都会のふりをしている

河岸景都

都会のふりをしている

本物の都会に触れておきたくて彼女はいつも南へ向かう


雑誌にも載らない場所を彷徨えばどこも都会のふりをしている


冷たくて白い獣が襲っても通勤手段が無くならなくて


貴方には貴方の朝があるように私の朝をゆるしてほしい


チェス盤の街を手元で眺めてはポーンのように区画を進む


信仰を示すみたいに出すキャッシュ隣で電子マネーが動く


友達にカフェを勧めたこの口でインスタントのコーヒーを飲む


コンビニが魔王のようにそこにある父も子もみな家に居るのに


流行の言葉をずらり並べれば列に並んでいいと言われた


あれが欲しいこれが欲しいを言い過ぎて産声ですらやり直したい


思い出す昨日が祖母の命日と 地下鉄はいま遅延している


バス停の少ない数字を諦めてカボチャの馬車を呼ぶことにした


目に痛い記録写真に呼びかけるその傍らで暮らしていると


看板は順路をちゃんと示すのに明るい方へ歩いてしまう


彼はもう来てくれないと知っている海を隔てたここは外国


最新は最新じゃない、店頭に三日遅れの彼女の笑顔


新しい主を待って角ビルが流す涙のような霧雨


住むよりも憧れている方が良い往復切符ばかり探した


この部屋は二酸化炭素が多すぎる氷点下でも開け放つ窓


都会だと信じたままで生きている遊戯場ならどこにでもある

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都会のふりをしている 河岸景都 @kate_kawagishi

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