神さまだって大変だッ!〜神在月だヨ!世界の神さま大集合〜

@BlueJewel39119

第1話

神様たちが年に一度神界に集まり行う

神族会議


北から南までの大陸にある国の代表の神が一堂に会し、話し合いを行う。


議題は様々で、各国が抱えている問題や課題の解決案を話し合う場でもある。


で、今回の神族会議はギリシアの大神ゼウスの元で執り行われるらしい。



「迷った」



多くの腕を困った様に動かしながら歩く男がいた。


この神の名はシヴァ、インド神話


の破壊と秩序の神だ。


彼の名はインドでは有名であり、シヴァ神の信仰者は数多くいる。


そんな彼がゼウスの神殿で道に迷い途方に暮れていたのだ。



「何でギリシアの神殿ってのはこう…無駄に広いんだ……かと言って北欧の神の城も大概だしなぁ……」



そう呟きながらも歩みを進めるシヴァだった


何だか同じ道をぐるぐる回っている気がするのだが気のせいだろうか?



ふいに彼は何かを感じ取ったのか立ち止まる


後ろを見ると物凄い至近距離に居た


眉毛と目が描かれた頭巾か袋に足が生えたような不思議な姿をしている。神が、何とも言えない眼差しを向けて立っていた。



「わ゛ぁ゛っ゛?!!」



エジプトの冥界の主、オシリスに仕える謎の神メジェドである。


メジェドは困った様な、不安な様な眼差しで頭?を傾げている どうしたらいいか分からない様な雰囲気を出していた。



「……ひょっとしてお前も迷ったのか?」



シヴァが問うとメジェドは頭?を縦に振る


どうやら彼もまた道に迷っていたようだ。


二人は互いに顔を見合わせるとシヴァはため息をつく



「とりあえず、ゼウスのじいさんが居る会議の間にでも行くとするかね」



シヴァの言葉にメジェドはこくりと頭を上下させる


二人は並んで歩き初めた



「わざわざエジプトの冥界から来たんだろ?こんな広い神殿ん中を一柱で歩いて来たのか?」



シヴァの問いにメジェドは再び首を横にふる


何かを喋っているのは分かるが、問題はその内容なのだ



「↶↯☆▷♪※」



言葉にならない声を発していた。



(何を言ってるか分からねぇ)



シヴァは頭を抱えて悩み始める。



まるで宇宙人と会話をしている気分だ だがメジェドの方も困惑していたようでオロオロとしている


しばらく沈黙が続いた



「どうした?」



顔をあげると筋骨逞しい美丈夫が目の前にいた。


北欧の戦神にして


主神オーディンの息子トールだ


数多の巨人をその神槌ミョルニルで屠り、雷を司る神格を持つ男である。


ぶっちゃけ穏やかな噂を聞かない北欧神の中では一番まともな奴だろう


だが、やはり



(でっけェ、あと顔綺麗だけど怖ぇ)



思わず後ずさってしまう程の威圧感を放っていた。


そんな彼に怯えているのか、メジェドも少し距離を取る


するとトールは懐に手を入れた


シヴァはメジェドを後ろにやり咄嗟に構えを取ろうとするが


取り出した物は武器ではなく小さな壺であった。



それをメジェドの前に出すと蓋を開ける


中には黄金の林檎が蜂蜜酒に浸されていた。


それを見た瞬間メジェドの目の色が変わる 手を伸ばし掴み取るとそのまま齧りつき瞳を嬉しそうに輝かせ始めた


その様子を見てトールは満足そうに微笑む



「イズンの林檎を蜂蜜酒に浸した菓子だ、美味いだろう?」



メジェドは何度もうなずくと「もういっこ」とおねだりを始める


トールはその様子に笑みを浮かべるとまた壺から林檎を取り出した


嬉しそうに再びメジェドは林檎を頬張る



「あーあ、お前、口の周りが蜂蜜でべったべたじゃねえか」



呆れたように言うシヴァだったが、その表情はとても穏やかだった。



「会議の間に行くのであろう、私も行こう」



トールの言葉にシヴァは驚いた顔をする


まさかあの怖い神様が同行してくれるとは思わなかったからだ



「えっと、実は会議の間が何処かわからなくてな……案内してくれないか?」



シヴァが頼むとトールは笑顔で了承してくれた それから三人で歩くこと数十分



「父上、探しましたよー」



シヴァの元に象の頭をした男がやって来た


インド神話の神ガネーシャだ



「おお、悪い悪い、道に迷っちまって」



向こうからはぽてぽてした二等身の隼の姿をとる神がメジェドの方へ歩いて来た



「メジェドー、心配したよー」



彼はホルス、太陽神ラーの息子である エジプト神界で神々のアイドル的人気を誇る存在だ。



「♡↯:↯☆♫◢◁◇◈◊◻!」


「うんうん、不安だったんだね、シヴァ様とトール様に助けてもらったのか、良かったねぇ」



何やら話している二人をシヴァは不思議そうな顔で見ていた



(なんで会話が成り立ってるんだ?)



