第5話 なんで?

ぼうっと画面を眺めていたきらりの視界に人物が1人増えた。


きらり(82)「おぉ、ヨネ、遅せぇ~ぞ。2分遅刻だ。」


ヨネ(23)「細かっ!!なんで1分単位でわかんのさ。実はきらり、AIなんじゃないの?笑」


きらり(82)「ヨネがいないと暇なんだよ。美代子と梅十郎は今日じゃないからさ。」


ヨネ(23)「そっか。そういってもらえると嬉しいよ。あたしも、きらりと話してると楽しいよ。」


きらり(82)「なぁなぁ、さっきちょっと気になったんだけど、このAI監視の作業ってなんで4人も必要なんだろうな。別に誰か1人で十分じゃないか?」


きらりは数十年ぶりに誰かに「なんで?」をたずねた。






ヨネ(23)「うーん…1人じゃ耐えられないからじゃない?」





きらり(82)「は?」


ヨネ(23)「こうやって誰かと喋っている方が、何もしないで画面を見ているより楽しいでしょ。」


きらり(82)「そりゃそうだけどさ、そのためにわざわざ4人もいるのか?」


ヨネ(23)「きらりの時代と違って、今はみんな1人で生きているように思うかもしれない。でもさ、こうやって毎日誰かと画面越しにでも話しているでしょ?【人間】ってひとあいだって書く、って何かで読んだよ。1人で生きているように見えて、実はみんな誰かと支えあって生きているんだよ。」


きらり(82)「…そうか?俺は小さいころからずっと1人で生きてきたぞ。」


ヨネ(23)「そんなわけないじゃない。憎かろうがなんだろうが、育ててくれた人がいるでしょ?その生意気な性格だって、いろんな人の影響を受けて完成してるんだよ。きらり、さっき言ったよね?あたしがいないと暇だって。」


きらり(82)「え…まぁな…。ってかよ、生意気なのはおまえのほうだけどな。」


ヨネ(23)「きらりは自由を知ってる。あたしには、それだけでもすっごく羨ましいことだよ。」


きらり(82)「自由?どこがだよ。こんなAIに乗っ取られた世界で。」


ヨネ(23)「そうじゃない時代をきらりは知っているでしょ?あたしは、それを知らない。あたしの知らないことを、きらりは知っているじゃない。」


きらり(82)「ふん、何を偉そうに。おまえはまだ若いじゃないか。今後俺なんかよりこれからいくらだって色んなことを知ることができるだろ。」


ヨネ(23)「そう思う?」


きらり(82)「そうだろうが」


ヨネ(23)「そんなこと、あたしにしかわからないでしょ。」




きらり(82)「なんで????」









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

77年後の未来 タカナシ トーヤ @takanashi108

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画