、警戒せざるをえないのです。


 そんな先入観を抱いている中でも、フミコ・フミオ氏の著書はつい買ってしまいました。彼はまず文章がうまい。辛辣なブラックユーモアに満ちた世界観で、知見と創作をまじえ、「つまらない仕事はしない」と働く様子を地に足つけて描いているところが好きなのです。


 今回の「神・文章術」は、小手先の文章テクニックを求めるならお勧めしませんが、文章を書くことを通じて人生をどうSurviveするかという点では、認知行動療法にも通じる本に仕上がっています。

 フミコ・フミオ氏の文体やバックグラウンドを知っているブログ読者なら楽しめることでしょう。




🐣書き捨て

 本書では、悩みを言語化し自分の価値観を確立させるために『書き捨て』が推奨されています。いわく、


・紙に書け(裏紙で良い)

・残すつもりで書くな

・消しゴムや修正液で消さない。削除は線で

・必ず捨てる


 初めは「毎日何かを書きつけているのに、思うように価値観の確立ができていない自分は何が足りない……?」と首を傾げてしまいました。けれど、自分が今までしてきたことは「私はこんなことがこれこれこんな風に嫌で……」と嫌だった気持ち・経験の質感の深堀り、ただの愚痴の書き連ねだったことに改めて気がつきました。

 そんなことをしても成長するのは問題解決能力ではなく苦しみへの感度です。下手な鉄砲数打ちゃ当たる、とはいうが、下手でも1発1発考えて打たなければ当たるものも当たりませんからね。


 本書では更に、悩みを解決するという目的意識をもって思考を言語化することが勧められています。

 例えば現状への閉塞感があるとします。そんなときは、自分は自分を取り巻くものについてどう感じているのか・相手は自分をどう見ているのか・世の中の距離感や位置関係などを冷静に分類し、対処出来る程度の悩みにまで言語化するとよい(らしい)。




 さらに「この世は良いものと汚いものが綯い交ぜになって流れてくる川、その中から綺麗なものを幾つ拾い上げられるか」という人生観には強く共感しました。

 日々の中にある小さな違いに気づいて価値を感じとれるか。日々の暮らしで起きる出来事や人間関係をできるだけ細かく言葉に落とし込んでいくことで、世の中を観察する目の解像度は上がっていくのです。


 本書では、SNS等関係なく一人で思考を深めていく事、経験を自分の言葉に落とし込む事、嫌なもの・悩みと向き合って他者の複雑さを認識し恐怖や拒絶の対象ではなくしていく事の大切さがくりかえし説かれています。

 人の個性に気づくことの喜びを「真夜中にたったひとり望遠鏡と格闘して新星を発見した時の喜びってこんな感じなんじゃないだろうか。」と詩的に表現されていて素敵でした。


 本書は、悩みや物事を噛み砕く時の視点が新鮮で役に立ちました。冷静な視点をとりいれつつ、引き続き色々書き散らしていきたいです。

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