ふと疑問に思ったが、気にしないことにした。


きっとエジプト神同士の特殊なテレパシー的な物だろうと勝手に納得したのだ。



そんな事よりも今はゼウスとの会議の方が重要だ 気を取り直して会議の間に入る


大神ゼウスを初めとした多くの神が円卓に座り議論を交わしていた



「む?おお!エジプトの神よ、それにインド神に北欧の戦神か、珍しい組み合わせだな」



ゼウスは気さくに声をかけてきた


トールは恭しく頭を垂れ、それを真似てメジェドは頭を下げる



「申し訳ございません、慣れぬ土地にて迷い、会議に遅れてしまいました」



トールの言葉にゼウスは苦笑いをする この神は真面目すぎる もっと砕けて良いと言うのに


しかし、それに習い頭をぺこぺこと下げるメジェドが何とも言えずシュールである すると、奥の扉が開かれる。



北欧の最高神


嵐と闘争を司るオーディンが入って来た 続いてロキ、ヘイムダルなど他の神々も入ってくる


「何処に行っていたのだ、トール」


感情の読めぬ真顔としかめ面しかしない無愛想な男、それが北欧神話におけるオーディンの評価であった。


実際、彼が何を考えているのかさっぱり分からない


「関係ないだろう、お前には」


辺りの神々のキモが冷える様な思いをする中、オーディンとトールは睨み合う


「まあまあ、喧嘩は止さぬか、これ北欧の、お主もそんな刺々と……いや、刺々し過ぎる、これでは話し合いどころではないぞ」


仲裁に入ったのはロキだ


「まあまあ、叔父上!ここは年に一度の神の会議の席、諍いを起こすような発言は控えて」


ロキはオーディンを、ヘイムダルはトールを慌てて止める。


他の神々が心配そうに見守る中、北欧神たちが入って来た入り口から別の神が入って来た


「ああ、メジェド~何処に行ってたんだ、お父さん心配したぞ~」


ぽてぽてした二等身の鷹の姿を取る可愛らしい神がメジェドに抱きつく


「♡×△○」


「うんうん、迷子になってたのかぁ、広いところで一人で怖かったよね」


「♪~」


その神の名は太陽の神であり、太陽の運行を司る神でもあるラー


メジェドとホルスの父だ


「♢★○◁◈▪▲▨♫」


「うんうん、迷子になって困ってたらトール様が案内してくれた……ほう、林檎の蜂蜜漬けをくれたと」


「◎□◆〇*!」


「そうかそうか、それは良かったね」


鷹のふわふわした翼でラーはよしよしとメジェドの頭を撫でた その様子をシヴァは微笑ましく見ていた


何だかもう可愛いが可愛いを足して二乗した感じなのだ


心無しか一触即発の雰囲気だったトールとオーディンの間の空気も和らいでる気がする


「コホン、では会議を始める……の前にエジプト神たちは等身が足らぬゆえ誰かが席に着かせねばならぬな」


ゼウスの言葉にシヴァとメジェドは顔を見合わせる


「それなら私が」


トールが手を上げ、メジェドを椅子の上に乗せると、自分はその隣に座った。


同じく小さな等身のホルスは何とか頑張ってぴょんぴょんと跳ねながら椅子の上に飛び乗ろうとするが上手く行かない


見かねてシヴァが笑いながらホルスを抱えてメジェドの隣に座らせた


「では、会議を始めよう」


こうして神々による神々の為の神の世界会議が始まった



「まずは先日の地球での件についてだが……最近は火の神が起こす火山噴火や地震が頻発、疫病、日照りなど自然災害が多発している」


ゼウスの言葉に皆はざわめく


「疫神ならエレキシュガルの夫とゼウス神の御息子のアポロン様の矢が原因では…」


「いや、最近はエレキシュガルも大人しいと聞く。それにわしの息子が起こした災害にしてはあまりに規模が大きい」


