第7話 僕とタイトラ
「小さいシュンだ。」葉山が叫ぶ。
僕は記憶をたぐった。
夏休み。カブトムシを捕まえにみんなで山に来たんだ。
カブトムシがブーンっと存在感を見せつけながら飛んで来た。
「思い出したか?タイトラ。」
「タイトラ?」
「もうすぐわかるさ。まずは目の前の自分に会え。」
子供達が網と虫かごを持っている。
山の草は背が高い。小さい子供は草で姿が隠れ。
小さいシュンは前に遅れをとっている。
「あっ、カブトムシ。いたぞ!」走り出す。
小さいシュンは、ついていけない。
取り残されてしまった。
遅れをとったシュンの前に、足元にカブトムシがいた。オスの大きなカブトムシだった。小さいシュンはそーっと素早く、親指と人差し指でカブトムシのカラダをつかんだ。
”この感触”
はじめて捕まえた大きなカブトムシ。うれしくってたまらない様子だ。
「捕まえた!」
葉山が気づき来た。「シュン。カブトムシ、どうだ?」
小さいシュンが「カブトムシ君、カラダが軽い。大丈夫?」
カブトムシが「昨日から何も食べてない。
お腹はペコペコさ。」
シュンは、カブトムシを捕まえるために持ってきていたスイカをしゃべるカブトムシに食べさせた。
カブトムシは、がぶがぶ食べた。
お腹いっぱいになったカブトムシは、
「助けてくれてありがとう。スイカおいしかったよ。
これで元気になった。いいぞ。捕まえても。
その虫かごに入ればいいのか?」
「はあ?もちろん僕はカブトムシを捕まえに来たけど
虫かごに入る?変な、カブトムシ。
いまさら?」
「そうだな。ハハハ。」カブトムシが笑った。
小さいシュンは、カブトムシに「僕は君を虫かごにいれない。カブトムシの家に帰った方がいいよ。バイバイ。」
小さいノボルの目が七色に光った。
カブトムシはシュンの頭の上を旋回しながら
「ありがとう。僕はタイトラ。時の番人。
未来でまた会おう。」
カブトムシの姿は消えた。
これは夢?
「シュン!葉山!」みんなが僕らを探している。
「ここだよ。」
「大丈夫か?」
「さっき捕まえたカブトムシがこっちに飛んできたんだ。、見なかったか?」
「見てない。」
「そっか。」
僕らは山を駆け出した。
しゃべるカブトムシが、
僕と葉山の頭の上を旋回。
「僕はタイトラ。時の番人さ。夏の季節にだけ姿を現せる。
シュン、葉山、人間の時間は短いぞ。急げ子供たちよ。」
僕は両手を高く上げて空に叫んだ。
「タイトラ・・・」
始業のチャイムの音が。気づくと僕らは教室にいた。
カブトムシとタイトラ 京極 道真 @mmmmm11111
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