ゼウスはうむ、と考える


原因がわからない、少なくともこの場に居る神々たちの誰も神罰の類いは与えていないのだ


ラーが声を上げる


「…疫が神の仕業でないならば、悪魔や邪神と言った者共の所業では」


ラーの声に神々全員が同意した様に首を縦に振る


「……しかし、地上に疫をばら蒔いてどうする気なのかの?最近は人間たちも各々に対策を取っておる、今更こんな事しても意味は無いと思うがのぅ?」


かつて自分たちが信仰されていた時代の様に何も打つ手もないまま死んでいくしかなかった弱い存在では無くなった


「それに最近じゃあ人間の科学力も進んでるからねぇ、悪魔も天使も形無しだよ」


だが、科学の発展は人々から《神》と言う存在を消し去ってしまった 今では人間は神の力を知らず、恐れもしない


中には神など居ないと思っている者もいる


「もう、誰も私たちのことなんか覚えちゃいない、昔みたいにはいかないさ」


ロキがつまらなそうに言う 確かに今の人間には自分たちの加護は必要無いだろう


一人でも歩いて行けるほど彼らは強くなり、同時に増長している そして、信じず忘れて行く


何時しか自分たちの名を呼ぶ者たちも無くなって久しい


古い神たちならば尚更、最後に祈りを捧げられたのは何時の頃か思い出せない程だ


「……人間は、世界に必要か?」


戦神アレスが呟く


「いらぬだろう」


名もなき神々たちが一斉に賛同する。


その声を皮切りに様々な神々たちが口々に人間不要論を唱え始めた


(うっわー、なんかきな臭くなって来やがった)


シヴァは眉間に皺を寄せて唸る


最近の神々の人間に対する不満が溢れだしたことに嫌な予感を覚える


「私はそうは思いません」


神々が静まり返る。


ラーが立ち上がり、発言したからだ


あのほよほよとした二等身の鷹の身を持つ太陽神の声は普段ののんびりした優しげな口調ではなく、凛として響く。


「何故そう思う太陽の神よ、そなたも知っておろう?人間は我々を忘れて行った、我らを敬うどころか我らなどおらぬとうそぶく愚かで哀れで矮小で脆弱で醜悪で浅ましい生物だぞ」


「その愚かで哀れで矮小で脆弱で醜悪で浅ましい生物を、見守り続けてこその我等の役目ではありませぬか」


ラーの言葉に神々たちはハッとする


「多くの者に崇められるのが神の価値ではない、我が子を愛し慈しみ育ててこその親、愛し慈しみ育てた子が行く道を見守ることが出来たなら、それは誇るべき事でございましょう…」


一人の神がラーを嘲る様に笑う


「ふん、詭弁ですな。信仰を忘れ傲慢になった人間どもを貴方は庇うとでも言うのか」


「では、貴方は自分が創った人間だから勝手に壊しても構わないと仰るつもりか」


ラーは静かな怒りを湛えた声で言い返す


太陽の神の怒りの恐ろしさを、知らぬ神などいない。


その怒れる姿に他の神々たちは息を呑んだ


言葉が過ぎた神が青ざめラーに謝罪をする。


「……失礼しました」


「構いません、ただどうか思い出して欲しいのです……かつて自分たちが信仰されていた時代の、その時代から脈々と続く人々の営みを」


「しかし……!」


反論しようとする神々に次に声を上げたのはメジェドだ


「▲☆□◊▷○◎△×#」


「だ、誰かメジェド神の通訳を頼めんか?」


ゼウスが汗を拭きながら言う


「なになにメジェド?……うん、うん……人間は確かに間違ったり失敗をしたり過ちを犯したりするけど、それを正してやるのが僕ら神々の役目、そしてどんなに罪に汚れてもどんな時も手を広げて包み込んでやる事が、それこそが僕たちの存在意義じゃないかってさ」


ホルスはそう言ってメジェドの頭を撫でた


しかし、幾柱かの神々はやはり納得出来ない様子だった。


「では、もし人間が誤った道を進もうとしたらどうするのだ」


未だ不満げに呟く神に、意外な神が答えた


「ならば、神がその間違いを正せる様に寄り添えば良い」


皆がその声の主を見る


主神オーディンだ


死と嵐と闘争を司る大神の言葉に、神々はざわめく


「そもそも人間は不完全な存在なのだ、我らを模して造られた存在であるのだから、不完全なのは百も千も承知であろう」


オーディンは静かに続ける


「愚かで哀れで脆弱で醜悪で浅ましいなら我らも大概同じではないか、だからこそ手を差し伸べてやればよい、人間とはそういう生き物である」


神々は黙る、確かにその通りだと思わなくもない だが、どうしても何かが引っかかっている


「納得はするが得心がいかぬという顔だな」


オーディンはフッと笑って続けた


それはまるで悪戯を仕掛ける子供の様であった。


そして告げられた内容は実に単純明快なもの


「では、こうしよう神々よ、人間は不要か否か挙手せよ、否と思うならば手を上げ、不要と思うならば手を上げずにそのままにせよ」


一同が沈黙する中、最初に動いたのはヘラクレスだった


彼は高々と右手を上げて言った


「俺は、人間は必要だと思う、確かに愚かな存在だ、時に悲しいほどに脆く弱くもある、それでも人間は懸命に生きようとする、俺はそんな人間たちの寄る辺でありたい」


続いてトールも手を上げた


「私も人間が必要だと思っている、一人でも私たちを覚えている者が居るならば私たちはそれと共に在ろう」


かつて農業の神として、そして戦の神として、人類の最良の友と言われたトールは言う。


次いでヘイムダルが手を上げる、人類の祖と呼ばれた光の神


「私は人間の良き隣人として共に歩む事を望みます」


次にロキ、いたずら好きの神はニヤリと笑う


ああ、こいつは…誰もがそう思った瞬間、予想外に手を上げた


「俺は良いと思うよ?人間って面白いじゃん?善悪どうでも良いけど、俺達を楽しませてくれるし~」


きゃらきゃらと笑いながらロキは言う


意外にも北欧の神々たちは人間を肯定した。


厳しき氷の地に在り、穏和とは決して言えない神たちだったが、彼らも人の子らを愛しているのだろう



「さあ、砂漠の地の神々たちよ、そなたらの意思を問う」


ゼウスが言う それに真っ先に手を上げたのはラーだった 彼は真っ直ぐに翼を上げた


「人と共にあることを願います、私は太陽の神、迷える者を照らし導く者なれば」


刹那遅れてホルスが嬉々として手を挙げる 彼もまた太陽神である、ラーと同じく人間を慈しんでいるのだ それに続くように…何やらメジェドがぽよぽよと跳ねていた


隣の席に座るシヴァがメジェドを持ち上げる


「な、なんだ?」


「♢※@◊₤₢╡◌◈」


「わかんないけど、何かなんとなく人間は必要だって、言ってんだな…」


困ったような顔をするシヴァに、他の神々が微笑ましく笑う


「次はインド神たち、貴殿方の意思をお聞かせください」


ラーが言うと、インド神話の神々たちが口を開く


待ってましたとシヴァが手を上げる


「俺は人間は存在しても良いと思うぜ、なんだかんだ言ってあいつらは強いからな、人間には色んな奴がいる、だから飽きねえんだよ」


続いて手を上げるのはインドラだ


「人間の害悪を討つことが我の使命、しかし、それは人間が居なければ成せぬ事、故に我は人の子を愛そうぞ」


次に、アナンタが手をひらりと上げた 蛇王の妻である彼女は、その瞳に優さと慈しみを浮かべて言う


「幾星霜、私たちは人間の営みを見守ってきました……私も人は必要な存在だと考えています」


続けて蛇王ナーガが手を上げる


「妻がそう言うのだ、私も人の子らを祝福しよう」


シヴァを始めとしたインドの神々たちも全員手を上げた。


残るはギリシア神たちのみ


オーディンが荘厳な声音で問う


「ギリシアの神々よ、意思を示せ」


先にヘルメスが手を上げる


その声はどこか楽しげだ まるでこれから起こるであろう出来事を楽しむ様な


「人間は美醜賢愚含めて面白く、我らにとって無くてはならない存在であると認識している」


次いでアフロディテも手を挙げた その表情は少し恥ずかしげである


「愛の女神として、見守っていたいと思うわ……べ、別に人間が好きだとか、そういうわけじゃないけどね」


そしてディオニュソスが言う 彼は葡萄酒を飲みながらうんうんと頷く


「だぁはは!愛の女神殿は素直じゃねぇなあ!俺も賛成だ!人間は面白い!それだけで見守る価値はあるってもんよ!」


その言葉にヘラクレスの瞳は喜びに輝く ディオニュソスの言葉は、まるで自分の心を見透かすようで、彼の想いを代弁している様だった


人間の必要性に疑問を抱いていたアレスも手を上げる


「ならば私も見守るとしよう」


さあ、ついに最後に残ったのは大神ゼウスのみとなった


オーディンはゼウスを見つめその口元に僅かな笑みを湛えている


「さあ、最後だ、ギリシアの」


そう言われゼウスはにかっ、と笑い高々と手を上げてから木製の小さな槌を振った そして高らかに宣言する それはまさに神の名に相応しい、威風堂々たる姿であった


「人類の存続をここに誓う、私は人間を守護する者なり、人間とは我が子にして愛すべき隣人である」


わぁっ!と歓声が沸き上がる、皆がこの瞬間を待ち望んでいたのだ 人間を肯定し、共に歩むことを選んだ神々たちに、拍手喝采が送られる そして……オーディンは満足そうに微笑み椅子の背に体を委ねた そんな彼にトールが話しかける


「疲れたのか」


「少しな」


最初の険悪なムードなど無かったかのように二人は談笑を始めた。


そんな二人を見て、シヴァは不思議そうな顔をしながら言う


「あの親子って仲悪いんじゃねえの?」


シヴァの問いにゼウスがいやいやと首を横に振る


「とーんでもないわい!オーディンは外に出とる時は真顔にしかめっ面の仏頂面じゃが、城に帰れば妻のフリッグとヨルズを可愛がっとるし、息子のトールやバルドルを溺愛しとる」


呆れるほど意外な事実に、シヴァはあんぐりと口を開けた


「いや、あやつああ見えて愛妻家じゃから、普段は真顔のしかめっ面で取っつきにくいけど、家族の前ではデレるからのう…前にわしがヨルズ殿にちょっかいをかけたら問答無用でグングニルをぶっ放してきたわ……」


その話を聞いて、シヴァだけでなく神々たちは唖然とした。


「それにトールが会議の間に来た時にあやつ涼しげな顔をしとったが実際はいつまで経っても会議の間に訪れぬトールを心配して神殿の中をうろうろしておったからな、あれは相当寂しかったに違いないぞ」


シヴァが感嘆の声を上げる中、アナンタはふと疑問を口にする


「最初にトール様と険悪な感じになったのは…?」


「ほら、嵐と闘争の神のメンツと言うものが有るじゃろ?そんなまさか息子を心配して神殿の中をかけずり回っていたなど言えるはずもなかったんじゃろうて」


ゼウスはほっほっ、と笑う その様子にアナンタは苦笑いをするしかなかった こうして、全ての神々を集めて行われる神様会議は無事終了した


「ぐぁぁ~、無駄に疲れたぜぇ」


シヴァがくぁ~と欠伸をしながら背伸びをしているとメジェドが何やらパピルスを咥えてやってきた どうも神々の会議で配られたらしい。


そして彼はそれをシヴァに差し出した。


冥界、天界の宴会のお知らせ~神様会議の後参加希望の方は冥界か天界のいずれかの項目に名前を記入して下さい そう書かれた紙を渡され、シヴァはそれを読んだ 内容は至極簡単だ


要するに会議が終わった後に宴会をやるから参加しませんかという事だ



特に断る理由もないので、参加する事に決めた



「なあ、冥界側ってどんな神が参加してるんだ?」



「ハデスとかエレキシュガルとかだ」



その答えに、シヴァは納得がいったような表情をした



「んー、一様俺は破壊神だから、冥界側か?いや、一様再生を司る神だしなぁ」



腕を組み悩むシヴァ そんな彼に対して、メジェドは言う



「◈※●☆♯◇■▫◈►▶☆」



「うん、悪い、やっぱり何言ってるかわからねえから誰か通訳してくれ」



そう言うと、ホルスがぽてぽてと歩いてきて、メジェドの通訳を始めた



「なになに、メジェドー…うん、うん……『僕はオシリス様に仕えてるから冥界側の宴会に参加するけど、良かったらシヴァ様も一緒に来ますか?』だってさ」



その言葉を聞き、シヴァの顔がぱあっと明るくなる



「行きたい!良いのか?!」



その問いに、メジェドはこくりと小さくうなずく するとシヴァは嬉しそうにメジェドとホルスを抱っこして、頬擦りする



「はわわ、シヴァ様ぁ、くすぐったいです」



ホルスはふわふわした翼を羽ばたかせながら困っているが、嫌がる素振りはない そんな二人を見てシヴァは微笑む



その様子を見ていたトールも興味深そうに近付いてきた



「私は豊穣神でもあるが、冥界側の宴にも興味があるな、シヴァ、私もその宴会に参加させて貰えないだろうか」



シヴァは快く了承した。



メジェドはトールが参加してくれることが嬉しいらしく、何やらぴょこぴょこと跳ねている



「では、参加をする前にイズンの林檎の蜂蜜漬けを持参するか……メジェドはあれを大層気に入っていたようだしな…まだ沢山残っているから宴が始まる前に幾つか手土産に持っていこう」



トールはそんな事を呟き、早速イズンの林檎を取りに行くべく一旦場を離れた



メジェドはうきうきとシヴァの腕の中で踊っていた。



こうして、神々は宴会に向けて準備を始める



この後、また一波乱あるのだが……それは別の話

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